内定者研修をご検討されている組織からは以下のようなお悩みをよくおうかがいします。
- 「効果的な内定者研修をやりたいが、どのようなテーマで実施すればよいのか悩んでいる」
- 「内定辞退が多く、何とか食い止めたいが、どのような教育が効果的か」
インソースでは、これまで数多くの組織で内定者研修の支援を行い、「内定者同士のチームワークを高めたい」「入社に向けてマインドセットやスキル強化を行いたい」などのさまざまなお悩み・ご要望にお応えしてまいりました。
今回は、内定者研修の目的・ゴールと最近の内定者の傾向をおさえた上で、どのように効果的な内定者研修を設計していけば良いか、お伝えいたします。内定者研修の実施をご検討される際の参考になる内容となっておりますので、ぜひご一読ください。
内定者研修を行う3つの目的
企業が内定者研修を行うのには、3つの大きな目的があります。
(1)内定者の不安や悩みを解消する
内定者は内定が決まった後も、入社するまで、「本当にこの会社で良かったのか」と不安になっています。まだ社会人として働くことのイメージができていないため、上手く会社に馴染んで活躍できるか、会社の人と上手くやれるのか漠然とした不安を感じています。
内定者研修は、内定者の抱えるこのような不安を払拭するためにも、非常に有効です。内定者研修では、内定者同士での交流を深めることを目的としているものも多くございます。どんな人と一緒に働くのかが分かることで、不安を取り除くことができます。
(2)スキルを身につけ、即戦力として活躍してもらう
採用活動も学生優位の状態が続いている中で、「良い人材を確保するのが難しい...」という声が聞かれます。良い人材を採用することが困難になる中、採用した人材を即戦力として活躍できるような人材へとスキルアップさせることが重要です。
内定者をスキルアップさせることは、内定者に自信を持ってもらうことに加え、新人を受け入れる現場の負担を減らすという意味でも有効です。あらかじめ必要になるスキルを内定者の期間を利用して習得してもらうことで、即戦力として活躍するための土台を作ることができます。
(3)内定辞退を防止する
今の内定者や新人は1990年代後半頃に生まれ、転職することが当たり前の社会の中で就活をした世代のため、企業・組織への帰属意識が低くなりがちのようです。転職することを視野に入れて就活している人も多いことからもその傾向がうかがえます。第2新卒枠での再就職も比較的容易に行うことができるため、内定辞退をしやすい環境になっていると言えるでしょう。
このような傾向から、企業が内定者を入社するまで何もアプローチせず放置しておくことは、今後ますます大きなリスクになります。内定辞退を防止できるような、企業側の積極的なフォローが求められているのです。
内定者研修の目標・ゴールとは
内定者研修の目標・ゴールは、①学生から社会人への意識転換、②社会人スキルの習得、③社会人に必要なチームワークの醸成の3つがあります。
(1)学生から社会人への意識転換
学生と社会人の違いを理解し、自立して働くためのマインドを構築します。また、自分が目指すビジネスパーソン像を描くことで、組織への帰属意識を高め、働くことへのモチベーションを高めます。
学生気分のまま社会人になってしまうことで、上司やOJT担当の負担が増えてしまうということはよくあることです。入社前に、社会人としての振る舞いやマインドを知っておくことで、入社後スムーズに業務にあたることができます。
(2)社会人スキルの習得
マナーや文書、OAスキルなどの社会人に必要な基礎スキルを内定者のうちに身につけることで、自信を持って社会人としてのスタートを切ることができます。
内定者研修を設計する際には、入社後、配属されるまでに、どこまでのスキルが備わっているべきなのかを逆算して研修内容を検討する必要があります。
(3)社会人に必要なチームワークの醸成(チームビルディング)
ビジネスパーソンとして仕事する上で、チームワークを意識することは重要です。研修の中で、内定者同士コミュニケーションを活発に行い、横のつながりを意識させます。そして、社会人に求められるチームワークとは、どのようなものなのかを体感的に理解することで、社会人としての土台を作っていただきます。
最近の内定者や新人の傾向・特徴とは
周囲の環境の変化などによって、内定者や新人の傾向も変わっていきます。
今の内定者や新人全員に当てはまるわけではありませんが、一般的には以下のような傾向があるようです。
(1)素直で真面目
理解力が高く、素直で真面目な態度の人が多い傾向があります。「このようにやれば大丈夫」と分かれば、自信を持って実践に移ることができます。一方で、知らないこと、教わっていないことにチャレンジすることへ の苦手意識が強く、すぐに正解を求めてしまうことも多いようです。
(2)失敗を恐れ、目立つことを嫌う
素直で真面目である一方で、初めから正解を求め、失敗するくらいならチャレンジしないというマインドに陥りがちです。リーダーシップの発揮や率先した行動を避け、失敗や間違いを恐れるなど、よくも悪くも目立つことを嫌う傾向があります。
