昨今、働き方改革が進み、時差出勤やテレワークを導入するなど、一人ひとりの働き方そのものを見直す組織が増えています。その中で、これまで集合型の研修が当たり前だった人材教育のあり方から、「eラーニング」や「オンライン研修」など、モニター越しでどこにいても教育を受けられるような手法に対して注目が集まっています。
しかし、オンライン研修をご検討されている組織からは、以下のようなお悩みもよくうかがいます。
- 「PCやネットに詳しくないと難しそう、何を準備すればいいかわからない」
- 「講義を聞くだけになってしまいそう」
- 「eラーニング(動画視聴)と何が違うの?」
そこで本記事では、創業以来様々な組織の人材育成に携わってきた弊社の知見を踏まえ、オンライン研修を成功させる運営上のコツや注意点をまとめてご紹介します。是非ご一読いただき、今後の人材育成計画の検討にあたり、一助としていただければ幸いです。
オンライン研修とは
オンライン研修(Web研修)とは、Web会議システムなどを用い、PCを通じて受講できる研修のことです。「Webセミナー」、「ウェビナー(WebとSeminarを組み合わせた造語)」とも呼ばれています。
講師のいる会場と各拠点をインターネット回線でつなぎ、受講者は手元のテキストやPC画面を確認しながら、講師の音声をヘッドホンで聞いて学びます。
PCやネット環境など最低限の準備は必要ですが、受講者は外部の研修会場に赴くことなく、全国どこからでも参加することが可能です。
自社の会議室などに拠点ごとに集まる「多拠点参加型」、あるいは自席や自宅などからの「個別参加型」があります。
オンライン研修の特徴
(1)グループワークができる
Web会議システムを利用したオンライン研修は、複数の受講者をグループ分けすることも可能です。
全体での講義の後、それぞれのグループに分かれてディスカッションをしたり、講師がフィードバックを与えたりするなど、相互のコミュニケーションをとることができます。
(2)チャットで質問などができる
さらにオンライン研修の特色としては、チャット機能を使って参加している人の声を集めることができます。例えば、講師への質問をチャットで行い、それに対してのフィードバックを講師がライブで行う、といったインタラクティブな講義も可能になります。
「チャット」とは、インターネットを介してリアルタイムに会話をする仕組みのことです。オンライン研修で使用するチャット機能とは、映像の横にインターネット掲示板がついているようなものだとイメージしていただくとよいでしょう。講師への質問を書き込む、ワーク発表時に「まとめの一言」を書き込む、といった使い方が考えられます。
(3)eラーニングとの使い分け
eラーニングはモニターを見ながら学習するという点でオンライン研修と似ています。それぞれの特徴を知り、目的によって両者を使い分けるのがおすすめです。
eラーニング
- 映像コンテンツやスライドを、何度も繰り返し使用できる
- 受講者は、自分の都合のよい時間に見ることができる
オンライン研修
- 講師と受講者、または受講者相互のコミュニケーションを取ることができる
- グループワークやディスカッションを行うことができる
例えば、コンプライアンス研修や情報セキュリティ研修を実施するとします。
最新の動向や知識付与が目的ならば、各自都合のよい時間に繰り返し学べるeラーニングが便利です。
一方、自組織の課題を洗い出し、施策に落とし込むまでを目的とするなら、ディスカッションも可能なオンライン研修が有効です。
オンライン研修のメリット
最大のメリットは、勤務地による教育機会の格差を縮められ、交通宿泊費などのコスト減が見込める、という点です。自宅での受講が可能となれば、休職中の社員にも必要な教育を途切れずに実施することができます。
また、全国どこからでも参加ができるという点です。感染症拡大などのリスクで人の移動や一カ所に集まることが制限される事態においても、研修を実施することができます。
オンライン研修に必要なツール
研修受講の際、受講者側で必要な準備物は下記の5つです。
- Web会議システム(Zoom※など)がインストールされたPC
- ヘッドホンセット
- USBカメラ(可能な限り:受講者同士の顔が見える方が臨場感が出る)
