ダイバーシティ2021 ~アフターコロナ・ウィズコロナ時代の働き方

ダイバーシティ推進の本質は、多様性の実現による組織の業績向上です。しかし、現場では制約や事情を持ち働く人の救済施策とみる向きが強く、取り組みが進まないのが現状でした。本ページでは、コロナ禍によって変化した働き方を踏まえ、「不要不急」から「必要緊急」となったダイバーシティ推進とその教育について言及していきます。

本内容は、インソースENERGY FORUM 2021「ダイバーシティ2021」の内容を書き起こしたものです。ENERGY FORUM 2021にご参加いただけなかった方や、もう一度じっくり振り返りたい方はぜひ、本記事をご活用ください。

アフターコロナ・ウィズコロナ時代の働き方の変化

(1)コロナ禍により到来した非日常の連続

当たり前となるリモートワーク

2020年春、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、これまで一部の人に限られていたリモートワークがコロナ禍を機に一気に普及しました。役職も年次も、働くうえでの事情の有無も飛び越えて、あらゆる人が同じ空間をともにしないリモートワークに突入したのです。

昨日まであった仕事がなくなる

コロナ禍では営業や接客など行うことができない業務が発生し、仕事がなくなる人材・組織が出てきました。緊急事態宣言の解除以降も、業務の進め方は引き続き見直しが求められ、それが新しい働き方となりつつあります。

部・課で仕事をするという前提が崩れる

仕事がなくなる中、仕事を前進させる利害関係者が集まり、即席のチームで仕事を進める場面も多くみられました。業務を自ら推進できる者は組織から必要とされ、指示を受ける者はその存在感を発揮する機会を失いました。

(2)コロナ前後で変化した働き方 ~成果主義の強化

成果をもって評価を得る

リモートワークへの移行に伴い、多くの組織では、部下を"純粋な業務の成果"で評価するようになりました。これまでは多くの職場で、一定時間仕事をする姿を見せることで給与を得るという構造になっていましたが、空間をともにしない働き方においては具体的な成果を持って報酬を得るようになります。時間あたりの成果が重視され、「いつも遅くまで頑張っているから」「職場の雰囲気をよくしてくれるから」といった成果以外の観点での評価は得にくくなりました。

残業は一種の権利になる

リモートワークにおいて、また不況下において、組織にとって残業は削減すべき対象となります。残業は管理できない組織リスクであり、コストとなるためです。残業は成果を生み出す人材が、上長の承認を得て行うものとなります。これまでスキルの不足を残業でカバーしていた人材はそれが叶わなくなり、「成果を生み出せる人」と「成果を上げにくい人」では、スキル格差がますます広がっていきます。

コロナ前後で変化した働き方

(3)ダイバーシティは力を発揮するか

試される柔軟性と創造力

これまで当然としてきた前提が崩壊し、働き方の変化を求められる中で、組織人はその柔軟性と創造力が試されています。創意工夫をして業務を推進する者は称賛され、ただ指示を待つ者はその存在感を薄めます。先の読めない環境において必要とされるのは「日常が崩壊した際、組織人として何ができるか」という前進の視点です。

ダイバーシティは力を発揮するか

この文章をお読みの方は、組織のダイバーシティ推進に対し、企画推進者として、または当事者として関わっている方もいらっしゃるかもしれません。ダイバーシティ推進に関わってきた組織人として持つべき視点は「この非日常において、組織のダイバーシティはどのように力を発揮するか」という視点です。

意図せず普及したリモートワークは、「新しい働き方」を推進するチャンスであり、これを一過性のものとせず、業績向上の手段として根付かせることが重要です。

アフターコロナ・ウィズコロナ時代のダイバーシティ推進

(1)業績向上としてのダイバーシティ推進

ダイバーシティ推進とは、多様性を認め、多様な人材が活躍できる組織・社会をつくることです。重要なのは、ダイバーシティ推進は業績向上の手段であり、経営課題の解消施策であるという点です。実際、多様性を含む企業はそうでない企業と比べ、優れた業績を高い確率で達成するというデータもあります。そして、以下のような効果が見込まれ、経営施策として据える企業も増えています。

