2023年9月15日
人的資本投資は、人材の持つスキルや能力といった資本に、企業が投資する取り組みのことです。海外では、人的資本投資が企業価値を判断する指標のひとつにもなっており、国内でも重要視されるようになっています。 この記事では、人的資本投資について基礎的な知識と、メリットや具体的な施策内容をご紹介します。
人的資本投資とは、企業が人材を資本として捉えて、その価値を最大化するために投資を行うことです。人材の能力やスキルなどを資本とし、スキルアップや生産性の向上などを目指して企業成長につなげることがねらいです。 人的資本投資の具体例としては、技術や資格など能力を向上するための研修や教育などの他、働きやすい環境づくり、従業員エンゲージメントの向上、従業員の能力を最大化できる制度の構築などが挙げられます。
人的資本投資が重要とされる理由には、働き方の多様化やステークホルダーの注目が集まっていることが理由として挙げられます。
テレワーク導入などによる働き方の変化や、終身雇用から成果主義への意識変化など、働き方の多様化が進んでいます。また労働人口不足により、優秀な人材を確保することが難しくなってきており、企業は人材の確保や教育を続けながら、従業員とともに成長できる環境作りが重要とされています。 また人的資本投資は、企業価値を高めるひとつの有効な手段であるため、企業の経営状況や将来性を図る指標としても注目されているのです。株主や取引先などステークホルダーから人的資本投資に関する情報開示が求められる機会が増えており、今後は義務化されることも考えられます。
人的資本投資に取り組むことで、どのようなメリットが期待できるかご紹介します。
人的資本投資の効果的な施策を行うためには、まず従業員のスキルを把握することが大切です。現在のスキルレベルの状況を把握することで、企業ビジョンや企業戦略の目標に対して、足りないスキルに気づくきっかけとなります。明確な施策を打ち出すことにつながり、スキルアップのための教育方法や環境作りが可能になります。 また従業員の能力を把握することで、適正な人員配置にも活かすことができ、パフォーマンスを最大限に発揮できるメリットもあります。
従業員のスキルアップは生産性の向上にもつながり、企業の成長には欠かせません。市場の変化やDX推進など、企業は急速な変化にも対応していかなければならず、変化に対応できるような人材やスキル、教育制度が必要になってきています。そのため、スキルアップのための投資は必要不可欠です。 人的資本投資によって、従業員と企業の双方が成長できるサイクルが誕生します。
従業員にとって、スキルやキャリアアップのための環境が設けられている、多様な働き方に対応しているなどの条件は、従業員エンゲージメントの向上や離職率の低下につながり、優秀な人材を確保することが可能となります。また求職者にとっても魅力的な条件のため、優秀な人材を獲得しやすくなります。
人的資本投資を必要に感じていても、実際にはどのような施策を進めればよいかわからない企業も多いのではないでしょうか。ここでは、人的資本投資の具体的な施策をご紹介します。
人的資本投資の施策として、社内研修やスキルアップなど従業員の教育の場を設けることが挙げられます。勤務時間内で教育の場を設けるには、余裕をもった計画や環境整備が必要になります。従業員は学習の時間に集中できるようになり、効率的なスキルアップが可能です。
ワークライフバランスは働き方改革の推進によって、さらに意識が高まっています。プライベートが充実することで休息がしっかりとでき、仕事へのモチベーションが保持され、結果的に生産性への向上へとつながっていきます。ワークライフバランスを見直した環境作りへの取り組みが、人的資本投資には必要です。
テレワークの導入や、介護や育児と両立しながら働ける柔軟な勤務体制など、多様な働き方への対応が求められています。 働く場所や時間にとらわれない働き方によって、これまでの条件では勤務が難しかった従業員も働き続けることができ、採用の幅が広がることにも期待できます。優秀な人材確保とやりがいやモチベーションの維持につながるでしょう。
人的資本投資には、給与などの待遇面や福利厚生を見直すことも大切な取り組みです。従業員の教育や働き方の環境を整え、生産性が向上し企業成長につながった場合、利益分を従業員に還元することで、従業員はモチベーションや働きがいを感じるようになります。生産性の向上・利益の還元・従業員のモチベーション維持という好循環が生まれます。
人的資本投資に取り組む際、気をつけておきたい注意点をご紹介します。
人的資本投資には、まず企業でビジョンを明確にし、社内に浸透させることが大切です。ビジョンを目指すには経営戦略が必要となり、経営戦略のための業務を遂行するには適した人材が必要になります。 経営層だけでなく、すべての従業員が共通認識を持っていなければ、戦略やビジョンの実現が難しくなります。経営層の意図がくみ取れない、現場の意見が理解されないといったギャップをなくすことが大切です。
人的資本投資の施策は、一時的な取り組みでは効果が得られません。また企業ビジョンや戦略に沿った人材育成のプログラムが、望んだとおりの結果につながらない可能性もあります。 人的資本投資の施策は中長期的な目標を立て、実行と検証を繰り返し、軌道修正しながら少しずつ達成していくことが大切です。
人的資本投資は、株主などへの情報開示が求められる機会が増えています。そのため、一部のステークホルダーのための施策になってしまわないようにすることが大切です。 他社と比べて優位性のある取り組みを掲げたり、株主からの改善要求をそのまま受け入れたりすると、人的資本投資の本来のねらいが見失われる可能性があります。企業ビジョンに向け経営戦略と連動した取り組みが大切です。
人的資本投資は、従業員の育成や働きやすい環境づくり、モチベーションを向上させ生産性につなげる仕組みが大切です。人的資本投資は、企業の成長だけではなく従業員の働きがいや、他社との競争力向上、企業のイメージアップなどさまざまなメリットが期待できます。
配信元:日本人材ニュース
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