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デジタルスキル標準
データ・デジタル技術を活用した産業構造の変化の中で、企業が競争上の優位性を確立するためには、DXの素養や専門性を持った人材を育成することが急務です。多くの日本企業がDXの取り組みに遅れをとっていることから、経済産業省は2022年12月に「デジタルスキル標準(DSS)」を取りまとめました。翌年8月には生成AIの登場や進化を踏まえてDXリテラシー標準(DSS-L)が見直され、さらに2024年7月に、生成AIの急速な進展に伴いDX推進人材の役割と必要なスキルを定義したDX推進スキル標準(DSS-P)を改訂したものが公表されています。
デジタルスキル標準は、ビジネスパーソン全体がDXに関する基礎的な知識やスキル・マインドを身につけるための指針「DXリテラシー標準」と、企業がDXを推進する専門性を持った人材を育成・採用するための指針「DX推進スキル標準」の2種類で構成されています。
1.DXリテラシー標準:全てのビジネスパーソンが身につけるべき能力・スキルの標準
社会全体のDXが加速する中で、人生100年時代を生き抜くためには、組織・年代・職種を問わず働き手一人ひとりがDXを自分事と認識し変革に向けて行動できるようになることが重要です。DXリテラシー標準とは、DXの成果を仕事や生活で役立てるうえで必要となるマインド・スタンスや知識・スキルを汎用的に示す学びの指針として掲げられているものです。学びを各企業・組織に適用するうえでは、組織の属する産業や自らの事業の方向性に合わせた具体化が求められます。DXリテラシー標準は、以下に示す基本知識3点とマインド醸成の計4点で構成されます。
- ①Why:DXの背景
なぜいまDXが重要視されているのか、その背景や社会・顧客・競争環境の変化についての知識を習得 - ②What:DXで活用されるデータ・技術
ビジネスの場ですでに活用されているデータやデジタル活用の考え方についての知識を習得 - ③How:データ・技術の利活用
自組織がビジネスの場でデータやデジタル意識を活用する方法や注意点等の知識を習得 - ④マインド・スタンス
社会変化の中で新たな価値を生み出すための、自身の意識・姿勢・行動を理解
2.DX推進スキル標準: DXを推進する人材の役割や習得すべきスキルの標準
DX推進担当者の役割や習得が望まれる知識・スキルを示し、それらを育成の仕組みに結び付けることで、リスキリング促進・実践的な学びの場の創出のほか、能力・スキルの見える化を実現するために策定されたものです。DX推進には、次のような人材が必要とされます。
- ①ビジネスアーキテクト
ビジネスや業務の変革によって実現したいことを設定し、関係者をコーディネート~協働関係の構築をリードしながらプロセスを推進させる人材 - ②データサイエンティスト
DX推進をデータ収集・解析する仕組みづくりで実現する人材 - ③サイバーセキュリティ
デジタル環境におけるサイバーセキュリティリスクの影響を抑制する人材 - ④ソフトウェアエンジニア
デジタル技術を活用した製品やサービスを提供するためのシステムやソフトウェアの設計~運用を担う人材 - ⑤デザイナー
ビジネスの観点あるいは顧客やエンドユーザの視点などを総合的にとらえ、製品・サービスの方針や開発のプロセスを策定する人材。製品やサービスのあり方をデザインする
インソースでは、まずは全従業員向けに意識改革の教育からスタートすることをおすすめしています。すべての社員・職員に、データ活用やシステム化によって携わっている仕事の生産性を上げられる可能性がある、という知識を浸透させることが極めて重要です。業務に精通しているからこそ、DXに向くもの・向かないもののすみ分けやシステム化におけるリスクを洗い出すことができるからです。
またDX推進の実務を若手メンバーに任せることも有効です。既存の業務の進め方にとらわれすぎることなく、新しい考え方や専門スキルをすぐに吸収し、応用力も高いことが多いのです。先述のデータサイエンティスト・ソフトウェアエンジニアの役割に若手を、ビジネスアーキテクト・デザイナーなどにはベテラン人材を配置するなどして世代や部門を超えた協働プロジェクトを立ち上げることは、組織活性化にもつながります。