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ENERGY vol.02(2020年夏号)掲載

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コロナ禍とリーダー

このたびのコロナ禍で、世界中がかつてないほどの混沌に巻き込まれています。こうしたかつて誰も経験したことのない混乱期にこそ、リーダーの判断や行動が組織の命運を左右することになるのは、我々の知る経験的事実です。

これまでの長い社会の歴史から見て、混乱期に優れた行動が発揮できる組織のリーダーは、次の3点をきっちりできるリーダーです。

慌てないこと

まず1つ目は、何より慌てないことです。混乱に接し、リーダー自ら泡を食っているようでは話になりません。たとえ多少は心乱れることがあったとしても、そういう時こそ落ち着いて、長期目線で自分は何をすべきか、そして我が社はどう立ち向かうべきかを考えるリーダーが要請されます。

このことは、短期的に何もしないことを意味するのでは勿論ありません。日々変動する状況に応じ、適切な行動をその都度とって対処することは当然必要です。重要な点は、そうした1つ1つの日々の行動が、無秩序で気まぐれであってはならないということです。換言すれば、大きな信念や哲学のもとで個々の決定や判断を下し、統一的な指示ができるかということです。

他者の痛みが分かること

2つ目は、広く社会全体の利益を考えた行動がとれるかどうかです。我が社のことはもちろん重要ですが、他者や他社のこと、大袈裟に言えば社会や地球全体のことも含め、いかに考えられるかです。

自分自身や自社のことで精いっぱい、というのが、混乱期における多くの"普通"のリーダーでしょう。人間なのでそれはある程度致し方ありません。しかし、こういう非常時にこそ自身以外に目を向けることができる余裕や優しさを、本当に強いリーダーたちは有しています。いわば、他者の痛みをも我がこととして理解し共感できることと言い換えてもいいでしょう。

自分だけでなく他者も同じように苦しいはずだ、一緒に手を携えて難局を乗り切ろう、という意思を強く持つリーダーは、首尾一貫した論理性を備えており、誰から見てもついていきたいと思える人物のはずです。

伝える力があること

そして強いリーダーの3つ目の要件は、強い発信力を有していることです。ここでいう発信力は、我が社へ向けた対内的な発信に加え、広く社会へ向けた対外的なメッセージの発信も含みます。

例えば、リーダーが事務方の準備するペーパーを読み上げて説明する光景をよく見かけますが、こうした発信法を、優れたリーダーは好みません。自分の言葉で、多少は不正確でもよいので、その熱い思いを他者へ伝えることができること  これができるリーダーには、部下は安心してついていこうという気になるはずです。

文/上林 憲雄

インソース社外取締役。神戸大学経営学部卒。英国ウォーリック大学大学院ドクタープログラム修了。2005 年神戸大学大学院経営学研究科教授。専攻は人的資源管理、経営組織。日本労務学会会長、日本経営学会理事長を歴任し、現職。

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2020 SUMMER

Vol.02 リーダー渇望

Vol.02は、組織の新たな未来を描いて実現に導く「リーダー」がテーマです。アフターコロナ・ウィズコロナ時代、組織が生き残るためには、環境変化への即応や最適化が急務となっています。特に主体的に判断し、行動できる強いリーダーの存在こそ、危機を突破する力になります。

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2024 SUMMER

Vol.14 使えるアセスメント

vol.14は「アセスメント」がテーマです。 人的資本経営の注目により「人」の価値を引き出すことが重視されるようになりました。 客観的に評価・分析することができるアセスメントを活用することで多様な人材が活躍できる人事戦略に役立てることができます。 本誌では、採用、管理職育成など様々な場面でのアセスメント活用方法についてご紹介しております。

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