ダイバーシティ推進による効果

  • 優秀な人材の獲得と離職防止
  • 組織に対するロイヤルティの向上
  • 変化への対応力とリスク耐性の向上
  • 業務の仕組み化による生産性向上

(2)近年のダイバーシティ教育の潮流 ~「個」を見る

これまで日本国内におけるダイバーシティ教育は、女性活躍推進一色でした。しかし近年、多様な性・年代・国籍・働き方・特性・障がい・制約・価値観を持つ人に、その範囲を拡大しています。「属性」を越え、「個」を見るダイバーシティの普及・浸透をはかる段階へ着実に進んできています。

多様性におけるキーワード

(3)ダイバーシティは困っている人の救済施策として捉える現場の実際

組織方針は着実な進化を見せる一方、現場の実際はどうなのか見てみましょう。

制約や事情を持ち働く従業員のための救済施策と見る向きが強い

現場管理職からは、組織のダイバーシティ推進は「困っている人のために会社がやること。自分には関係ない」という声がいまだ聞こえてきます。現場管理職や経営層がその必要性と利点を自分ごとにできていない様子が伺えます。

多様な視点を持つ人たちと一緒に働くのは面倒くさい(=工夫が必要)

ダイバーシティ推進に対する本音の中には、「多様な視点や空間をともにしない人と働くのは面倒くさい」という声もあります。同質な集団のほうが生産性を高められるように感じるバイアスが機能し、現場ではダイバーシティ推進がなかなか進まないのが現状なのです。

(4)コロナ禍が結果的にもたらした「フェアに戦う環境」

空間をともにしない働き方の推進と受容

コロナ禍により否応なしにリモートワーク体制に突入し、多くの人がその利点を(また同時に不利点を)実感しました。イメージだけでリモートワークの実現可否を判断してきた組織や人にとっては大きな前進であったと言えます。

情報取得・教育機会の平等性

会議や教育は、営業時間内にオンライン上で行われることも多くなりました。そのため「時短勤務で会議に出られない」「終業後に行われる勉強会に参加できない」といった機会の不均等の解消につながっています。

残業時間や属性に捉われない「成果」による評価

同じ制約下で働く環境では、時間あたりの成果が重視されます。「女性に管理職は荷が重い」「シニアは柔軟性に欠ける」といったアンコンシャス・バイアスは、成果をもって打破できる環境になりました。

このように、コロナ禍を経て、結果的にフェアに戦う環境が出現しました。これまで「困っている人のために不均等を埋める施策」とみなされてきたダイバーシティ推進は、多様な人材が一緒に成果を競うダイバーシティ推進へと変化しました。

(5)「不要不急」から「必要緊急」のダイバーシティ推進へ

リモートワークが一般化し、多様な人が、多様な働き方で業績を上げなくてはならない今だからこそ、ダイバーシティ推進の必要性が高まっています。管理職・経営層といった意思決定者にとって「不要不急」であったダイバーシティ推進は、いまや「必要緊急」の施策となったのです。

ダイバーシティ教育における3つの要点

(1)アンコンシャス・バイアスを発見する

アンコンシャス・バイアスとは

アンコンシャス・バイアス(Unconscious Bias)とは「無意識の思い込み」「自身で気づいていない偏ったものの見方」を指します。

  • Unconscious=無意識の、自覚のない
  • Bias=先入観、偏見、ひいき目、考え方に偏りを生じさせるもの

アンコンシャス・バイアスは、経験・ナレッジの蓄積により、仮説構築に時間をかけずスピード感のある思考と対応を可能にします。反面、一方的な思い込みにより、相手に不公平や機会損失をもたらす可能性もあります。自分の中にあるアンコンシャス・バイアスに気づくことは容易ではありません。

「あの人は〇〇だから、こうしてあげよう」といったアンコンシャス・バイアスは、時に善意や配慮の形をしています。ダイバーシティ教育においてまず重要なのは、社会や組織、自身の中にあるアンコンシャス・バイアスに気づくことです。

