ファシリテーション4つのポイント~議論を活性化し合意に導く

生産性向上が叫ばれる中、日々行われる会議においてもムダをなくすことが求められています。テレワーク・リモートワークの普及が進んだことから、オンライン上の会議が増えたこともあり、会議の運営を支援し、生産性の高い会議を実現する「ファシリテーションスキル」に改めて注目が集まっています。

本記事では、「意見が出ない・いつまでも結論がでない」といった会議におけるお悩みの解決に向け、対面・非対面に限らず必要なファシリテーションの基本の4つのスキルを解説するとともに、オンライン会議特有の留意点についてもお伝えいたします。

ファシリテーションとは~チームの活動を支援し、成果につなげる

(1)ファシリテーションとは

「ファシリテーション」とは、主に会議などの集団で行う活動の場において、成果を上げられるように、段取り・進行・支援をすることです。その役割を担う人のことを「ファシリテーター」と呼びます。

働く環境も人材も多様化が進み、異なる価値観をもったメンバーがひとつのチームで働くようになりました。多様な価値観に基づいた意見を、限られた時間の中で合意に導くファシリテーションスキルは、チームで働くうえでますます不可欠なものとなっているのです。

本コラムでは特に、打合せや会議におけるファシリテーションスキルについて解説します。打合せや会議を有意義なものにするためには、場を仕切る人の存在が欠かせません。ファシリテーターは、議論が膠着してしまわないように支援し、合意形成を促し、結論まで導く役割を果たします。

(2)ファシリテーターに求められる4つのスキル

会議を通じて実現したい目的を達成するために必要となるのが、「ファシリテーションの4つのスキル」です。このスキルを習得することで、より多くの意見をメンバーから引き出し、そこから合理性が高く、納得感のある結論・合意へと収束できるようになります。

場のデザインスキル(共有)

会議の目的をふまえ目標を確認し、参加メンバーに共有する。事前準備を行う

対人関係(コミュニケーション)のスキル(発散)

傾聴や質問を通じて参加者全員が意見を言いやすい環境を作り活発に発散してもらう

構造化のスキル(収束)

発散で出た意見や議論の内容を整理しながら共有し、論点を構造的に絞り込む

合意形成のスキル(決定)

目標に向かい、可能な限り全員が納得する結論にまで導く

会議の生産性を高める手法①~場のデザインスキル(共有)

場のデザインスキルとは、「会議の事前準備」のことです。事前準備とは、会議の場所や日時設定だけでなく、そもそも何のためにこの会議をするのかという目的や目標、議論する項目、参加者の心構えなどをあらかじめ伝えておくことも意味しています。

(1)何のための会議なのか、目的を明確にする

成果が上がる会議にするポイントは、事前に目的と目標、議題を参加者全員が把握しておくことです。

目的を把握できていれば、目指すべきゴールを共有でき、そこにたどり着こうと参加者自身の意識が働きます。また、意見が出にくいことが予想される会議の場合は、事前に意見や考えをまとめておくよう参加者に依頼することも有効です。

(2)会議の種類に合わせたルールを決める

会議には、情報共有のための会議、合意形成や問題解決のための決める会議・アイデア出しの会議などがあります。会議の種類によって目的は異なるため、スムーズに議論が進むよう会議の種類に合わせたルールを共有し、それに沿って議論を進めます。会議冒頭で、「本日の会議の目的」と「そのための運用ルール」をアナウンスしましょう。

<会議の種類>アイデア出しの会議

<目的>できるだけ多くのアイデアを出す

<ルール>

  • 全員に1回は発言してもらう
  • 人の話を遮らない
  • 出た意見に対して文句を言わない

<会議の種類>決める会議

<目的>時間内で合意まで進める

<ルール>

  • 相手を非難せず、互いの意見を尊重する
  • 説明は3分以内、発言は1回1分以内など時間を決める
  • 質問などがある場合も、発表者の話をいったん最後まで聞いてから発言する
  • 会議で決定した事項は、会議中に蒸し返さない

目的とルールがしっかりしていると、話題が横道にそれたり、建設的な意見を阻む発言が出た際、角を立てずに本題に戻すことができます。

会議の生産性を高める手法②~対人関係(コミュニケーション)のスキル(発散)

