■ほめ方にもコツがある
OJTを進める上で、正しく「ほめる、叱る」というのは、とても重要です。感情に任せて怒ることが良くないのはもちろんですが、やたらと「ほめる」のも良くありません。
たとえば、「君は誠実そうだね」「優しそうだね」といった個人の雰囲気や特徴に関するほめ言葉は、相手との関係が築かれていなくても、相手は素直に喜びます。しかし、「君は文章が上手いね」とか「論理的だね」などの相手の能力に関するほめ言葉は、関係構築がなされる前だと、言われた方も「本当にそう思っているんだろうか」といぶかしく思ってしまいます。このようなほめ言葉を使うなら、タイミングをよく見計らう事が重要です。
■指導する・叱ることを円滑に進めるには
指導する、叱ることはOJTを任された者の義務です。「叱る」と「怒る」を混同する人も少なくありませんが、怒ることは自分自身の感情をぶちまけること、叱ることは相手の成長を願って行うことです。
叱る(指導する)際には、改善を求める理由を明確にすることが必要です。また、改善点を放置すると、また同じ失敗をしてしまうことや、自分や周囲の人間に危険が発生する場合もある、というようなことを伝えます。自分のためを思って叱ってくれているのだという事が分かれば、相手も受け入れやすいです。
コミュニケーションの取り方にも工夫が必要です。ビジネスにおけるコミュニケーションとは「友達をつくる」ことが目的ではありません。相手にして欲しい事をしてもらうためのコミュニケーションです。
指導相手に対しては、相手が今すべき事は何なのかを順々に理解させていく事がコミュニケーションだといえます。どのようなことを伝えるにせよ、「相手」を主語において進めることがOJTの基本ではないでしょうか。
たとえば、「お前昨日、餃子を食っただろう。お客さまのところに行く前の日に餃子なんか食べるな」と言われ、相手が「食べるものにまで、とやかく言われたくないわ」と思ったとしても、それが後々、その人の役に立つのです。それを本人が理解した時、初めてそこに仕事を通じた信頼感が生まれるのです。相手の機嫌を取ったりして築いた関係性はすぐに壊れます。
■「叱る」基準とは
「これは絶対にやってはいけない」ということ以外のことを叱る必要も実務では出てきます。
この時のポイントは、ある事柄に対してどこまで相手ができるようになっているか、というのを見ることです。
自分がまったく介入しなくても、1人でできているのは「マル」、少しでも介入しなければいけないなら「サンカク」、まだまだ1人ではできず、危なっかしいなら「バツ」という基準で、見ていきます。
そして、「サンカク」「バツ」の事柄に対して、叱るようにします。叱る際は、現状と到達点とを明確にした上で、「バツをサンカクに、サンカクをマルにするために、この部分を直しなさい」と叱ります。
■何度も同じ失敗をする人への対処
何度言っても同じことを2回、3回繰り返す人間もいます。何回も繰り返すというのは、その事柄の目的を理解していない証拠です。「なぜそれをしないといけないのか」をもう一度、本人と確認するようにします。
ただ、仕事の仕組み・職場環境などに問題があり、何度も同じ失敗をすることがあります。例えば、お客さまにコーヒーをお出しする際、いつも、こぼしてしまう社員がいるとします。もしかすると、それはコーヒーカップが小さいためかもしれません。あるいはお盆が45センチ幅なのに、通路幅が50センチしかないからかもしれません。さらにはその人が、ものを持つと手が震えてしまう体質なのかもしれません。
突き詰めて考えると、その人自身に問題があるのか、職場の環境などの外的要因があるのか、はっきりします。その上で、相手が成長するように叱る事が重要です。
※この項終わり。次回もお楽しみに!
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