前回は、荘子の考え方から、「一般的に常識といわれていることが唯一の正解ではない」と考えることにより、視野を広げることができるかもしれないとお伝えしました。 今回は、その具体例として、荘子が説くポジティブシンキングになる方法【仕事の意欲向上方法】をご紹介いたします。
部下の視野を拡げるには(2)
著者:インソースマネジメント研究チーム
1.失敗しても後悔せず、成功しても得意がらない、どんな境遇でも自己を喪うことがない人間が常に冷静で真に強い。
2.「荘子」を読むと「逆の発想」に気づき、視野を拡げていくきっかけをつかむことができる。
- ■倫理の教科書としての孔子、孟子、孫子
- 前回、中国古典・荘子を読むことで、視野を拡げることができるかも知れないと述べました。そして、管理職に就く前にこそ必要であるとも述べました。中国古典の中でも、孔子の論語や孟子、孫子などは至って「まとも」な世界を説いています。「まとも」な世界とは、勝つためにはどう戦うべきか、部下の信頼を得るためにはどうあるべきか、といったような「まとも」な問いです。ビジネス界のトップ経営者に論語や孟子が受けるのは、こうしたまともな世界のあり方を真正面から説いているためです。
- ■「まとも」な世界から離れる
- しかし、『荘子』はその正反対で、まともな価値観と真逆の発想をします。 荘子の手にかかれば、孔子の謹厳さはたちまち独りよがりのおっちょこちょいとなります。要するに、現世的価値観に埋もれた優等生をせせら笑うひねくれ者の視点から、世界を冷徹に見つめ直そうとするのが荘子なのです。
- ■人間にとっての真の自由とは
- 人間は、自分自身の希望を叶えたいという強い欲求を持っています。その希求のために、必死に努力をします。そしてそれが尊いことだと教えられます。しかし、荘子はそうは考えません。人間の真の自由とは、現実の一切を自己の必然として肯定していく心の逞しさにこそあると述べます。小難しいと感じられる方は、故・赤塚不二夫氏の名言「これでいいのだ」を思い起こしてもらえればいいでしょう。すべてなるようにしかならないと割り切ることとでもいえるのでしょうか。
- ■自己を喪うことがないと強くなれる
- 荘子は、こうしてあらゆる境遇を天命として随順していく人間を、真の人間という意味で真人と呼びます。真人は失敗しても後悔しませんし、成功しても得意がりません。つまり、どのような境遇でも自己を喪うことがないので、常に冷静で、真に強い人間といえるのです。『荘子』のエッセンスは、この「真人であれ」という点にこそあります。
- ■真逆の発想から視野を拡げるきっかけを
- しかしながら、経営者の方々は、社会の常識的価値観、利益追求が必要で、社会的責任も伴うので、常識外れを説いた荘子など到底読んでいられません。経営者の方々には、やはり論語や孟子、孫子をおすすめします。管理職になる前の若手の方々には、「荘子」を読むと「逆の発想」に気づき、視野を拡げるきっかけを掴むことができるでしょう。さらに自信を失いかけている自分自身を鼓舞し、真に強い人間へと脱皮していくコツを掴むことができるはずです。