前回に引き続き、「経営学は役立つのか」を考察します。今回は社会科学の各学問領域がそれぞれ人々のどういった関係を分析しているのかを説明します。
経営学は実践にどのように役立つか(4)
著者:インソースマネジメント研究チーム
1.法律学は、法律による「秩序の関係」として人々の関係を分析する学問である。
2.政治学は、政府や役人、市民の間の「権力の関係」を分析する学問である。
3.経済学は、人々の間の関係を、すべて金銭的な価値に換算して分析しようとする学問である。
- ■人々の間のさまざまな関係
- 前回、社会とは人と人の間に織りなされる多様な関係性のことであり、そのそれぞれの関係性を対象に、社会科学の各学問領域が生み出されていることについて触れました。以下、社会科学の代表選手である法律学や政治学、経済学がそれぞれどのような関係性を分析しているのか、というお話です。
- ■秩序の関係
- まず、法律学について考えてみましょう。法律学は、「裁判所」の行動について研究する学問です。人々は、社会生活を営んでいく上でどういう行動をとれば法律に触れて罰せられることになるかを意識し、どこか法律を頭の片隅に置きながら自分の行動をコントロールしています。したがって、人々がこうした法体系を意識し、秩序を保っている社会の仕組みについて学ぶのが法律学であるといえます。要するに、法律学は「秩序の関係」として人間と人間の間の関係を分析しようとするわけです。
- ■権力の関係
- では、次に政治学をみてみましょう。政治学は、単純化すれば「政府」の行動を研究する学問領域であるといえます。政府が市民に強制力を発動して服従させることを、"国家権力"というあまり耳障りのよくない言葉で呼ぶことがあります。一方、市民は、選挙で役人を選んだり、世論を発信したりして政府を動かす力を持っています。政治学は人々の間の関係性を、こうした「権力の関係」として捉えます。
- ■金銭の関係
- 経済学ではどうでしょうか。経済学は、「企業」の行動を研究している学問です。企業は、さまざまな財やサービスを作り出し、それらを売ったり買ったりする経済活動をしています。企業以外でも政府や一般市民も経済活動に従事するのですが、市場における経済活動の主役は企業です。ですから、経済学の研究対象は、企業を中心とした市場での金銭的な繋がりです。つまり、人々の間の関係を、すべて金銭的な価値に換算して分析しようとするのが経済学的なものの見方です。
- ■一定の関係性に着目
- 以上で見たようなある一定の特殊な関係性に着眼して、社会科学の各領域は発展 を遂げてきたのです。遠回りになりましたが、次回、いよいよ経営学における 人々の関係性を見てみることにしましょう。