◇上林 憲雄氏(Norio Kambayashi)◇
英国ウォーリック大学経営大学院ドクタープログラム修了後、2005年神戸大学大学院経営学研究科教授、経営学博士。専攻は人的資源管理、経営組織。
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これまでこのコーナーでも,最近の人事マネジメントにおけるトピックスをいくつか紹介してきましたが,今回はそのダイジェスト・バージョンとして,昨今の日本企業の人事担当者が考えるべき課題について触れておきましょう。
一口に課題といってもたくさんありますが,敢えて3つに限定して述べることとします。
■企業の社会的責任
1つは企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)への対応です。コンプライアンスという用語も最近特によく聞かれるようになりました。ここ十数年で,CSRへの社会的な視線も厳しくなり,人事担当者もCSRを意識する必要性が高まってきています。対外的なCSRだけではなく,従業員への公正な処遇やトラブルへの適切な対応など,対内的なCSRも必要です。
対内的なCSRの延長線上にある最近のトピックスの1つが,このコーナーでも以前に取り上げたワーク・ライフ・バランスです。時間的側面だけに注目し,労働時間の短縮などを行うだけではなく,働くおもしろさを高めることも1つのバランスをとる取り方です。日本企業のコンテキストにあったワーク・ライフ・バランス施策を考えないといけません。
ただし,注意しなくてはいけない点は,社会的責任やコンプライアンスばかりに気をとられていると,本業でリスクを敢えてとろうとする姿勢がなくなってしまい,「法令だけ守っていればよい」と考える集団になってしまうこともあります。いわば,バランス感覚が求められるのです。
■グローバリゼーションへの対応
2つめがグローバリゼーションへの対応です。90年代初頭に日本に成果主義を取り入れようとした際,アメリカンスタイルをそのまま真似て導入する例が散見されましたが,それでは仕組みとして破綻してしまいます。日本の分野,社会,風土に合うようにアレンジしないといけないのです。働いている人の働きやすさを考慮するとともに,企業の生産性・業績とのマッチングをはからなければなりません。
国際化に際しても,他国や他社のコピーではなく,自分の頭できっちり考えた上で対応を考えないといけないということで,ここでもバランス感覚が重要になってきます。
■ダイバーシティへの対応
3つめが,ダイバーシティ(多様化)への対応です。これもこのコーナーで以前に触れましたが,女性の社会進出や非正規社員の増加など,働く人々の属性や働き方が多様になるとともに,在宅勤務や裁量労働など,働く場所や方法も実に多様になってきています。それに伴い,人事制度も多様で選択の幅があるものをつくっていかないといけません。
☆次回につづく!
「きみは営業に向いてない」
周りの人にさんざん言われていながら入社早々営業担当になってしまった中島が伝える、営業の頑張り方