◇今回インタビューしたビジネスパーソン◇
青野 佑一(Yuichi Aono)
ファッション業界に携わって26年。もともとファッションに興味があったが、アパレル業界のベンチャー的な要素や、自ら作ったものを自分の店で直接販売するという「製造小売業」のマーケティングにも興味を持ち、業界に飛び込む。その後、新規ブランドや店舗を立ち上げようとしていた、某大手アパレル会社からヘッドハンティングにあい、事業部長になり、10店舗を立ち上げ業績をあげる。その後、フリーランスとなり、現在もブランドの立ち上げや立て直しなど、短期で結果を出さなければならないアパレル業界のディレクターとして活躍中。
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※インタビューの登場人物
◇インソース小林、◆板橋講師
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【第1回】「アパレル業界の営業」
■ブランドの立ち上げ
◇ブランドを立ち上げる仕事というのは具体的にどういったことをされるのですか?
◆まず、流通させる商品をつくる商品企画があります。そして、それを展開していく売り場を確保する店舗開発がありますが、私の場合は、オーナーさんが自己資本でやっていく店舗形態が多いので、店舗の物件を探すほかに、損益計算書などをつくりながらオーナーの説得もします。さらに、メディアの力や自分のネットワークを使って、プロモーションを行い、そのブランドを軌道に乗せていきます。このような、商品企画・店舗開発・販売促進をトータルに行う「ディレクター」が、最近の私の仕事です。
■アパレル業界の営業
◇アパレル業界の営業の仕方についてお教えいただきたいと思います。一般的な営業の仕事だと、電話でアポをとって、商談に行って、商品を説明して・・・という流れですが、アパレル業界でも、こういった普通の営業をされるのですか?
◆ブランドの特長によっても異なりますが、たとえば、デパートの人と会って、商品を説明して・・・というような一般的な営業もします。そのほかでは、アパレル業界ではシーズン企画のものはそのシーズンに入る3ヶ月前に、展示会を開きますが、お客さんにそこに来ていただき営業するという方法もあります。また、お客さんに商品を見ていただいて、そこで受注したものを生産するという形もとっています。これは生産ロスを回避する方法ですね。
■営業交渉術
◇展示会などで商品を説明するときに、お客さんに強いインパクトを与えることができるような、上手な説明の仕方、交渉術などはありますか。
◆商品を見る目はメーカー側だけではなく、その点はお客さんである小売店の方もプロですので、「口八丁手八丁」なやり方は通用しません。そういう中で、やはり、商品がメディアに登場している(これからメディア戦略を考えている)などの付帯条件がものをいってきます。芸能人などのオピニオンリーダーがその商品を着用しているとなると、買い手も「売れる」と思ってくれます。そういった、プロモーション的なことを匂わせながら、商品を説明していくことが大事ですね。
◇商品に付加価値をつけて売っていくということは、一般の営業方法と同じですね。
◆そのとおりです。「商品の質もどのメーカーでもあまり変わらない」「メーカー側も小売店側も商品のレベルは分かっている」という中で、差をつけるためには、商品のイメージという付加価値が重要ですね。
そして後は、やはりお金ですね。掛け率がどのくらいなのかとか。通常、小売価格10000円のものは、卸値は6000円という業界の流れがあります。小売価格は再販防止のために、メーカー側が決めますが、そこを5ポイントサービスしますよ、という形で交渉をしていきます。あらかじめ、値引き限度額は上司と決めていますが、値引きもから、交渉にあたりますが・・・
■リスクを負う
◆大きな売り上げ、営業成果を上げるためには、一辺倒の営業ではダメですね。敢えて、一か八かのリスクを負うことも大切です。
たとえば、デパートのバイヤーさんが、「このワンピースいいね」と言ったとします。そこで、本当は自社でまだ50枚しかワンピースを製造していなくても、「これは絶対に売れると思うので100枚購入してはいかがですか」と勧めます。そして、100枚の受注を受けた後に、急いで工場に50枚の追加を出したりしたこともあります。売れなかった場合は最悪ですけどね。
◇かけに出るときは何か確信をお持ちなのですか?
◆はい!
◇先程の例のワンピースを100枚売ったときはどのような確信をお持ちでしたか?
◆私自身は、そのワンピースに非常に愛着を持っていましたし、その商品がスタイリングする上で絶対に必要なアイテムだということでは、私もバイヤーの方も意見が一致していましたので、そのような"賭け"にでました。もちろん、核心があっても、100%は成功するわけではありません。
◇売れ残ったりした場合はどうするのですか?
◆商品が売れ残って相手が値下げをして売っても、向こうに利益が出るような値段で、こちらも商品を売っていますので、それほど大事に至ることはありませんが、その後、いったん商品を回収し、洗いにかけて、感じや色合いを変えてもう一回販売してみたりもします。入金を一ヶ月待って欲しいと言われても、普通はムリですが、聞かなかったことにして、上司のつきあげにあってもなんとかつないだりとか・・・
◇板ばさみで大変ですね。
■一般の営業にも使える営業術
◇アパレル業界ではない一般の業界での営業でも通用する、青野さんの営業術はありますか。
◆先程も述べましたが、ただ一方的に売るのではなくて、自分自身リスクを負わないとそれなりの成果は得ることはできないと思います。どこまで、リスクを負うかということはケース・バイ・ケースですが・・・
私は、クライアントさんの要望をしっかり分析し、「ここが足りない」という部分を明確にし、ニーズを発見します。
ですので、基本的に、お客さんが望むことに関して、「NO」と言わないことを心掛けています。
◇そうして、お客様の要望に応えることで、お客さまの信頼を得て、"青野さん"という人柄で買うという風に持っていくということですね。
■どのように相手のニーズを掴むか?
◇どのように相手のニーズを掴むのですか?
◆先方のクライアントと会う機会を多く持って、こちらの提案することに対してどういうことが出てくるのか、どのような反応をするかということからニーズを掴んでいきます。相手は、ストレートに「こういうものが欲しい!」とは言ってくれませんから。それから、他にも取引をしている所があったら、そこから色々と情報をもらったりもします。もちろんこちらも情報をあげなくてはいけませんが。
◇それは、ライバル会社ですよね?
◆そのような場合もあります。それ以外では、たとえば、生地(布帛)関係のブランドと、ニットを主に扱うブランドでは全く生産背景が違うので、その辺は仲間意識を持って情報交換ができます。あとは、人の紹介や自分のネットワークの活用などですね。
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