- 印刷テキスト(可能な限り:手元にテキストある方が講師の話に集中できる)
- 有線ネット環境(可能な限り:安定したネットワーク環境が安心)
Zoomの名称およびロゴは、Zoom Video Communications, Inc.の米国および日本を含むその他の国における商標または登録商標です
オンライン研修を成功させる運営のコツ
(1)テクニカルトレーニングを実施する
受講者の職種や業界、あるいは世代によって、オンラインでの研修の受けやすさには大きな開きがあります。操作方法が分からないと、ワークに参加できなくなるなど研修効果が半減してしまいます。
そこで、操作マニュアルを用意するのはもちろん、研修の冒頭で一番慣れていない人を基準にした「テクニカルトレーニング」を実施するとよいでしょう。
トレーニング項目例
- マイクのオン・オフの切り替え方(ミュート操作)
- カメラのオン・オフの切り替え方
(2)約1時間区切りでコンパクトなタイムスケジュールを作る
周りに参加者がいない環境では、受講者の集中力にはどうしても限界があります。長時間モニターを見続けると集中力が低下する、目が疲れる......というのは想像に難くありません。また、ヘッドフォンで聞き続けることで耳への負担も意外と大きいということも、運営側は知っておく必要があります。
全ての受講者が適度に集中できる時間は30分~1時間程度と考え、10分ほどの休憩を適宜取るようにします。講義の間に休憩時間をこまめに挟むことで1日間の研修も企画可能ですが、できるだけコンパクトに実施することを心がけましょう。事前にテキストを配布し、講義部分の精読と個人ワークまでは各自行ったうえで、研修中はなるべくグループワークやディスカッションに時間を割き、オンラインの実施時間を短縮するのも一案です。
(3)進行補助役(オペレーター)をおく
オンライン研修を円滑に進めるにあたっては、Web会議システムの操作に慣れた方や、機材トラブルに対応できる方がいるといいでしょう。即座に対応できる人がいるだけで、講師や受講者が安心して研修に取り組むことができます。
オンライン研修の注意点
(1)事前準備は万全に
オンライン研修は、PCやネット回線、マイクの設定・確認などの準備に時間がかかります。できれば前日までに、機材の動作確認やネットワークへの接続テストなどを実施しておきましょう。
また、紙の資料やテキストを手元に置きながら受講してもらう場合、各拠点に確実に届くよう手配する必要があります。
(2)「顔出し受講」を原則とする
USBカメラの設置が間に合わない場合、音声とチャットのみで受講することも可能です。しかし、顔出ししていないと受講者側の緊張感が薄れ、「聞き流し勢」が発生する可能があります。また、グループワークを実施するにも、相手の顔が見えないと臨場感が下がってしまいます。効果の高いオンライン研修を実施するためには「顔出し受講」を原則とし、できれば受講者の了解を事前に取っておきましょう。
しかし、自宅で受講する人の中には「部屋の様子が映ってしまうので顔出ししたくない」という声も聞かれます。気になる人は、Web会議システムの機能でバーチャル背景を設定して自分の好きな画像を映すことなどもできます。Web会議システムにできることを担当者が把握したうえで、受講者に事前にレクチャーしておくとよいでしょう。
(3)ワークショップ的な取り組みは難しい
オンライン研修でも、グループワークやディスカッションは実施可能だということは、これまでお伝えしてきました。しかし、あまり向かないカリキュラムもあります。例えば、名刺交換などのロールプレイングやチームで行うビジネスゲーム、協働して何かを作り上げるワークショップ的な取り組みは、別の研修機会に譲ることをおすすめします。
<最後に>
オンライン研修を行うにあたって、メリットや成功させる運営上のコツ、注意点をご理解いただけましたでしょうか。オンライン研修の運営は、初めのうちは知識豊富なアドバイザーに相談を仰ぐのもよいでしょう。Web会議システムの使い方に慣れてきたら、自社での配信も可能です。是非これからの新しい人事教育のありかたの一つとして、オンライン研修をお考えいただけますと幸いです。