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ENERGY vol.07(2021年冬号)掲載

PICKUP

企業成長の新機軸となるSDGs

企業がSDGs推進で得る2つのメリット

2015年に国際連合で採択されたSDGs。日本でもこの1年でメディアに取り上げられる機会が急激に増えました。関心が加速度的に高まる中、日本の企業は人権問題やコロナ禍で拡大した貧富の差といった社会解決の課題に向け、一層の努力が期待されています。

一方でSDGsへの関心が高まるにつれ、CSRなどとの違いも見えにくくなってきました。SDGsの本質は「自社の事業で、社会の課題を解決していくこと」にあります。そしてSDGs達成に向けた取り組みを行う中で、企業は大きく2つのメリットを享受できます。

◆メリット1:エシカル消費志向の顧客を新規で獲得できる

2030年までに年間で1200兆円の事業機会を創出

SDGs推進に取り組むメリットの1つが、新しい顧客層を獲得できることです。

SDGsの市場は世界規模で拡大しており、経済産業省の調査によると2030年までに年間で最高12兆ドル(約1200兆円)の事業機会が生まれるとされています。市場を活発化させている要因の1つが、エシカル消費(倫理的消費)と呼ばれる、「社会・環境・人に配慮した消費行動」という価値観を反映した商品やサービスです。

新しい需要喚起の柱「エシカル消費」

エシカル消費は欧米諸国を中心に広まっているものの、日本でも確実に関心が高まっています。

消費者庁が2020年に行った調査によると、エシカル消費を意識した商品やサービスに購買意欲があると回答した人は全体の80%に上りました。2016年の調査時に比べ、約20ポイントも増加しています。

エシカル消費と利益創出を両立させる

過去にも日本では「エコ」「地産地消」といった消費者の注目を集めるキーワードが使われてきました。そして今は「エシカル消費」という新しいキーワードが広まりつつあります。今後はエシカル消費を意識すると同時に、利益を生み出す商品やサービスを生み出せるかが、SDGs推進を成功させる試金石になるといえます。

◆メリット2:ESG投資などで自社の信用度と資産が向上する

2年で約530兆円増えたESG投資

SDGsに取り組む2つ目のメリットが、資金調達の円滑化です。SDGs推進に必要な資金となるESG投資は今、世界規模で投資額が拡大しています。

世界持続可能投資連合(GSIA)によると、2020年に行われたESG投資の総額は35兆3千億ドル(約3530兆円)、2018年に比べ15%、2年で約530兆円増えた計算になります。世界の投資家の、SDGs推進に対する関心の高さが分かります。

環境と社会問題の解決が投資対象となる

日本でも年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などの機関投資家が、ESG投資を積極的に行っています。背景には「環境や社会の問題解決が、長期の利益を生む」という投資家共通の認識があります。

環境や社会に関する問題は複雑に入り組んでいることが多く、解決を図るにはそれなりの時間が必要です。そうした難題に取り組む中で生み出される商品やサービスが、消費者の支持を集め、企業の業績向上に繋がり、自分達にも利益をもたらすと投資家から考えられているのです。そして上場企業の場合は、投資家や消費者からの信頼が「株価の向上」という形で自社の利益に直接反映されます。

SDGs推進の中核となる2つの人材

推進にあたっての課題は新商品やサービスの「価格」

顧客の獲得や自社の資産向上といったメリットが得られる一方、SDGs推進にはクリアすべき課題もあります。その中でも重要なのが、SDGs推進のために開発した新商品やサービスの価格です。

高価なエシカル商品は本末転倒

エシカル消費への関心が日本でも高まっているのは事実です。しかし人や環境などに配慮した結果、人件費が上がったり、環境には優しくても高価な素材を使ったりしては、上昇したコストを価格に転嫁せざるを得ません。そして一般的に価格が上がるほど、消費者は手を出しづらくなります。

製造や原材料の調達方法を抜本的に見直す可能性も

環境や社会に配慮しつつ、消費者に選ばれ、利益を生む価格をつける――。この課題をクリアするためには、全社を挙げた知恵が必要です。場合によってはそれぞれの部署で培われたノウハウを全社で共有したり、他社と協働したりして、製造に必要なエネルギーや原材料の調達方法を、1から見直すことになります。

SDGs推進の課題解決に必要な2タイプの人材

SDGs推進には、「環境や社会や人に優しい」イメージ戦略と、「新しい顧客と獲得し利益を創出する」マーケティング戦略の視点が欠かせません。社会の変化に対応しながら今後も企業として生き残るためには、SDGs推進に必要な課題を解決していく、2タイプの人材育成が必要です。

柔軟な発想力で新しい商品やサービスを生み出す人材

1つ目は、SDGs推進のための商品やサービスを生み出す人材です。エシカル消費を意識した商品に高い満足度を提供しつつ、どう価格を抑えて利益を生み出していくか――。既存の概念に捉われない発想力と新しい視点でこの課題に取り組み、解決策を見つけ出せる人材がまずは必要です。

自社のSDGs推進策を社内外へ発信する人材

2つ目は、SDGsの推進策を社内外へ発信する人材です。社員には推進策の方針を、消費者には新商品やサービスの特長を、投資家には自社の推進策の環境と社会への有用性を、強力に伝えていく――。対面やウェブ、10ページでご紹介する「ESG開示」の資料などを活用しながら自社のイメージを向上させる、SDGs推進の牽引役となる人材も必要です。

人材育成を見据えた先のSDGs経営の実現方法

そうして人材を育成しながら「イメージ向上」「利益創出」という推進のための課題を解決し、どうやって自社の経営にSDGsを取り込んでいくのか。次ページよりインソースが提案する、SDGs経営の実現方法をお伝えします。

文/石渡 純恵

株式会社インソース社長室リーダー。横浜国立大学経済学部卒。2017年インソース入社。コンテンツ開発部で新作研修の開発やメディア事業部でウェブ販促を担当し、2020年9月から現職。社長室では、新規サービス開発や広報・IR、ESG推進役として環境対策や地域との協働活動を担当。また統合報告書を2021年12月発表に向けて作成中。

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2021 WINTER

Vol.07 " 人" づくりから始めるSDGs

vol.7は国際的に注目度が高まる「SDGs」がテーマです。SDGs推進によって企業は「顧客獲得」と「資産向上」という2つのメリットを享受できます。全社員を取り込んだ「社内向けESG」「社外向けESG」によってSDGs経営を実現し、VUCAの時代に勝ち残る方法をお伝えします。

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Vol.14 使えるアセスメント

vol.14は「アセスメント」がテーマです。 人的資本経営の注目により「人」の価値を引き出すことが重視されるようになりました。 客観的に評価・分析することができるアセスメントを活用することで多様な人材が活躍できる人事戦略に役立てることができます。 本誌では、採用、管理職育成など様々な場面でのアセスメント活用方法についてご紹介しております。

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