リスクマネジメントについて考察します。ポイントは「リスクは危険ではなく選択」ということです。
リスクマネジメントを考える
著者:インソースマネジメント研究チーム
1.リスクマネジメントの本質とは、自らが関わる領域において、不確実性をより少なくすることである
2.自由な選択を行い、自らが制御可能と考えるリスクをどのように扱いやすくするかがリスクマネジメントの主要なテーマである
- ■リスクと不確実性
- リスクを語る上で必読の書と言ってよいP・バーンスタインの『リスク 神々への反逆』ですが、「リスクマネジメント(Risk Management)の本質」とは自らが関わる領域において、不確実性をより少なくするための手法であると指摘されています。これは、人生全般に普遍的に適用できる考え方でもあります。ただ、リスクがゼロになることは滅多になく、不確実性は残らざるを得ません。業界によっても、対峙しているリスクの種類や次元もさまざまに異なり、リスクヘッジ手段の確保に困難を極めるような事業リスクを負う業界も存在します。
- ■危険予測と危機対応は異なる
- リスクマネジメントは「危険を回避するためにリスクを分析する手法」、クライシスマネジメントは「危機発生後の対処に関する手法」を指しています。日本語では両者の区別がずっと曖昧でしたが、1990年代に入ってようやく区別されるようになりました。しかし今でも、この曖昧さが原因でふたつの不幸が存在していると考えています。ひとつは、目的が明確に異なるリスクマネジメントとクライシスマネジメントの区別がいまだに実現されていないケース、もうひとつは「マネジメント」を「管理」と訳すことで、狭義でしかリスクマネジメントを認識していないケースです。
- ■リスクは危険ではなく選択
- 「リスク」という言葉は、イタリア語で「勇気を持って試みる」を意味するrisicareという言葉に由来することから、運命というよりは選択を意味しています。われわれが勇気を持ってとる行動は、どれほど自由に選択を行えるかに依存しているのです。このような「自由な選択」があることがまず重要で、自らが制御可能と考えるリスクを、どのように扱いやすくするかが、リスクマネジメントの主要なテーマであると考えられます。制御不能なリスクについては、クライシスマネジメントによる事後対応を考えるという整理が、実務的にはわかりやすいのではないでしょうか。