対人関係のスキルとは「話を引き出すコミュニケーションスキル」のことで、傾聴・介入・観察・質問・話すの5つに分離することができます。傾聴や質問を織り込んで、意見を引出しながら進行し、議論の活発化を支援します。

会議では、他の参加者への遠慮や上下関係などが影響して、参加者から本音での意見が出ないことがあります。こうした隠れた意見を中立的な立場から引き出すこともファシリテーターの大事な役割です。参加者が意見を述べやすいよう支援し、安心して発言できる環境を作ります。

(1)安心できる環境を作る

初対面の参加者がいる場合などは特に、最初に自己紹介や近況報告などで場を和ませてから本題に入るとスムーズです。

  • 議題に入る前に、参加者から一言発言してもらう機会を作る
    例:「本日は初めての方も多いので、一人1分以内で自己紹介をお願いします」
  • 議題に入る前に、参加者の状況を全員に案内する
    例:「本日の参加者は10名です。〇〇さん、△△さんはリモートでの参加です」

(2)ファシリテーターは中立な立場を守る

ファシリテーターは、それまでの議論や目的、目標からそれた意見が出た場合にも、同意・反対はしません。あくまで中立の立場から意見を受け取り、フォローしながらすすめていきます。 そのうえでさりげなく本筋に戻すと「前向きに応じてもらえた」と発言者は受けとります。

  • 目的からそれた意見が出た場合は次のように軌道修正する
    例:「〇〇についても考えることは重要ですね。(ところで)□□については、ご意見いかがですか」

(3)傾聴・介入・観察・質問・話すスキルを身につける

  • 傾聴......相手の意見を無条件に受け入れ、相手とともに考える姿勢
  • 介入......最初に決めた会議のルールに沿って、公平な介入を行う
  • 観察......異議なしと発言していても、心からの賛同か、わだかまりがないか表情を
        観察する
  • 質問......さらに話を掘り下げたり、違う視点から問いを投げかける
  • 話す......わかりやすく話をまとめたり、参加者へ簡潔に説明する

会議の生産性を高める手法③~構造化のスキル

構造化スキルとは、「議論を通じて出た様々な意見を論理的に整理し、会議の目的に沿った形で収束させるスキル」のことです。構造化には大きく分けて2つの力が求められます。

  • ものごとを論理的に整理し考える
  • ものごとの全体像を大局的につかむ

ファシリテーターは、会議で出たどんな意見もとりこぼさずホワイトボードなどに記録していきます。出席者全員がすべての意見を目にすることで、議論の内容が見える化され、議論の堂々巡りを防ぎます。

(1)意見を見える化し参加者全員で共有する

議論を見える化・図解化することで、全員が同じ視点で議論に臨むことができ、相互理解も深まります。色分けやグループ分けをすることで、整理・論点を絞り込んでいくとより効果的です。オンラインで実施する場合もホワイトボードを映したり、パワーポイントを画面共有するなどの方法で、可視化できます。

【見える化のポイント】

  • 色別に意見を分ける
  • グループ化する
  • 出た意見の関係性を整理して構造化する
  • 意見を端的にまとめる

(2)見える化の手法

議論の中で出た意見をグルーピングしてみる

グルーピングは、会議で出た様々な意見を、ひとつの結論として収束させるにあたって、「これらの意見に共通していることは何だろう」と考える手法です。様々な切り口でグループ分けを考えることで、意見の「要点」を導きだすことができます。

<グルーピングの手法>
同じような意見でグループを作ってみることで、共通点を見つけられます。共通点がそれらの意見の「要点」です。

要点が見えると「ヌケ・モレ」が見つけやすくなります。要点が導きだせたら、他にも要点を満たすものはないだろうか?と考えることができます。

切り口を変えてグルーピングしましょう。グルーピングする際の切り口は、ひとつだけとは限りません。別の切り口で分類したらどんなグルーピングができるだろうかと考えてみることも必要です。

