前回に引き続き、「経営学は役立つのか」を考察します。今回は経営学がどのような人間の関係性に着目して社会をとらえようとしているのかを説明します。
経営学は実践にどのように役立つか(5)
著者:インソースマネジメント研究チーム
1.経営学は、様々な人間モデルを扱うため、他の社会科学の領域とは違って、明確に「○○の関係」を分析しているというように明言することができない。
2.経営学は他の学問領域と比べてあまりにも曖昧なので、一見、現実に近いことを扱っていて取っ付きやすく感じられるが、深く学ぼうとすれば学問的基軸が不明確で、難しくなってくる。
- ■経営学における人間モデル
- 経営学には、人間を基本的にどういった存在として把握するかについての考え方(人間モデル)と呼ばれるものがあり、それが経済人モデル、社会人モデル、自己実現人モデルというように変遷してきました。経営学でファイナンスの領域を学ぶときには経済学の基礎知識が必要になりますし(経済人モデル)、組織論やマーケティング論、消費者行動などについて学ぶ際には社会学や心理学の知識も必要となってくるでしょう。後者では、人間を基本的に社会人モデルや自己実現人モデルでとらえています。
- ■経営に関する諸学
- つまり、経営学では他の社会科学の領域とは違って、明確に「○○の関係」というように明言することができないのです。経営学を我が国にいち早く導入し体系化された市原季一先生は、経営学を定義するにあたり、「経営学とは経営に関する諸学である」と言われたぐらいです。いわば、心理学も、経済学も、社会学も、すべて経営現象の解明に有用であると主張されたのです。
- ■経営学は学問か?
- 実は、このことは裏を返すと、経営学が学問として未成熟であり、その科学性や学問的な基軸が不明確であることをしめしています。どのような学問領域であれ、およそ学問である以上、その学問固有のアプローチがあってしかるべきだからです。
- ■取っつきやすいが"難しい"経営学の勉強
- これには、経営学がまで生成してから僅か100年ほどしか経過していないという事情も関係しています。あるいは、経営学が(経済学より)「現場・実践に近い」ところから分析するという特性とも関連しているでしょう。いずれにしても、経営学は他の学問領域と比べてあまりにも曖昧なので、一見、現実に近いことを扱っていて取っつきやすく感じられるのですが、深く学ぼうとすれば学問的基軸が不明で、非常に厄介なのです。まじめに勉強しようとすればするほどわからなくなる・・・これが残念ながら経営学なのです。では、この厄介な経営学という学問に、私たちはどのようにアプローチしていけば良いのでしょうか。