2024年9月30日
中小企業庁は30日、「中小M&Aガイドライン」を改訂した。中小M&A市場の健全な環境整備と、支援機関が提供するサービス品質の向上を図るのが狙い。3回目の改訂となる今回は不適切な買い手の存在や経営者保証に関するトラブル、M&A専門業者による過剰な営業・広告問題を受けての市場健全化への対応が中心となっている。
同庁は中小M&A市場の健全な環境整備とM&A支援の品質向上を図る観点から、中小企業向けのガイダンスに加えて、仲介事業者やファイナンシャル・アドバイザー(FA)向けの留意事項などを追加した。
主な改訂内容は以下の7点。
中小企業向けに手数料と業務内容、サービス品質などの確認の重要性、手数料交渉の検討などの必要性について追記した。
仲介事業者・FA向けには手数料の詳細説明やプロセスごとの提供業務の具体的説明、担当者の保有資格や経験年数・成約実績の説明などを求めている。手数料の具体的金額は民間企業間の契約事項なので、市場での競争に委ねる。
仲介事業者とFAに、営業先が希望しない場合は広告・営業活動を停止するよう求めている。
仲介事業者に追加手数料を支払う者やリピーターへの優遇(当事者のニーズに反したマッチングの優先実施、譲渡額の誘導など)を禁止し、情報の扱いに係る禁止事項を明確化した。これらの禁止事項について、仲介契約書に仲介者の義務として定める。
仲介事業者とFAに、買い手側へ売り手側の名称の開示(ネームクリア)をする場合、売り手側の事前同意を取得するよう求めている。契約期間内に成立しなかった案件であっても、一定期間内に仲介事業者やFAが紹介したM&Aが成立した場合に手数料を取得する「テール条項」の限定範囲と専任条項がない場合の扱いを定めた。
中小企業向けに最終契約・クロージング後に当事者間でのトラブルとなりうるリスク事項を解説している。仲介事業者とFA向けには当事者間でのリスク事項について、依頼者に対する具体的な説明を求めている。
中小企業向けに、M&Aを通じた経営者保証の解除または買い手側への移行を確実に実施するための対応として、弁護士や公認会計士、税理士といった士業専門家、事業承継・引継ぎ支援センター、経営者保証をしている金融機関などへのM&A成立前の相談や最終契約における位置づけの検討などの対応について明記している。
仲介事業者とFAには、士業専門家や事業承継・引継ぎ支援センター、経営者保証をしている金融機関への相談が選択肢となる説明と、最終契約での経営者保証の扱いの調整を求めている。一方、金融機関にはM&Aの成立前後に経営者保証の解除や移行について相談を受けた場合の「経営者保証に関するガイドライン」に留意した対応を求めた。
仲介事業者、FA、M&Aプラットフォーマーに買い手側に対する調査の実施と、その概要・結果の依頼者への報告を求めている。買い手企業の不適切な行為について情報を取得した際の慎重な対応の検討を求めた。併せて業界内での情報共有システムの構築の必要性を明記するとともに、同システムへの参加有無について、依頼者に対して説明することを求めている。
M&A仲介の自主規制団体であるM&A仲介協会は26日、2024年10月1日から悪質な買い手企業の情報を共有する「特定事業者リスト」の運用開始と、これに伴う「特定事業者の情報共有の仕組みに関する規約」を策定し、不当なM&A取引の防止に向けた新たな取り組みを始めると発表している。
配信元:M&A Online
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