今回インタビューさせていただいたビジネスパーソン
◇K氏◇
現在、大手IT企業監査役。 銀行でたくさんの勘定系システムを設計・開発。その後、支店長となり営業を指揮し、卓越した数字を残す。スーパーSEであり、かつスーパー営業マンという稀な存在。
◇ インタビュアー
◆ K氏
■仕事は「やらないことを決めること」から始める
◇仕事のやり方、段取りについてお聞きしたいと思います。これまで多くの巨大なプロジェクトを担当されてきたわけですが、どのように仕事をマネジメントされていたのでしょうか。
◆まず、「何をやるかを明確に決めること」ですね。そのためには、「やらないこと」を決めてしまうのが有効です。ある管理職の方が、銀行の新しく開設する支店長になったとき、部下に「まずしないことを決めろ」と指示されたそうです。自分の仕事のテリトリー(範囲)をまず決めて、そこから出ないようにする。そのことで、ものすごく仕事の密度が上がります。銀行の支店の営業をやっていると、おいしい話はあちこちにあるので、ついつい、いくつも手を出して浮気をしてしまいがちですが、そうすると、点の商売になってしまいます。「二兎追う者は一兎をも得ず」と言いますか、「虻蜂取らず」になりますから。
■チェンジングコストと手戻りを回避する
◆また、仕事は一度に2つも3つも同時にすることは難しいので、一つ一つ片づけていく方が楽ですが、実際は、マルチで仕事が走ることもあります。ただ、AをやっているときはBのことはしないというように、「諦める」ことが肝心です。何かをやっているときは没入しなければいけません。没入して一つ、一つ仕事を片づけて行けば、抱えている仕事は終わるものです。AからB、BからCと仕事を切り替えるときに、チェンジングコストがかかります。したがって、なるべく切り替えの回数を減らす工夫が必要です。
◇仕事や人が増えてくる中で、時間を上手に使う方法について何かございますか。
◆アメリカの優秀なプログラマーについて書いた本で、「最初からは仕事をしないものだ」という話がありました。どういうことかというと、良い物をつくる人は、例えば仕事の期間を3ヶ月と設定すると、最初の2ヶ月くらいはあちらに行っては駄弁り、こちらに行っては駄弁り、と遊んで回っている。それで最後の20日くらいで仕上げてしまう。こういう人の方が良い仕事、いい物を作るのだそうです。
◆インプットをどんどん入れている訳ですね。そしてすぐにはアウトプットを出さない。
ラフデザイン書いて走り出したら、矛盾に気がついたり、足りないところに気づきます。ラフデザインができていないのに始めたら、手戻り手戻りになってしまいます。全体が大まかでもラフデザインをつくって進み出すと、やっているうちに、足りない部分が分かってくる。その足りない情報をインプットして、再び全体像を組み立ててアウトプットすると、アウトプットの質も良くなるし、時間も大分早くなると思います。
(次回)「上司との関係」について語っていただきます。どうぞご期待ください。