1/28(東京)、2/7(大阪)で『インソース新春セミナー』題して開催いたしました神戸大学経営学部経営学研究科 上林憲雄教授の講演「人的資源管理の現状と新しい流れ」をお届けいたします。
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【上林憲雄 教授】
英国ウォーリック大学経営大学院ドクタープログラム修了後、
2005年神戸大学大学院経営学研究科教授、経営学博士。
専攻は人的資源管理、経営組織。
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◆昨今の学生の傾向と短期的思考の及ぼす影響◆
最後に、学問とは関係ない余談を少し。私は大学で教えていますが、最近の学生さんは、当たり前だということができない、こういう人が増えてきていると思います。
実は、ある学会で、プレゼンをする人が20分の制限時間でしゃべりすぎないよう、18分くらいのところで鳴らしなさい、と学生さんに頼んだようです。
でも発表者が予定より早く16分で終わったため、次のスピーカーが続けて話し始めました。
しかし、その学生さんはそれでも18分でチーン、と鐘を鳴らしたようです。
これは、つまり、なぜ自分が鐘を鳴らすのかという意味がわかっていないんです。まぁ、これは笑い話みたいなんですけど。
でも、指示の意味を考えようとしない、というのは、言われたことすらできないということになるんですね。現実にそういう学生が増えているんですが、本当はそういう人材を育ててはいけないんですね。
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もう一つ昨今の学生の特徴をいいますと、物事の間の関係を考えるのがすごく苦手になっているようです。関係、コネクション、リレーションシップですね。
物事の間の関係を考えようとしたら、深くそのつながりというのを考えなければならない。
私の方は、これさっき言っていたこととどういう風に関係するんだ、と学生にしつこく聞くんですが、学生の方はそれに答えられない。
むしろ、関係なんていうことを聞いてくれるな、と怒りますね。さっきやったことはもう終わったんだ、と。もう、その瞬間、その瞬間で生きているわけですね。
ただ、ビジネスをしていくうえで、おそらく、それだけではいかんだろう、と私は思います。論理的な思考というのは、実はMBAでも重要なものです。それをどう身に付けるのか、ということが問題ですね。
で、これはあくまで私の持論なんですが、最近、世の中では、短期決済思考というのが根底に流れていると思うんです。
これは単に経営学的な問題ではなく、社会全体の問題と考えるべきなのかもしれませんが、どうも最近は何でも短期、短期で、短く考えるようになってきてしまっている。
もう少し余裕を持って、長期的な視野で考えるべきところが増えてきているんじゃないかなと思います。
◆日本の経営が目指すべき方向◆
最後に、駆け足になりましたが、今日のまとめです。基本的に人はコストではありません。人こそが唯一、企業競争の源泉たりうる資源と呼べるのではないかということをメインテーマとしてお話させていただきました。
その流れで、仕事の「やりがい」についてもお話しましたが、成果主義とは別に、お金以外の要素で人をひきつける仕組みが一つあればいいですね。
そういう仕組みに適当な名前を付けるとすれば、たぶん、「日本型成果主義」という言葉が適当ではないかと思います。
それから、「分業原理の緩み」、「職務再設計」、これがやりがいアップの基礎ですよ、というお話もさせていただきました。
「人的資源管理」(HRM)というと新しいことを言っているようですが、これはもともと日本企業は得意なんです。
成果主義でも、日本企業はアメリカの方を向いていますが、それだけではもうダメなんですね。
取り入れるべきところは取り入れて、だけど、自分たちが今までやってきたことを全部だめだと思って、アメリカでやってきたような仕事を全部取り入れてしまう、というような安直なやり方ではうまくいきませんということです。
特に人事の側面では、日本はもっと日本ならではのやり方に自信を持つべきだと思うわけです。
また、ビジネスにおいて、体系的、客観的に眺めてみるということは重要だと思います。
OJTだけでなく、Off-JT研修、あるいはエデュケーション、こういう場も取り入れていかれるといいのではないかなと思います。
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最後に、今日のお話で、関心持っていただけました方は、是非、「上林憲雄ほか『経験から学ぶ経営学入門』有斐閣、2007年」というテキストをお勧めいたします。
これは学部の学生さん向けに書いていますし、皆さん方には失礼な書き方をしていますが、非常にわかりやすい教科書ですので、よろしければお読みいただければと思っております。
非常に雑駁な話で申し訳ありませんが、私の話は以上とさせていただきます。本日はどうも、ありがとうございました。
(完)