企業が雇用している従業員への考え方を示す、「福利厚生」を解説する
2018.09.19
- ビジネス
企業が従業員を雇用して負担する費用は、実は給与だけではない。住宅手当や資格手当などを負担している企業も存在する。これらは、一般的に「福利厚生」と呼ばれ、従業員が企業を選ぶうえで決め手になるケースもあり得る。一方、「法定福利」と呼ばれる法律で定められた福利厚生もある。企業が設けている福利厚生にはどのようなものがあるのだろうか。絶対に知っておきたい法定福利と法定外福利の仕組みを解説する。
企業が必ず負担する「法定福利」
先に挙げた住宅手当や資格手当などは、企業が独自に設けた福利厚生だ。福利厚生には「法定福利」と「法定外福利」がある。
「法定福利」は文字通り、法律で定められた福利厚生のことで、企業は必ず従業員に提供しなければならない。「法定福利」は、下記の通りだ。給与明細を見ている人なら、お馴染みのものばかりだろう。
・厚生年金保険料
・健康保険料
・介護保険料
・雇用保険料
ちなみに、厚生年金保険料と健康保険料はセットで給与から天引きされている。この二つの保険料の料率は年々上昇している。つまり、企業の「法定福利」にかかる費用は自然と増加しているのだ。
介護保険料は、第一号被保険者(65歳以上の者)と第二号被保険者(40歳以上65歳未満の者)がある。超高齢社会への突入に伴い介護保険料は右肩上がりに。今後もこの傾向は変わらないだろう。
「法定外福利」は企業が自由に設定できるもの
上述した厚生年金保険料や健康保険料ほか「法定福利」以外の福利厚生を「法定外福利」と呼ぶ。住宅手当や資格手当などがその一例だ。退職金も「法定外福利」のひとつだが、徐々に金額が減らされている。
「法定外福利」は、企業が自由に設定できるものであり、場合によっては「設定しない」ことも可能だ。しかし、大半の企業は何らかの「法定外福利」を従業員に提供している。
ここでは、よく見られる「法定外福利」を3つ紹介しよう。あなたが勤務している企業にもこれらの「法定外福利」が存在するだろう。もし、どのような「法定外福利」があるか確認したい場合は、就業規則を要チェックだ。
1.住宅手当
筆者の取材経験では、住宅手当の金額は企業規模によって大幅に増減する。ある大手企業は15万円を、またある大手企業は10万円を住宅手当として支給していた。中小企業に目を転じると、数千円から3万円程度が多い。住宅費は従業員にとって固定経費であり、手当の多少が生活の質に直結するケースも見られる。
2.資格手当
資格の有無が直結する仕事において設けられているケースが多い。例えば、一級建築士や施工管理、税理士など。これらのプロフェッショナルになるには、言うまでもないが国家試験に合格することが必要。資格取得後は、月1~3万円資格手当として支給する企業も多い。また、ある建設系大手企業では、一級建築士に合格すると100万円の一時金が支給される。
3.単身赴任手当
転勤をいとわない従業員が多かった時代が懐かしい。現代を生きる20~30代の従業員は、地元志向であり、転勤がない職場を選ぶ傾向が強い。こうした人材が増えると企業経営が難しくなる。というのも、特定の地域に人材が集中してしまうからだ。だからこそ、転勤をいとわない従業員は企業にとって不可欠な人材だ。転勤した従業員に対し、単身赴任手当として月5~10万円を支給する企業もある。
新しい「法定外福利」にも注目
上述した通り、「法定外福利」は企業が独自に設定するものだ。つまり、企業の創意工夫が発揮されるものでもある。
伊藤忠商事は、従業員に朝食を提供する取り組みを導入している。東京本社ビル地下1階の社員食堂で無料のおにぎりやバナナ、缶コーヒーなどを提供しているという。
狙いは、深夜残業を減らして朝型勤務を定着させることだが、従業員の健康増進もひとつの目的だ。「働きやすい職場環境」の提供も福利厚生のひとつ。従業員に直接金銭を支給するのではなく、物品やサービスで福利厚生を提供することもある。
虎ノ門ヒルズ内にあるカフェテリア「Lucy's CAFE&DINING」。これを運営しているのは虎ノ門ヒルズ内に本社を構える日本ビジネスシステムズ。
社員や顧客向けのカフェテリアで、朝食やランチのほかアルコールも提供。関係者以外は入場できない。
打ち合わせをこのカフェテリアで行っている社員も多い。社員向けのイベントも開催されており、仲間意識や帰属意識の醸成にも役立っているという。福利厚生の多様さ、創造性を感じさせる一例だろう。
福利厚生を見れば企業の考え方がわかることも!
朝食の提供やカフェテリアの設置。これらの福利厚生を提供することで、従業員はこの企業に勤務する大きなメリットを感じることになる。
福利厚生は、「従業員を大切にしている」というメッセージの一つでもある。これがすべてではないが、企業の考え方を知るヒントにはなるだろう。
配信元:日本人材ニュース