■"現場"で本当に必要なスキルを取り入れる
各組織で、新入社員研修の目的はそれぞれ違うと思いますが、共通するのは、「新人に、社会人としての自覚を持ってもらう」「なるべく早く現場で"考えて""動ける"人間に成長させる」ことです。
まず、社会人として、1日も早く「自立」するためには、「ルール遵守」「判断基準の習得」「職場でのコミュニケーション」という3つの要素が重要となってくると考えています。
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■「自立」するために必要なこと
(1)ルールの遵守
ここでいう「ルール」とは、お客様、お取引先、上司、先輩と共に仕事をしていくための組織のルールです。
弊社の研修では、例えば、以下のように「出社時」「勤務中」「休憩時間」「退社時」に守るべきマナー・心構えを具体的な事例を用いながらご説明しています。
※「朝起きたら39度の熱。とりあえず病院に行ってから連絡しよう」は○or×?「電車が遅れて会社に間に合わない。連絡するよりも急いで出社」は○or×?
(2)判断基準の習得
上司や先輩と同じ判断基準を持つことは、現場で自立するために重要です。弊社の研修では、仕事をする上で、基礎となる5つの判断要素Q(Quality、お客様が満足する品質)・C(Cost、物品費、人件費)・D(DeliveryDate、納期)、R(Risk)・S(Sales mind)を理解していただいています。
(3)職場でのコミュニケーション
上司や先輩から様々なことを教わったり、一緒に仕事を進める場合、「積極的に質問する」「質問の後は感謝」「礼儀をわきまえて質問」など聞き上手になることも、自立する上で必要です。
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■具体的な中身をどう教えるか?
次に、新人を「なるべく早く現場で"考えて""動ける"人間に成長させる」ためには、定番ではありますが、名刺交換、訪問・来客対応、電話応対、席次などのビジネスマナーや、「報」・「連」・「相」などのコミュニケーションに関する内容を行うことが必要です。
このような基礎的な内容は、誰がやってもほぼ同じですが、例えば、名刺交換の場合、講師は「いかにきれいに」渡すかを教えがちです。
しかし、特に営業の現場では、お客さんに「きれいに渡す」より、「相手より先に渡すか」ということが勝負になってきます。
このような内容は実際に現場で働いている人しかわかりません。
その意味で、現場の中堅社員や管理職に、マナーや基本動作の具体的な内容までを含む「本当に現場で必要なスキル」について細かくをヒアリングすることが重要です。
「型通り」の研修をこなしても、現場で必要とされるレベルをクリアしていないと、新入社員は"使えません"。
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■今年の新人の特徴
さて、今年度、弊社の調査で挙がった新入社員の特徴は以下のようなものです。
≪長所≫
「まじめで、勉強好き。学ぶことに積極的で自分磨きに熱心である」⇒優秀な人材が多く、教育対象としては、大変やり甲斐のある素材
≪課題点≫
(1)素朴であるが、「自分」優先で、「他者」の立場に立つことが苦手
・叱られるとすぐにしゅんとなってしまう
・事前連絡なしに平気で休むなど、言動や態度に公私の別がない
・研修報告書を書くために徹夜し、その結果、欠勤するなど個人が優先で、組織や公の立場をあまり考えない
(2)課題が与えられると動くが、自分で考えることが苦手
・明確な課題を与えると非常にまじめに取り組むが、受身で積極性がない
・困難に遭遇すると、すぐに答えを求めたがる
・活発的に質問をしてくるが、質問内容が細かい根本的な問題をつきとめるというより、方法論をとても気にする
(3)同期との仲は良いが、先輩・上司とコミュニケーションがとれない
・同期とのコミュニケーションは取れるが、上司・先輩と話せない
・「報・連・相」をしっかりとしない
(4)文章力・論理力が驚くほどない
・文書や報告が要領をえない
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■新人の気質の変化に合わせて、教える側も変わっていかなければ~「時代が変わった」で済まさない
現代の若者は、総体的に、"自分"の成長には関心がありますが、"組織"や"社会"のためという意識が稀薄です。
これを「時代が変わったな」で済ましがちですが、欠けている「組織人」「社会人」としての意識を会社側が新人にはっきりと教えてあげるべきです。
新入社員研修の時にこれをやらないと、その次の機会はありません。
また、最近の新人は、「明確な課題を与えると非常にまじめに取り組むが、受身で積極性がない」、「困難に遭遇すると、すぐに答えを求めたがる」・・・などのマイナスの特徴ばかりがクローズアップされがちです。
しかし一方で、新人は「まじめで、勉強好き。学ぶことに積極的で自分磨きに熱心である」という長所もあり、優秀な人材が多く、「教育対象」としては、教育・研修ご担当者様、我々研修会社ともに大変やり甲斐がある人材でもあります。
今年は、「新人の気質の変化に合わせて、人事・研修担当者の側も変わっていかなければならない」ということがキーワードとなりそうです。