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人材戦略としてのハラスメント対策
人材不足時代における、ネット上の「職場のハラスメント」情報
昨今、ニュースではハラスメント問題が毎日のように取り上げられています。当事者が大きな会社や組織の要職者ともなれば、実名で報道され組織に対する影響も測り知れません。しかし、世の中にはおそらくその何十倍何百倍ものハラスメント事案が日々発生していると思われます。試みにネットで検索してみると、様々な職場でのハラスメントの実態が、社名や実名とともに無数に出てきます。真偽はともかく、こうして拡散される情報は、企業や組織の採用活動や取引に負の影響を及ぼしていると考えられます。
空前の売り手市場の中で就職した世代にとっては、理不尽な思いを我慢してまで今の職にとどまる理由はありません。たとえ、自分が直接ハラスメントを受けた当事者ではなくても、組織にそうした体質があることを感じただけで転職を考え始めると言います。こうしたイマドキ世代が頼るのがネット上の情報であり、当然ながらそこでハラスメントの噂が立っている会社は、転職先の候補から除外されます。
人事部を悩ませる「優秀な人のハラスメント」
組織のハラスメント体質がなかなか解消しない理由の一つとして、「ハラスメントを起こす人の多くが、組織の中で成績の良い人である」ということが挙げられます。事件になるほどの問題こそ起こさずとも、その人の"理不尽さを伴う厳しいプレッシャー"によって、部下が何人も辞めていったり、うつ状態になる者が続出したりするようなケースです。人事部門としても問題には薄々気付いてはいるものの、「組織貢献度の高い優秀な人」にペナルティを与えることを躊躇する嫌いがあることは、否定しづらいのではないでしょうか。
個人の矯正だけではなく組織の風土改革を
組織のハラスメント問題は、特定の個人だけに原因を求めても、根本的な解決には至りません。職場内にある極端な成績至上主義がもたらすプレッシャーや、儲けのためにコンプライアンスを軽んじる気質、取引先攻略のために暗に女性営業職に接待を強要する風潮など、その業界や組織に残る"負の風土"が、そうしたハラスメント加害者を増長させ、悲劇を生んでいるのです。つまり、本当のハラスメント防止のためには、組織風土改革が不可欠ということです。ハラスメント問題は、想像以上に組織に対するダメージの大きい問題です。社会的に問題が大きく取り上げられている今こそ、組織の風土改革のチャンスと言えるのではないでしょうか。
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※2017年1月1日の男女雇用機会均等法改正に伴い、マタニティハラスメント(妊娠・出産等に関するハラスメント)LGBTなどの性的少数派へのセクハラについても取り上げます。