アンコンシャス・バイアスがもたらす悪循環

例えば、「女性だから〇〇だろう」というバイアスは、女性社員に任せる業務に偏りを生じさせ、獲得する仕事力を限定します。自身のスキル不足に不安を感じる女性は自信が持てず、管理職という選択肢は消えていきます。

また、ライフイベントに直面し、より仕事力が求められたとき、就労継続を諦めてしまうのです。それをみた管理職は「ほら、やっぱり女性は〇〇じゃないか」と、アンコンシャス・バイアスを強化し、お互いがいつまでも抜け出せない悪循環に陥っているのです。女性活躍推進の課題として「女性管理職比率の伸び悩み」「女性社員の定着率の低さ」「経営人材のプールの枯渇」が叫ばれますが、その根底に流れるのは、社会・組織・個人の中で脈々と続くアンコンシャス・バイアスなのです。

バイアスがもたらす悪循環

(2)「マインド」と「スキル」の両方にアプローチする

意識(マインド)はすぐに変わらない

アンコンシャス・バイアスを発見し、組織内の多様性を認めることは、これまで自身が大切にしてきた価値観や慣例を見直すことでもあり、時に葛藤や戸惑いをもたらします。そのため「意識」を変えるには時間が必要であり、意識させ続けることが重要となります。留意すべきは、意識偏重のダイバーシティ教育ではなかなか結果がついてこないという点です。

行動はすぐに変わる

一方で、「行動」はすぐに変えられます。まずは行動を変えることで、周囲の反応が変わり、それが成功体験となって意識の変化を促します。マインドに加え、行動を変えるために必要なスキル獲得にアプローチすることで、はじめて教育効果が可視化されるのです。

マインドとスキル両方のアプローチで、研修効果を可視化する

ダイバーシティ推進は、一朝一夕に成果が出るものではありません。教育を継続し、風土が少しずつ変化し、その結果として管理職比率や定着率といった対外的な数値の向上につながります。

重要なのは教育投資を止めないことであり、組織においてダイバーシティ教育の投資を続けるためには、研修内容の満足度や活用度といった指標を用いて効果を示していく必要があります。教育投資を続けるためにも、マインドとスキルの両方にアプローチをして、実のある教育を設計していくことが重要なのです。

女性活躍推進プログラム例

その他、マインドとスキルにアプローチする多様なプログラムをご用意しております。

(3)成果を出すための"リアルなスキル"をつける

個人の仕事力がものをいう時代

前述したように、アフターコロナ・ウィズコロナ時代は、個人の仕事力がものを言う時代です。個人の属性や働くうえでの事情を超え、フェアに戦う環境において、必要となるのは成果を出すための「リアルなスキル」です。

組織が求めるスキルをつける

リアルなスキルとは、組織の成長において必要なスキルです。往々にして、現場が求めるスキルは企業の成長に必要なスキルと必ずしも合致しません。現場で重宝されるスキルではなく、組織の成長において必要なスキルを提示し、獲得させることもまた重要なダイバーシティ教育です。

リアルなスキルを見える化・標準化する

組織の成長に必要なリアルなスキルを標準化・可視化できると、業務のアサインは容易になります。また、個人が不足しているスキルと活躍できる人材の育成方法が明確になります。弊社では、このリアルなスキルを可視化したものを「スキルマップ」と呼んでおり、このスキルマップで個人の習得状況を把握できれば、人材育成、人材配置、人事評価に活用することができます。

個人が仕事力を身につけるダイバーシティ教育の第一歩として、組織が求めるリアルなスキルを考えることから、はじめてはいかがでしょうか。

で作成・提供している標準的なスキルマップの構成イメージ

多様な人材が同じフィールドに立ち、個の仕事力を問う厳しい時代となりました。新たな局面における雇用と会社を守るために、ダイバーシティを推進し、従業員の仕事力を高め、業績向上を果たすことが人事・企画部門の皆さまには求められています。弊社はこれまで数多くの組織で、ダイバーシティ教育をご支援してきました。各組織の方針や段階に合わせた教育のご提案をさせていただければと存じます。

アフターコロナ・ウィズコロナ時代のダイバーシティ推進に挑むプラン

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