ホワイトボードなどを縦に2分割する

賛成と反対、理想と現状、メリットとデメリットなど、対立軸を明らかにし、出た意見を記載していきます。 その際、色分けするとわかりやすくまとめられます。

会議の生産性を高める手法④~合意形成のスキル

合意形成のスキルとは、「結論を導き出すスキル」のことです。ファシリテーターには、中立な立場から参加者が納得して自ら結論に同意できるよう支援する力が求められます。

(1)合意形成に導くリーダーシップ

特定の人ばかりが意見を出すような不公平感を感じないよう、意見をまとめ、落としどころを見つけるのがファシリテーターに求められるリーダーシップです。

意見の合意が難しい方向に議論が進んだら、一度会議の目的に立ち返ります。意見が対立した場合、目的に照らし合わせ、どの意見がより目的に適したものなのか考えるよう促しましょう。

(2)どうしても議論がまとまらないときの手法

対立の構図に入ってしまうと、双方とも自分の立場でしか、ものごとを見ることができなくなってしまいます。

視点の切り替えを促す

ファシリテーターから、それぞれの立場から見た意見を中立的に相手側に伝えることで、双方に「視点の切り替え」を促しましょう。また、妥協点や代替案を提示することも一案です。

例:「両者の意見を踏まえ、あくまでも例ですが、このようなことは検討できますでしょうか?」

第三者に任せる

意見は出たものの議論がまとまらない場合、議題の最終責任者などに一任して決着を図るのもいいでしょう。参加者に意思決定の方法を提示することが大切です。

例:「色々な意見が出ましたが、最終的に〇〇長に決めていただくということで良いでしょうか」

オンラインファシリテーションのポイント

オンラインファシリテーションスキルとは、WEB会議システムなどを使用して実施されるオンライン会議を円滑に進めるスキルです。

オンライン会議には「どこからでも参加ができる」「ファイル共有がデータで行えるためペーパレス化につながる」などのメリットがあります。一方、「音声トラブルなどで会議の進行が妨げられる」「参加者の反応を読み取りにくい」「発言のタイミングが難しい」などの課題を解決する必要があります。

(1)事前準備:使用する機材や通信環境の整備

音声やカメラが機能するかどうか事前にテストし、トラブル時にはどう対処するか決めておくと安心です。

  • 参加者全員に、余裕を持って通信のテストを行い接続できるよう、各自準備しておいてもらう
  • 会議室メンバーが発言する際は、マイクがハウリングしないよう、他の参加者は音声OFF(ミュート)にする
  • 通信環境が不安定な場合は、カメラをOFFにして音声だけで参加するなどルールを決めておく

(2)会議中:硬くなりがちな雰囲気を和らげる

オンライン会議では、話し手はパソコン画面の中の会議ツールに、小さな枠に囲まれて表示されます。そのため、聞き手は話し手の表情が見えづらく、感情もつかみにくくなります。

ファシリテーターには、発言者の意図を繰り返して確認したり、誤解が生じないよう、こまめに言い換えるなどの対話・コミュニケーションスキルがより一層求められます。

  • 聞き返す、言い換える
    「これはこういうことですか?」「それは〇〇ということで間違いないでしょうか?」
  • 議論が偏ってきたり、行き詰っているときは、別の角度から考えるきっかけを作る
    「お客さま側からの意見はずいぶん出ましたので、対応者の視点からの意見を頂けますか?」
  • 答えやすい質問をふる
    「〇〇さんは、AとBなら強いて言えばどちらに賛成ですか?」

(3)会議終了時

オンライン会議の場合、途中で接続不良や雑音で「聞き逃した部分がある」という参加者がいることも考えられます。会議を終える前に、会議での決定事項、会議中の主な意見、あるいは決まらなかったことなどをふりかえり、簡潔に確認します。また、次回の会議予定や、次回までに誰がどのようなアクションをするのかといった整理もしておきましょう。

WEB会議システムの録画機能などを活用し、会議の様子を記録しておくと、会議終了後も簡単に参加者や参加者以外の人にも共有できます。

<最後に>

ビジネスにおいて会議は、話し合いや意思決定の場として大変重要です。1日に複数回開催される日もあるのではないでしょうか。だからこそ、一つひとつの話し合いを目的に沿って効率よく進め、実りのあるものへと導いていくファシリテーターの役割はとても大きいものです。

ファシリテーションは、会議の前から準備できることが多くあります。プレッシャーを感じ過ぎず、事前に準備できることはしっかり整え、参加者との相乗効果でより良い会議を作りあげていきましょう。

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