■権限委譲とは
権限委譲とは本来上司に属する一定の業務上の権限を部下に委譲することで、部下はその範囲において自立的に決定、実行する権限とともに、目標を達成する責任を持つことになります。
一つ上位の立場(係長なら課長、課長なら部長)のつもりで仕事をするように、ということが言われます。一段高い目線、広い視野で仕事を行うことが、本人の成長を促すからです。すると、部下が上司の仕事を行う権限委譲は、一つ上位の立場で仕事をする仕組みと捉えることができます。このように上司の重要な役割である人材の育成に権限委譲は欠かせないのです。
■上司の関与
権限委譲を機能させるためには上司の積極的な関与が不可欠です。権限委譲は部下に丸投げにすることでも、ほったらかしにすることでもありません。
(1)目標と委譲範囲の明確化
達成すべき目標と、委譲する権限の範囲をあらかじめ上司と部下の間で明確にしておきます。それがないと、部下は何を目指して、どこまで自分で判断、行動していいかわからず、都度上司に確認する必要に迫られ、何のための権限委譲かわかりません。あるいは権限委譲の範囲を超えて、暴走してしまう恐れがあります。
(2)経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)の手当
仕事を進めるには協働する社内外の人々や予算、データやノウハウ等の情報といった経営資源が欠かせません。部下自らがそれらにアプローチできない場合、例えばキーパーソンを紹介してあげるなど、部下が必要とする経営資源の手当てをしてあげます。
(3)ものさしの共有促進
部下が判断、行動する際の拠り所となるものさしが、上司や組織のものと違っていては、一貫性を保てなくなります。そのため部下にはものさしを正しく理解し、それに則った判断や行動をすることが求められる一方で、上司は日頃からものさしの共有を組織内で進めている必要があります。
(4)ホウレンソウの徹底
権限委譲をしても最終責任は上司にあります。そのため、問題が起こった時はもちろんのこと、そうではない時でも定期的に報告を部下に行わせなければなりません。報告、連絡、相談の徹底です。部下に任せきりだったので、状況を把握できていませんでした、という事態は絶対に避けなければなりません。
(5)問答法の活用
ホウレンソウの際の上司の対応は部下の育成の点で非常に重要です。上司がいきなり答えを言ってしまうだけだと、部下は考えなくなり、成長もしません。上司の役割は答えを教えることではなく、「上司の問いかけ⇒部下の返答」を繰り返すことで、部下自身に答えを気づかせるように仕向けることです。
「きみは営業に向いてない」
周りの人にさんざん言われていながら入社早々営業担当になってしまった中島が伝える、営業の頑張り方