管理職

新任管理職へ贈る4つの言葉~イチ担当者からの"大転換"を遂げるために

新たに管理職となられた皆さま、昇進おめでとうございます。目の前の重責を噛みしめつつ、職務をやり遂げよういう決意でみなぎっているのではないでしょうか。
昨日までは担当者としてフォロワーシップを発揮されてきた皆さまですが、これからはリーダーシップを発揮することが重要となります。そして、個人としてではなく、チームとしての成果が問われることになります。担当者としての経験がこれからも活きるとは限らず、むしろ切り捨てた方がよいものもあります。
まさに「ビジネスパーソンとしての大転換期」を迎えていると言えるでしょう。


今回、管理職としてのキャリアをスタートさせる皆さまにお伝えするのは、メガバンクの人事部長や経営企画部長を歴任、現在は管理職や経営幹部養成のための講座を担当している弊社のエグゼクティブ・アドバイザーからの「新任管理職へ贈る4つの言葉」です。自身がこれまで蓄積してきた"先達の英知"を集約したものであり、皆さまにとってこれらの言葉が、イチ担当者から管理職への大転換という壁を難なく乗り越えていただくための一助となれば幸いです。

目次

(1)手段偏重の思考法から卒業しよう

管理職に昇進したばかりの方には共通する特徴があります。「こうすれば間違いなくできる」、「これをこう変えればもっと良くなる」といった具合に議論が自然と"手段"中心になることです。これでは問題解決が無意識のうちに業務の効率化(コスト削減、生産性向上)や正確化(品質向上、製品ロス削減)に向いてしまいます。

こうした手段偏重の思考に陥りやすいのには理由があります。皆さんが学生の間は、問題が先に与えられ、この問題を解く手段・方法に神経を集中してきました。さらに会社に入っても、成果を得るための手段をたたき込まれてきており、手段偏重の思考に陥りやすいことはやむを得ないと思います。

しかし、皆さんが管理職としてこれから解決しなければならない事項は効率化や正確化の問題に留まりません。まだ曖昧な問題の発見と定義から入って、適切な手段を選択し、問題解決に当たることが求められます。問題の発見と定義を疎かにしていては、チームが正しい方向に進みません。だからこそ、皆さんは意識して手段偏重の思考法から卒業しなければならないのです。

(2)全体像をつかむクセをつけよう

手段偏重の思考法から卒業したあと、どのように対処すればよいのでしょうか。その答えが「全体像をしっかりとつかむクセをつけること」です。このクセをつけるためには、チーム全体を見渡すための問いを立て、自問自答を繰り返すことが有効です。

  • 【設問例】
  • 「チームの目指すべき姿は何か」
  • 「チームの達成すべき目的は何か」
  • 「チームの根本的な問題は何か」
  • 「チームの最重要課題は何か」
  • 「各メンバーに対する人材育成は順調か」
  • 「メンバー全員がはつらつと活躍しているか」
  • 「チームにゆくゆく問題となるようなリスクは存在しないか」
  • 「どこかに業務改革やイノベーションの余地が潜んでいないか」
  • 「自らのリーダーシップについて改善すべきことは何か」
  • 「チームとして会社に期待したいことは何か」など

これらの設問を活用して、週に最低1回はチームをめぐる状況を検討し、チームの問題を浮き彫りにしていきます。

(3)管理職の必需品"逆算思考法"を身につけよう

登山では、頂上から逆算して登頂戦略を練ります。ビジネスにおいても同様です。達成すべき目的を先に定義し、この達成から逆算して合理的でかつ効果的な手段を選択します。この方法を"逆算思考法"と呼びます。経験を積んだ管理職であれば誰でもこの思考法を多用しています。これがビジネスの本質(達成すべき目的を明らかにして、これを効率的に達成すること)に合致しているからです。

では、逆算思考法をどのように用いればよいか具体的に見てみましょう。
例えば、「チームとして目指すべき姿」を具体的に「メンバー全員がはつらつと活躍しているチーム」と定義して、これを達成すべき目的とします。そして、この目的と現状との間にあるギャップ(風通しが悪い、など)を明らかにします。このギャップが解決すべき"問題"にあたります。次に、この問題を解決するためにクリアしなければならない"課題"を抽出します。複数の課題(上司は部下に対して耳を傾けるべき、ハラスメント撲滅、など)が抽出されるでしょう。

ここまで来ると問題・課題解決の8、9割は終えたようなものと言われます。なぜなら、明確になった課題が、その解決手段(施策)を自動的に浮かび上がらせてくれるからです。

(4)「絶対に逃げない」と自ら宣言しよう

チーム運営が常に順風満帆であるとは限りません。次から次へと難題に直面し、どのように舵を切ればよいのか途方に暮れることもあるでしょう。このようなときこそ、リーダーの真価が問われます。

リーダーの取り組み姿勢と対応如何でこの種の問題は大きくも小さくもなります。あるケースではリーダーが逃げてしまいました。職場放棄です。事態は悪化するばかりで、修復不可能な状況に陥りました。一方、別のケースでは、リーダーが難題を正面から受け止めて解決しました。加えて、同じような問題が二度と起こらないように再発防止策も講じました。実に頼もしいではありませんか。

「艱難辛苦は人を耕す」と言います。どんなに苦しい時にも逃げないことで、その先に待っているのは"自身の成長"というご褒美です。そして、何より嬉しいのは、会社と部下からの信頼が飛躍的に高まることです。管理職に昇進した以上、「絶対に逃げない」と自ら宣言して、これにこだわり続けてください。それこそがまさに、"管理職としての生きざま"です。ご活躍を心よりお祈りします。

次回は「"攻め"にも"守り"にも強いリーダー」になるための課題についてご紹介します。

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