◇上林 憲雄氏(Norio Kambayashi)◇
英国ウォーリック大学経営大学院ドクタープログラム修了後、
2005年神戸大学大学院経営学研究科教授、経営学博士。
専攻は人的資源管理、経営組織。
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先週はhow to型質問を裏返し,why型質問に変えると言う話をしました。理想を実現できていない現状に対して「それができていないのは,なぜ?」という,現状の原因や理由を問う形の質問にすればいいのです。
このような「なぜ?」を問う本質は,その事象の理由や原因を明らかにすることにあり,物事の本質がよく見抜けるようになっていきます。
次のステップはこの質問に対する解答を自分で考えていくことです。
■さまざまな可能性を考えてみる
Why型質問に対する自分なりの解答を考える際に重要なポイントは,いくつもの可能性を列挙してみることです。現実の状況は,実に多様な要因が複層的に絡み合って構成されていますので,たった1つの可能性を考えるだけでは不十分です。
現実的可能性が殆どないようなストーリーであっても,ロジックとして考えられる限り,とりあえずは排除せずに列挙しておくという姿勢が重要です。不要なものはあとから削除したり,整理したりすればよいわけですから,まずはできる限り多くの可能性を考え,いろいろと挙げておくことが得策です。
■いったん自分を離れて見つめ直してみる
さまざまな可能性を考えるに当たり,自分はこうだと考えるけれども,上司のAさんならこう言うだろうとか,同僚のBさんならああ考えるだろうとか,こういった,いわば"他者のロジック"についても考えておかなければなりません。自分の立場をいったん離れて,他者の立場に立ちながら思いを馳せると,より客観的・相対的に,冷めた眼で,現実を見つめることができます。そして,冷静に考えてみると他者の考えるロジックの方が正しかったと思えることも,実は多いのです。
普段から周りを見る余裕がなかったり,視野が狭くなりがちだったりする人の場合には,この「他者の立場に立って考え直す」という作業は意外に難しいものです。
■整理のテクニック
いろいろな可能性を考えながら要因を挙げ,ストーリーを複数考えることができれば,次の作業はそれらを整理することです。この種々雑多な要因の整理に力を発揮するテクニックが,いわゆる「MECE」(ミースまたはミッシー)と呼ばれる考え方です。
MECEとは,"Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive"の頭文字をとった呼び方で,直訳すると「相互に排他的で,かつ全体として尽くされている」こと,すなわち「漏れなく,ダブりなく」要素を挙げて整理すべし,という考え方です。
このMECEは,欧米のロジカル・シンキングのテキストブックには必ず出てくる,基本中の基本の考え方の1つです。
☆次週につづく!
「きみは営業に向いてない」
周りの人にさんざん言われていながら入社早々営業担当になってしまった中島が伝える、営業の頑張り方