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正規社員と非正規社員の給料が同じになる? 「同一労働同一賃金」で働き方はどう変わるのか?

2019.01.16

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安倍内閣肝いりの「働き方改革」で動向が注目されている「同一労働同一賃金」。正規従業員と非正規従業員の待遇格差が問題視されるなか「同一労働同一賃金」が実現するとどのような変化があるのか。具体的に考察してみよう。

「同一労働同一賃金」の意味を振り返る

考察する前に「同一労働同一賃金」とはどういうものか、確認しておこう。「同一労働同一賃金」とは、「同じ仕事であれば、同じ賃金を支払う」というシンプルなものだ。

この「同一労働同一賃金」が厳密に適用されているのがコンビニや飲食店のアルバイトだ。年齢やスキルを問わず、時給が支払われていることに気づくだろう。

「同一労働同一賃金」が取りざたされている大きな理由は、正規従業員と非正規従業員の待遇格差。国の調査によると、非正規従業員の賃金は、正規従業員の6割程度とも言われている。

「同一労働同一賃金」が主流になっているイギリスでは……

イギリスの労働市場では「同一労働同一賃金」が順次徹底されてきた。イギリスでは、パートタイムもフルタイムもどちらも正規雇用。時給や手当に差はない。収入は勤務日数や労働時間に応じて支払われることになる。つまり、パートタイマーは「フルタイムより労働時間が短いだけ」という話である。かなりシンプルな制度設計になっていると気づくだろう。

現在の日本では、正規か非正規かで時給や手当だけでなく福利厚生にも大きな格差がある。たとえ同じ仕事をしていても、正規従業員の時給は2,000円だが、非正規従業員の1,000円ということもままある。パートタイム労働法においては、福利厚生の格差の一部をなくすと明言しているものの、徹底度は企業によってだいぶ異なるのが現状だ。

仕事の“価値”に重点を置くイギリス

なぜイギリスでは「同一労働同一賃金」が実現できたのであろうか。それは仕事の“価値”に重点を置いて従業員を評価しているからだ。

例えば皿洗いの仕事。皿洗いの仕事は、皿をキレイに洗うことだ。この場合、「皿をキレイに洗う」ことが“価値”であり、正規であろうが非正規であろうが立場は無関係と捉えている。

このようにある一定の業務だけを取り出し評価する場合は、「同一労働同一賃金」を適用しやすい。

「同一労働同一賃金」はプロフェッショナルにこそ向いている制度だ。金融ディーラーやデザイナーなど成果、言い換えれば“価値”に重点を置いている専門職には「同一労働同一賃金」こそ納得のいくものだ。

日本的雇用慣行が「同一労働同一賃金」のハードル

日本では、新卒一括採用が一般的だ。入社後、大企業を中心とした多くのホワイトカラーは「総合職」として採用され、さまざまな部署を数年で転々とすることになる。すなわち、プロフェッショナル育成というよりはゼネラリスト育成という側面が強いわけだ。

この場合、「同一労働同一賃金」を適用しようとしても、どの労働(仕事)を基準にして評価するかが問題となる。

人事部を例に出して説明しよう。人事部は人事制度の策定や人事評価などを行う。人事制度の策定業務の“価値”は果たしていくらだろうか。人事部に長くいる従業員とそうでない従業員(若手従業員)とでは、仕事の出来に大きな差が出るだろう。

ベテラン従業員の仕事の“価値”を基準にすれば、若手従業員の賃金は大幅にカットせざるを得ない。しかし、日本で現在適用されている賃金制度は「職能給」であり、それは難しい。

「職能給」とは、「職務遂行能力」を評価した賃金制度で年功序列型賃金制度に最もフィットする。この制度のもとでは、人事制度の策定という仕事は、その会社における単一の職務であり、「できるかできないか」はあまり関係がない。というのも、その会社にはほかにも仕事があり、対象となる従業員には「職務遂行能力」はあるのだから、フィットする仕事をあてがえばいいだけだ。

フレキシブルな働き方を実現する「同一労働同一賃金」

これまで見てきたように、「同一労働同一賃金」は、プロフェッショナル専門職に最もフィットする制度であると思われる。

筆者の知人に非正規の雑誌編集者がいる。彼女は、正規従業員とまったく同じ仕事をしているものの、賃金は正規従業員の約6割に留まっている。こうした労働者には、「同一労働同一賃金」を適用したほうがフェアかもしれない。

しかし、総合職のようなゼネラリストが一般的な日本では、「同一労働同一賃金」を適用するのは難しい。

理由は前述した通りだが、風向きは変わりつつある。というのも、企業は成果主義に軸足を移しつつあるからだ。

成果主義が進むということは、成果を測りやすい人事制度の導入が不可欠だ。「同一労働同一賃金」は仕事の“価値”が同じであれば、正規、非正規問わず待遇も変わらないという制度。考えてみればこれほどシンプルで成果主義とフィットする制度もないだろう。

もちろん、何を「同一労働」とするか、基準があいまいでは公平性が担保されない。今後、安倍内閣でもこの点が議論の焦点となりそうだ。

「同一労働同一賃金」が導入されれば、パートタイムからフルタイムへ、フルタイムからパートタイムへ、フレキシブルな働き方ができる反面、日本的雇用慣行に従ってきた正規従業員は賃下げの憂き目に遭う可能性が高い。そうならないようどのように自衛するのか、今から考えておくべきだろう。

配信元:日本人材ニュース

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