(3)社会人へのマインド転換ができていない
「他人から見られている」という意識が薄くなりがちで、上司や会社の人が見ていないような場所では、気が緩んだ態度をとってしまう、ということもあるようです。
社会人としての常識や模範解答はあらかじめ知っていても、他者の視点を取り込んだうえで、行動に落とし込むことが苦手な傾向があります。
内定者の抱える不安や悩みとは
内定者は入社するまで、社会人になることへの漠然とした不安と戦っています。
この不安を解消することは内定辞退防止につながるため、何に悩んでいるのか、不安を感じているのかを把握しておきましょう。
(1)会社・組織に上手く馴染めるか不安
内定承諾書にサインした後にも、内定者の不安は尽きません。選考の中で会社の雰囲気は、何となく分かっているものの、会社の人と上手くやっていける自信がないという人も多いようです。
実際に働いてみなければ分からないことも、もちろんありますが、会社に上手く馴染めるように、受け入れ側から積極的に働きかけることが重要です。
(2)本当にこの会社に入社を決めてよかったのか不安
この会社で働くと決めた後にも、「他の会社の方がよかったのではないか」「自分の選択は本当に正しかったのだろうか」と不安に感じています。会社側から、「会社は内定者の皆さんのことを気にかけている」「受け入れる準備が整っている」ということを伝える必要があります。
(3)実は会社や仕事についてよく分かっていないため不安
自分が実際にどのような業務を行うのか、イメージできていないと先が見えずに不安を感じてしまいます。先輩社員と関わるような懇親会を設けたりすることで、自分が行う仕事への理解を深める機会があると良いでしょう。
内定者が強化すべき4つのスキル
インソースでは「新人8大スキルアセスメント」の結果から、一般的に内定者や新人に不足しがちであるスキルを分析しています。
以下のようなスキルが課題として挙げられ、強化の必要があるとされています。
(1)ビジネスマナー~"他者視点"のビジネスマナーを身につける
あいさつ、身だしなみ、言葉遣いに、他者視点が不足しているという方が多い傾向があります。信頼されるビジネスパーソンになるために、内定者のうちに基本的なビジネスマナーを習得しておくことが有効です。
(2)文書スキル~短く簡潔な文書を書く
社会人に求められるのは、短く簡素な文書を書く力です。内定者のころは卒業論文などで長い文章を書くことに慣れているため、短い文章を書くことに戸惑う人も多く、慣れるまで時間がかかります。ビジネスの文書の基本について学び、相手目線の文書を書けるように準備しておくことが大切です。
(3)伝えるスキル~人前で相手に伝わるように話す
人前で話したり、相手に伝わるように話すということが苦手な人が多いようです。社会人になると人前でプレゼンテーションする機会も増えます。自分の言いたいことを限られた時間の中で伝えるスキルが求められます。
(4)OAスキル~Excel・PowerPointを使いこなす
スマホの操作は得意な一方、PC操作、特にExcel・PowerPoint が苦手という人が多いです。OAスキルは社会人としての土台となります。入社してから現場で覚えるよりも、事前に学ぶ機会があると入社後、即戦力として活躍することができます。
内定者研修を設計する4つのポイント
内定者研修をより効果的に設計するためには、入念な事前準備が不可欠です。内定者の特性やスキルを把握した上で、研修の目的やゴールを設定し、研修のスケジュールを立てなければなりません。
(1)内定者の特性とスキルを見える化する
内定者の特性やスキルを数値化・見える化することで、より効果的な内定者教育を行うことができます。
①内定者の特性を把握する
自組織の内定者がどのような特性を持っているのか、選考や面接の過程で何となくは分かっているが、きちんと把握できていない、という場合も多いのではないでしょうか。
内定者がどのようなキャリアタイプ志向を持っているのか、どのようなことに苦手意識を持っているか、などを把握することで、より自組織の内定者に合った教育を設計することができます。
また、内定者の特性を把握することは、内定者研修のテーマを決める際だけではなく、配属先の決定やOJT担当者を決める際にも効果的です。
②内定者のスキルを把握する
内定者にどのようなスキルがすでに身につけているのか、何が得意・苦手なのかを把握します。インソースでは、新人に求められるスキルを以下のように8つのスキルとして定義しています。
<新人に求められる8大スキル>
- 1.ビジネスマインド
- 2.ビジネスマナー
- 3.仕事の進め方
- 4.文書スキル
- 5.対人スキル
- 6.伝えるスキル
- 7.考えるスキル
- 8.PCスキル
この8つのスキルのうち、特に内定者が苦手意識を感じているスキルに関して、内定者のうちにフォローを行うことで、不安を解消することができます。
(2)研修の目的とゴールを明確にする
