------OJTの指導を行う上で、「ほめ方、叱り方」ということも重要ですが、これに関して何かアドバイスいただけることはありますか
◆「とりあえずほめましょう」というような話はありますが、やたらめったらほめることはよくないと思います。
------具体的にほめ言葉の種類や使うタイミングなどについて教えてください
◆たとえば、「君は誠実そうだね」「優しそうだね」などの個人的な雰囲気や特徴に関するほめ言葉は、相手との関係が築かれていなくても素直に喜びやすいものです。このようなほめ言葉はOJT指導を始めた初期から使えます。
◆それに対して、「君は文章が上手いね」とか「論理的だね」など、相手の能力に関するほめ言葉は、相手との関係がある程度築かれた後でないと、相手も受け入れにくいほめ言葉です。相手が喜ぶ度合いも大きいですが、タイミングを間違えると逆効果となります。
------しかる方はどうですか?
◆「指導する」ことや「しかる」ことは、OJTリーダーの責任です。しかし、「しかる」ことと「怒る」ことを混同する人も少なくありません。
◆「しかる」ことは、成長を願って相手のために行うもので、「怒る」ことは自分自身の感情をぶちまけることです。
◆指導する(しかる)際には、「相手のため」にそれを言っているんだという姿勢を明確にすることが重要です。より具体的に、改善を求める理由を明確にするとともに、指導した点を改善しないと、「また同じ失敗をしてしまう」ことや、「自分やお客様に危険が発生する可能性がある」ことなどを伝えると、相手も受け入れやすい上に、「自分のためを思っていってくれている」と相手が感じやすいと思います。
-----------指導する相手とコミュニケーションをとる際に気をつけることはありますか?
◆コミュニケーションというのはやはり、仲良しクラブを作るのが目的ではないので、仕事でのコミュニケーションをとれることが大事なんです。
------それは何か狙いをもって相手に関わっていくということですか。
◆相手が今、すべきことは何なのか。それを順々に理解させることがコミュニケーションだと思います。どこを主に置くかで、伝わり方は違います。「相手」を主語として行うことが、全てのOJTの基本ではないかなと思います。
------やはり自分のことを心配してくれているという信頼感や安心感があるから、そういう人間の話は聞きますよね。
◆例えば、「お前昨日、餃子を食っただろう、お客様のところに行く前の日に餃子なんか食べるな」と言われ、相手が「食うものまでいわれたくないわ」と思ったとしても、それが後々ね、その人の役に立つのです。本人が理解したときに、初めてそこに仕事を通じた信頼感が生まれるのです。
------確かに、機嫌をとったりして築いた仲ってすぐに壊れますよね。ところで、「しかる」基準ってありますか?
◆自分が全く介入しなくても、ほったらかしでも自分と同じくらいにできるというのは「マル」としてください。自分がちょっとでも介入して、確認しなきゃいけないことがあるのでしたら「三角」にしてください。まだまだあぶなっかしいなあ、といつでも見てなければいけないというところは「バツ」と。
◆叱るときは、「三角」の人間も叱らなければなりません。叱ることによって、現状と到達点と、明確にして、あなたは「三角」を「マル」にするために、この部分をしなさいよと指導します。
------新人が、同じことを二回、三回繰り返してしまった、こういうときにはOJTリーダーとしてはどんな対応が必要なんでしょう。
◆何回も繰り返すということはそのことの目的を理解していない訳です。理解していないから間違いを繰り返すのです。問題が発生したときにリーダーとしては、その人に問題があるのか仕組みに問題があるのか、それともモノに問題があるのかを検討しなければなりません。
◆コーヒーを出すにしてもコーヒーをいつもこぼす、この辺に。そうするとカップが小さいのかもしれません。
出すときにもしかしたらトレイを使っていて、トレイが45cmあるのに、
通路幅が50cmしかないのかもしれない。その人は、手が震えるのかもしれません。
そのように、突き詰めていくと、その人自身に問題があるのか、
職場の環境など外的なものに原因があるのかがはっきりします。
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(『人事マネジメント2008年4月号』)
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最後まで、お読みいただき、ありがとうございました。