【聞かせるプレゼンテーションのために】
聞かせるプレゼンテーションのために 【2】
◇上林 憲雄氏(Norio Kambayashi)◇
英国ウォーリック大学経営大学院ドクタープログラム修了後、 2005年神戸大学大学院経営学研究科教授、経営学博士。専攻は人的資源管理、経営組織。
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■常識の真逆を言うのは難しい
常識を知り,そこから外れたことをプレゼンで主張しようとしても,いきなり常識の真逆を言おうとするのは困難です。常識は,世間の人々がそれは当たり前だと認めている空気のような存在であるからこそ「常識」なのであり,何の工夫もなく常識の正反対を言おうとするのは無謀です。
では,常識から外れたことを主張するには,どうすればよいのでしょうか。
■常識が成り立つ暗黙の前提を明らかにする
常識から外れたことを言うためのファーストステップは,その常識が成り立っている暗黙の(みんなに気づかれていない)前提や条件をあぶり出してやることです。
言い換えると,常識がなぜ常識として世間一般に認知されているのか,"相対化"して考えてやることです。
そうすると,いずれの常識も,その常識が成り立っている(ないし暗黙のうちに前提されている)条件が明らかになってきます。そして,その前提条件が崩れると,必ずしも今いわれている常識は成立しえないことを明らかにしてやるのです。
そうすると,もはや「常識」は「常識」ではなく,ある特定の状況下や前提があった場合のみに成立する一現象であると位置づけることが可能になります。
■"ひねくれ者"のススメ
常識を常識として受け取らず,その前提条件を考えるのは,簡単なようにみえますが,実はかなり難しい作業です。常に,世の中の現象に対し,あるいは世間一般の考えに対し疑問を投げかけ,自分なりのユニークな視点でもって議論を展開しようとする「ひねくれ者」でなければなりません。
実は,あまり知られていないことですが,ユニークな発想を出来る人間は,ほぼ100%,こうした"ひねくれ者"の視点をどこかに備えています。ひねくれ者というと,社交性がなく殻に閉じこもった人間を想定しがちですが,そうではなく,他者とのコミュニケーションは円滑にでき,そのうえで常識に流されない「ひねくれ者」精神を持っていることこそ重要なのです。
■結論から逆向きにさかのぼって問いを考えていく
プレゼンで,こうして常識とは違った角度からひとまず結論がひらめいたと仮定しましょう。次に重要となるのが,そのひらめいたユニークな結論を,どうやって聴衆に説得させるかです。
そこで肝要な点は,その結論をいうためには,どういうことを予め述べておいてやらないといけないかを考えることです。いわば,結論から逆方向にさかのぼっていき,この結論をいうには,どういう論点が事前に述べられていれば,聴衆はこの結論に納得するかを考えてやることです。Answerの方から逆にquestionを考えてやる,結論から徐々に1つずつ手繰り寄せるようにさかのぼっていく―この,いわば"手繰り寄せ"作業を行うのがセカンドステップとなります。
常識とは異なった結論は,それだけ主張しても聴衆は聞く耳を持ちません。常識を崩すには,結論へと至る途中の議論の組み立てにそれなりの工夫が要るのです。
■聴衆は白紙状態
こうして,結論から逆に手繰り寄せていき,出発点となる問いをたてることが出来れば,あとはしめたものです。今度は,最初から順に,このロジックの流れで聴衆を説得できるかどうかを入念に確認し,プレゼンの資料を作成していけばいいのです。
プレゼン資料を作成する際(実際のプレゼンの場でもですが),常に念頭に置くべきは,聴衆はその自分が論じようとする論点については全くの白紙状態であるということです。白紙状態の人を,「なるほど,それはあなたの言うとおりだ」と思わせるには,極力,単純明快なロジックで議論を組み立てることが肝要です。
■多すぎる資料は整理が悪い証拠
時折,パワーポイントのスライドの枚数が何十枚にも及ぶプレゼンに出くわしますが,スライド枚数の多いプレゼンは,内容的に聞くに堪えないプレゼンの場合が大半です。20分間のプレゼン時間なら,スライド枚数で10枚を超えると,聞く方はロジックの流れについていけないでしょう。
「プレゼン資料は多い方がよく準備している証拠なので良い」というのは,プレゼン初心者が陥りがちな誤りです。資料の多さは,むしろ整理のまずさの現れなのです。
☆次回もお楽しみに!
「きみは営業に向いてない」
周りの人にさんざん言われていながら入社早々営業担当になってしまった中島が伝える、営業の頑張り方