- 何のために内定者研修を行うのか
- 内定者研修のゴールは何かを明確にします。
内定者が入社した後にどう活躍してほしいのかを考え、新人研修とどのように関連性を持たせていくのかを考慮に入れたうえで、内定者研修を設計しなければなりません。
(3)現場の声を反映させた内定者教育を行う
設計した内定者研修に現場の声が反映されているか、確認しましょう。
新人を実際に育てるのはOJT担当者や新人の上司など現場の社員です。現場で求められるスキルと研修内容に乖離が生じないように研修を設計することが大切です。
(4)内定者研修のスケジュールを立てる
内定者研修の時期やスケジュールの全体像は以下の通りです。
<内定者研修スケジュール例>
①8~10月「同期の関係性強化」
- 内定辞退防止も含め、会社理解と同期間の関係性を良くするため教育を実施
- チームビルディングを強化するような研修がおすすめ
②11~1月「社会人への意識転換」
- 学生から社会人への意識転換を促すような研修がよい
- 社会、組織に求められる人材像を知ることで、自身の社会人像を確立させる
- 公開講座や講師派遣型研修での内定者研修がおすすめ
③2~3月「社会人スキルの構築」
- 社会人として必要なスキルを身につけるための教育がおすすめ
- eラーニングで必要なスキルを事前に身につけることで、入社前の不安を払拭
内定者を効果的に育成する4つの方法
目的に合わせて効果的な教育を行うことが重要です。
(1)公開講座や講師派遣型研修で、学生から社会人へのマインド転換
- 学生と社会人との違いは何か
- 会社の常識とは何か
- ビジネスマナーの基本
- 社会人に求められる「チームワーク」とは何か
などを研修の中で学ぶことで、学生から社会人へのマインド転換を促します。
研修にも①オープンセミナー型、②講師派遣型の2種類があるため、研修効果などの観点から、どちらのスタイルが適切か選択します。
【オープンセミナー型(公開講座)の場合】
<メリット>
内定者を一度に同じ場所に集めるのが難しい場合、自由に日程を選べる公開講座が良い。特に内定者が全国にいる場合、全国の各会場で受講できるオープンセミナーは有効。
<デメリット>
「内定者の同期同士のチームワークを高める」という目的の内定者研修の場合、内定者全員が揃っていないと効果が薄れてしまう。
【講師派遣型の研修の場合】
<メリット>
内定者を一同に集めることで、内定者同士の顔合わせができ、横のつながりを作ることができる。
<デメリット>
全国にいる内定者を同じ会場に集める場合、交通費や宿泊費のコストがかかる。
(2)eラーニングを活用し、効率的かつ効果的にスキルを身につける
「内定者が全国各地にいるため、集合研修を行うのは難しい」、「内定者研修に高いコストをかけられない」という場合にはeラーニングによる内定者教育がおすすめです。
eラーニングを活用して、内定者のうちに基本的なビジネススキルをインプットし、新人研修の中でインプットしたビジネススキルをアウトプットすることも効果的です。
eラーニングで学習しやすいテーマとしては、
- OAスキル(Word・Excel・Power Point)
- ビジネスマナー(身だしなみ・名刺交換の仕方・電話応対の基本など)
- コンプライアンス
などが挙げられます。
(3)ビジネスゲーム研修で、チームワークを強化する
具体的なスキルを身につけるというよりは、「内定者同士の横のつながりの強化をしたい」という場合には、体感的にチームワークを強化できるような教育がおすすめです。たとえばビジネスゲーム研修の場合、単なる座学ではなく、体験を通じてチームワークや仕事の進め方について、気づきを得ることができます。
研修の内容にもよりますが、一般的に
- チームワーク
- 主体性の発揮
- コミュニケーション力
- PDCAを回す
などの重要性を体感することができます。
(4)ビジネス文書の通信添削で、文書スキルを磨く
内定者が新入社員として入社した後、特に課題となるのが「文書力」です。
学生の時は「〇字以上で論文を書く」など、長い文章を書くことに慣れている方が多いですが、社会人には「短く端的にわかりやすく書く」文書力が求められます。
入社後、学生の時に求められる文書スキルとの違いに戸惑う方も多いため、文書力の強化を内定者教育の際に行うことをおすすめいたします。
また、文書スキルを鍛える際には個別で添削すると良いでしょう。人によって文書力に差があるため、個別でどこを直せば良くなるかをフィードバックするとより効果が出やすくなります。
<最後に>
「新人研修は毎年行っているが、内定者研修については実施していない」という声も聞かれます。しかし、自組織の内定者に適した教育を行うことで、内定者の不安を払拭し、入社に向けた準備を万全にできます。
内定者が順調に社会人としてのスタートを切るために内定者研修は、非常に有効です。内定者が前向きに入社を迎えることができるよう、組織として内定者を迎える体制を十分に整えておくことが大切です。