アメリカでは、将来企業幹部になるうえで重要な資格である「MBA」ですが、日本ではそれほど人気がありません。その違いはどこからくるのでしょうか?
日本企業にMBAは役立つか?(1) ―日本におけるMBA教育を考える
著者:インソースマネジメント研究チーム
1.実践的なアメリカの教育に対して、日本のMBA教育は理論を重視することが多い。
2.日本のMBA生は、資格を転職に活かすというより、人脈を広げ、他社の情報を得たり、純粋に経営学の理論や知識を学ぶ目的であることが多い。
- ■MBAとは
- バブル経済が崩壊した1990年代以降、日本においてもMBA(経営学修士)という資格に大きな関心が集まりました。MBAは、企業経営を科学的に分析し経営実践に役立てるため設立された大学院の高等教育課程を修了すれば得られる資格です。
- ■アメリカで発祥し認知された資格
- 何ごとにおいても実益を重視する文化特性をもつアメリカでは、多くのビジネススクールが設立され、現在に至っています。MBAを取得することは、将来的に企業幹部になるうえで要件の一つとされ、MBAは社会的にも認知された重要な資格です。
- ■日本では"開店休業状態"の大学も
- 日本では、2003年に文部科学省が「専門職学位」課程を設置したことを契機に、ビジネススクールの開設が相次ぎました。しかし、日本のMBA取得コースには学生が集まらず、アメリカほどの人気がありません。日本社会でMBAが資格として認知されていないのは、「資格を転職に活かす」という発想が、未だ日本においては認められにくいためです。
- ■日米で異なる取得目的
- 私が行った実態調査によると、受講生のMBA取得の目的が日米で大きく異なることがわかりました。MBA資格の取得がすぐに、より条件のよい企業への転職につながるのがアメリカです。これに対し、日本のMBAコース受講生は、むしろ他社とのつながりを探り、他社の情報を得たり、純粋に経営学上の理論や知識を学習したりするために入学してくるケースが大半でした。
- ■実践志向の濃いアメリカのMBA教育
- 加えて、MBAコースで教育される内容についても、日本とアメリカでは大きく異なることもわかりました。アメリカのMBAでは、すぐに実践に役立つ分析ツールや実際のケーススタディを中心にディスカッションをさせて考えさせるスタイルの授業が中心です。
- ■社会科学から出発した日本のMBA教育
- これに対し日本のMBAスクールでは、どちらかというと理論ベースで展開され、すぐに実践のための手法を教えるというよりは、社会科学のアカデミズムの延長線上という位置づけで教育されることが多かったようです。
- ■役に立つMBAへ向けて
- このように同じMBAと呼ばれる資格でも、日米間でその内実は大きく異なっています。では具体的に、日本のビジネススクールでは、何をどのように教え、受講生はどういった能力を身につけることができるのでしょうか。社会科学の延長線では「役に立たない」のでしょうか?次回は、こうした点にフォーカスを当てて考えてみることにしましょう。