前回は部下の「育成」は継続して実施することが重要であり、育成担当者がプロデューサーになって、部下の「育成」を組織全体で行うことで組織の育成能力を高めましょうというお話をしました。
今週はさらに踏み込んで、IT系の部下に対する仕事依頼の基本をお伝えします。
■部下に仕事を依頼する際の考え方
一口に部下と言っても、多様なタイプが存在します。実直なタイプ、気持ちが散漫なタイプ、意欲的だがミスが多いタイプ等々、さまざまです。
まず、理解すべきは「全員が優秀ではない」という事です。「これくらいでわかってくれるだろう」という楽観的な考えは捨て、「ここまでは説明しなくてもいいかな?」と感じるくらいに丁寧に噛み砕いて仕事を理解させ、教えるのがトラブルを防ぐコツです。
まずは、型どおりにやらせることを意識しながら進め、ある程度理解や経験を積んだ後、自分自身で考えて応用力をつけさせるとよいでしょう。決して、「分かっているから」と判断してはいけないのが、IT系部下指導の特徴です。
ただし、教え方はどのタイプでも共通です。育成担当者はできる仕事から少しずつ選んで教え、少しずつ成果を出させて、決してあせらず、あきらめず、気持ちを整理しながら進めるとスムーズです(一言で言うと忍耐です)。
また、仕事をする理由を教える事も重要です。「何のために、この仕事を行うのか?」を説明し、理解させて、行わせることが、基本原則です。
この点があいまいで作業だけをやらせ続けると、「考えない技術者」になってしまいます。
■仕事依頼のステップ
1.仕事の意味を教える
仕事の意味を理解することにより、不安なく、前向きに行動できます。また、意味を理解すれば、大きく間違った行動を取ったり、周囲に迷惑をかけたりすることは少なくなります。
2.仕事全体の流れを大まかに教える
すぐ細部を教えるのではなく、高い視点から全体を教えます。その際、全体像の分かる資料やマニュアルなど、部下・後輩が目で見て分かる資料を使って教えると効果的です。また、指導内容のメモを取らせることも重要です。
3.具体的な行動を指示する
実際の仕事のやり方を具体的に、詳しく教えます。その際、1)なぜ、2)誰が、3)いつまでに、4)どのような行動を、5)どのような点に注意しながら、ということを明確にして、指示します。
4.期待水準を伝える ~作業時間、達成度、品質 等
想定作業時間、達成度、品質の期待水準を伝えます。近年の若年層には、恥をかきたくないとか、言われた通り最低限しかやらないという傾向があります。期待水準を伝えておかないと、凝り過ぎて、やたら時間をかけるとか、すぐできるが完成度が低すぎて使いものにならないなどの問題を生みかねません。
例)
・「30分で、7割くらいまでやって欲しい」
・「お客さまに渡すので、小さな間違いもないことを確認して欲しい」
■依頼した内容を確認する
仕事の依頼をしたら、その指示内容についてどう理解したか、どう感じたかを具体的に答えさせる必要があります。指示した直後に「分かった?」と単純に確認しても、部下は反射的に「はい・・・。」と答えてしまいがちで、分からないことを「分からない」としっかり言えない場合が多いからです。具体的に答えさせると相手の理解度を的確に把握することが可能なのです。
また、業務知識不足から勘違い・誤解しているケースもあるため、少しでも疑問を感じたら質問させることが大切。理解不足を防止することができるのです。
さらにお互いの価値観、考え方(常識)のすりあわせを随時実施することお勧めします。特にビジネスマナーなどについては、前提となる常識が異なっていると考えた方がいいでしょう。
つまり"指示"は相手に理解されて、はじめて"指示"となり得るのです。
次回もお楽しみに。