「"攻め"にも"守り"にも強いリーダー」になるための4つの課題
前回は、大手メガバンクの人事部長や経営企画部長を歴任、現在は管理職や経営幹部養成のための講座を担当している弊社のエグゼクティブ・アドバイザーからの「新任管理職へ贈る4つの言葉」をお届けしました。
管理職に昇進した以上、大いに活躍してさらに上を目指したいと願うのは当然のことです。そのために、自身をどのように磨けばよいのでしょうか。今回も、弊社のエグゼクティブ・アドバイザーが、「"攻め"にも"守り"にも強いリーダー」になるための4つの課題を明らかにします。
管理職として自分を磨く計画の参考にしていただければ幸いです。
- 目次
「"攻め"にも"守り"にも強いリーダー」とは
まず「"攻め"にも強いリーダー」を具体的に定義すると「PDCAを上手に回して常勝軍団を構築・運営できるリーダー」となります。自身がそうなるための課題としては、(1)実効性の高い計画を策定する、(2)メンバー全員が活躍する最強チームをつくる、などが考えられます。この2つが揃えば、チームが常勝軍団になること請け合いです。
次に「"守り"にも強いリーダー」とは、リスク管理に強いリーダー、つまり「チームに起こり得るリスクが発生しないように予防管理ができるリーダー」と言えます。自身がそうなるための課題は、(3)想定されるリスクを事前に認識する、(4)認識されたリスクの発生予防策を策定・展開する、になります。
上記4つの課題の解決策が「"攻め"にも"守り"にも強いリーダー」になるための方法となります。
以下に具体的にご紹介します。
(1)成果を得るまでのプロセスを「要素分解」する
実効性の高い計画を作るための基本的な流れについて、法人営業のチームを例に考えてみます。
- (ⅰ)目標の確認(売上高10億円)
現状評価(このままでは7億円達成が限度)→この2つの間にあるギャップを測定(3億円) - (ⅱ)売上獲得プロセスを見える化(要素分解)し、ギャップ解消に向けた追加施策を検討
この一連の流れの中で特に重要となるのは、成果を得るまでのプロセスを「要素分解」することです。法人営業の例で言うと、売上を獲得するためのプロセスは次のように要素分解されます。
『売上=チームのお客さま総訪問件数×成約率×単価』
あとはギャップ3億円を埋めるべく、要素ごとに追加施策を検討すればよいのです。
"チームのお客さま総訪問件数"を上げるためには、以下の施策が考えられます。
- ・担当者の担当先を見直し、お客さまの地理的分布を踏まえた効率的な訪問体制を確保する
- ・訪問管理システムを導入し、日々の効率的な訪問を提案面、動線面から支援する
- ・訪問営業に加え、Web営業を展開し、訪問営業を補完する
また、"成約率"を上げるためには、以下の施策があげられます。
- ・重点セグメントに優秀な人材を重点配置する
- ・お客さまのニーズの内容と発生時期を管理するソフトを導入し、タイムリーな提案を確保する
- ・プレゼンテーション研修を実施し、各人の営業力を抜本的に強化する
実効性の高い計画を確保するには、ギャップを確実に解消しなければなりません。この点が確保されるまで、追加施策の検討を決して緩めてはいけません。
(2)若い人や成長過程にある人の教育・支援
「メンバー全員が目標の達成に向けて意欲を燃やし、お互い支援し切磋琢磨しつつ、目標を必達している。そして、それぞれが達成感、充実感、成長感を味わっている」。このようなチームが最強チームです。このためのキーになるのが、若い人や成長過程にある人の教育・支援です。
効果的な教育を実施するためには、最初に「当チームで求められる人材像」を定義することが不可欠です。先の法人営業のチームでは、リーダーによって次のように定義されました。
- ①販売する商品・サービスを熟知している
- ②顧客のニーズを理解しており、潜在的なニーズを顕在化するのも巧みである
- ③上記に基づき、自ら提案書を作成できる
- ④本部の開発セクションと協働し、高度な提案を実施することができる
- ⑤顧客の満足を引き出し、契約をクロージングすることができる
以上の定義に基づき、リーダーは、部下一人ひとりと面談し、各人が抱える課題を共有して、各人の指導方法を決定しました。具体的には、各人のレベルに合わせてコーチング(アドバイス中心の指導)かティーチング(手取足取型の指導)のいずれかを採用しました。中には、①~③についてはコーチングで対応するが、④と⑤についてはティーチングで対応する、という部下もいたそうです。
こうして先のチームで人材教育をスタートしてみると、想定以上の効果があらわれました。若い部下が進んで諸先輩に「②のコツを教えて下さい」、「⑤の勉強のために帯同訪問していただけませんか」とお願いするようになったそうです。さらに、チームの中に様々な相互作用が生まれ、各人の成長はもとより、メンバー全員が目標の達成に向けて、お互い刺激し切磋琢磨する状況が自然とでき上がりました。
人材教育によって、チーム全員が達成感、充実感、成長感を味わい、チームが活性化する。これこそ管理者が求める最強チームです。
(3)リスクをあぶり出す体制づくり
リスク管理において重要なことは、「リスクを事前に認識できなければ、リスク管理は一歩も前に進まない」ということです。そこで年1回、定期的に「当社を取り巻くリスクとは何か」を洗い出している会社も多いはずです。また、日頃の業務活動においてヒヤリとしたことや、ハッとしたことを制度として報告させている会社も数多くあります。役職員の意識調査を定期的に実施し、意識や行動変化からリスクをあぶり出している会社もあります。
繰り返しになりますが、リスクが何かを認識できなければ、リスク管理は一歩も前に進みません。管理職としてまず、チームがどのようなリスクにさらされているかを意識的に確認し、フォローしていかなければなりません。
(4)リスク発生予防策の策定・展開
リスクを洗い出したあと、この中から管理すべきリスクを特定し、その発生予防策を策定します。そして、これをチーム全体に展開します。このための具体的な方法はどのリスクについても共通で、「リスク軽減のためのルール化→教育→実施→点検」の形を取ります。
例えば、品質不良ゼロを実現するために、これまでのサンプルチェック体制を全数チェック体制に変更したとします。これがリスク軽減のためのルール化にあたります。この新ルールを関係者全員に教育し、その上で実施してもらいます。そして、折に触れて、実施状況が新ルールに沿うものかどうかを点検し、この点検結果に問題があれば、ルール化→教育の見直しを実施します。
管理者は、リスク管理と言えば「リスクの特定」→「新ルール化→教育→実行→点検」と反応できなければなりません。この反応なくしてリスク管理にリーダーシップを発揮することはできません。
以上、ご紹介した4つの課題を解決するための方法を、自分磨きの計画として取り入れていただければ幸いです。