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今週のキーワード
【経営理念の徹底】
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■経営理念の浸透が難しいわけ
「経営理念を社員に浸透させたい」と多くの経営者が考えています。そこで、職場の壁に筆書きの経営理念を掲げ、毎朝唱和させて、その理念を叩き込もうと考えるのですが、そう簡単にはいかないのが実情のようです。
経営理念の多くは概念的に表現されているため、言葉としては分かるけれど、その意味するところは?と聞かれると、言葉に窮する人も多いのではないでしょうか。
■ワンマン企業の経営理念は浸透しやすい
一方で、経営の考え方が社員の隅々にまでよく徹底されているなあと感じる企業はというと、一代で会社を大きくしたようなカリスマ社長が率いる企業が多いように思います。
こうしたいわゆるワンマン企業では、「経営者の価値観」が経営にも色濃く投影され、その経営者の薫陶を受けながら仕事をしてきた社員たちにしっかりと叩き込まれるのです。
「経営理念」が文字になり、壁に掲げられるのは、実はその後のことであり、決して「経営理念」を掲げることによって、企業が大切にする価値観や考え方が徹底されるわけではないのです。
■経営理念は「ルール」ではない
そもそも、経営理念とは「こうしなければならない」というような「ルール」とは違うので、「経営理念を徹底させる」という表現自体に違和感があります。
「私たちはこうありたい」「こんなことを大事にしていきたい」という「目指す姿」を表現したものが「経営理念」であり、それを社内で共有できている状態が「経営理念が浸透している」状態なのです。
ですから、経営者がもっと「こうありたい」という思いを、ことあるごとにあの手この手で社員に伝え、それに共感してもらう努力が必要不可欠なのです。
■「ビジョン」づくりのすすめ
「経営理念」はそのエッセンスだけをダイレクトに文字化していることが多く、時に「言葉足らず」な面があるのは否めません。
それをより表現力豊かにしたものが「ビジョン」です。米国の黒人公民権運動の指導者であったキング牧師の有名な演説の一節に、「私には夢がある。いつの日か、ジョージア州の赤い丘の上で、かつての奴隷の子たちと、かつての奴隷の所有者の子たちが、兄弟愛というテーブルで席を共にできることを・・・」というのがあります。
これなどは、「人種差別の撲滅」「自由な世界の実現」といった言葉を繰り返すよりも、はるかに鮮やかにメッセージを伝えることに成功している好例と言えるでしょう。
企業においても、ただ「経営理念」を掲げて唱和するのではなく、その背後にある「経営者の思い」や「エピソード」をあわせて伝えることで、「経営理念の浸透」が実現するのではないでしょうか。