研修を語る

渋沢栄一に学ぶ仕事の向き合い方研修を語る

2024/05/21更新

渋沢栄一に学ぶ仕事の向き合い方研修を語る ~志を立て、先の見えない時代を突破する

「資本主義の父」の前向き思考を学ぼう!

―歴史上の人物を取り上げた教育研修は数々ありますが、渋沢栄一氏の思想から学ぶものは、かなりユニークなのではないでしょうか

そうですね。弊社では種の研修を提供しておりますが、その中でも異色の立ち位置になると思います。お陰さまで多くのお申込みをいただいていて、受講者にも好評です。偉人に学ぶシリーズは、ぜひ今後もラインナップを増やしていきたいと思っています。

―渋沢栄一氏と言えば、「日本資本主義の父」と言われる、今日の日本を築いた功労者で、2021年にはNHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公にもなりました。そして、2024年からは1万円札の顔にもなる、いわば時の人です。やはりそのあたりも、題材として着目されたポイントですか

実は話題性にはこだわらず、受講者の皆さんにエネルギーを与えてくれる人物という観点から選びました。弊社では常に最新のニーズに合わせた人材育成研修を開発しています。そのような中で、昨今の日本の閉塞感や疲労感を払拭できるような、元気の出るテーマはないかと探していた際、過去の偉人たちから「仕事の向き合い方」を学んでみてはどうかというアイデアが出てきたのです。

―数ある偉人の中で、栄一氏に白羽の矢が立ったのはどういう理由でしょうか

幕末から戦前にかけて、近代日本の激動期に足跡を残した方々は、強い志や逆境の乗り越え方など、参考にしたいエピソードや言葉が多くあります。その中でも渋沢栄一氏は、生涯に500以上の企業の創立・発展に寄与しました。今でも186社の関連企業があり(※)、現代社会にも大きな影響を及ぼしています。また、非常にエネルギッシュな姿勢で人々を鼓舞する人物でもあり、その考え方を学ぶことで、今の時代に活躍するヒントを得ていただきたいと考えました。

(※)参考:東京商工会議所「渋沢栄一が関わった約500の企業等」https://www.tokyo-cci.or.jp/shibusawa/history/pdf/companies.pdf(最終アクセス:2022/05/27)

歴史の知識ゼロでも、楽しくモチベーションを上げられる

―この研修を受講される方は、主にどのような年代や役職の方が多いですか

年齢や業種、役職などに偏りはあまりなく、幅広い層に支持いただいている傾向が見受けられます。一般的なビジネス研修と異なり、スキルや仕事術を求めて受講されるのではなく、栄一氏の考え方からヒントをつかむ内容ですので、興味のある方であればどなたも得るものがあると思います。

特に、栄一氏が関わった企業の方には、ぜひ受講いただきたいですね。ご自分が勤める会社の創業にまつわる想いを知っていただくだけでも、明日からの心持ちが変わってくるのではないでしょうか。

―では、さまざまな年齢や階層の方が、同じグループでディスカッションするような場面もあるのですね

はい。自分の中にある意見を明確にする作業はもちろん、他者の意見を聞くことは大切です。こんなことを他の人は考えているのかという新鮮な発見がありますし、他者とフィードバックを交換することで、より研修内容の理解も深まります。

―この研修を受講される方々は、どのような背景や理由でお申込みになるのでしょうか

ご所属の会社の教育担当者さまからのお示しでお申込みいただく場合もありますが、個人のご希望でご受講を決められたという方も少なくありません。中には「大河ドラマを見て好きになった」という方や、もともと歴史好きだからという方もおられます。また、他の研修会社にはない独自性の強いプログラムですから、そこに興味を持ってご参加くださるケースも多いです。

―ちなみに、歴史の知識や栄一氏に対する理解は、どれくらいのレベルが求められるでしょうか

全く不要です。この研修は、歴史の勉強ではありません。あくまでも、過去の偉人の歩んだ道から得られるメッセージや考え方を、ワークなどを通じて自分の中で生かせるようにしましょうという内容です。

―それを聞いて安心しました。どうしても歴史や偉人と聞くと、苦手感を持つ方もいらっしゃいますが、教材の項目を見ると、現代ビジネスになじむ内容なので、誰でも理解できると思いました

もちろんテキストの第一章で、栄一氏がどういう人かというのは説明しますが、中心となるのは自分自身の志や方向性に関することです。栄一氏の言葉からは「日本をより豊かにしたい」という真摯な思いが伝わってきますし、聞いていて面白い話が多いので、歴史が苦手な方もご安心ください。

ベースとなるのは著書「論語と算盤(そろばん)」

―この研修を受けた際に得られるメリットやスキルは、どのようなものでしょうか

この研修では、学びをどう自身に反映していくか、それを考えていただくことが核です。自分に向き合うきっかけや、明日からのエネルギーにすることが狙いですので、そういう意味では、得られるものは人それぞれ異なると言えるでしょう。

―モチベーションが上がりそうですよね。栄一氏の人生はまるで小説のようですし、本に記されている言葉も強烈なものが多いと感じました。

そうですね。悩みを抱えていらっしゃる方とか、行き詰まりを感じておられる方とか、仕事をしていれば皆さんいろいろあると思います。栄一氏は幕末から昭和という日本が激変する時代を生き抜いて、正しいことを普段から実践することを大切にしてきました。その中から経験として出てきた言葉ですので、迷っているときには大きな勇気をもらえるのではないかなと思います。

―教材にはさまざまな栄一氏の語録が紹介されていますが、これは著書をベースに構成されているのでしょうか

はい。主に「論語と算盤(そろばん)※」という本から渋沢語録を引用しています。この本は渋沢が経営哲学を語った談話録で、現代語訳もたくさん出ています。幕末の日本において、論語は高位の武士が学ぶ学問だったのですが、渋沢は少年時代に従兄弟の尾高惇忠から学ぶ機会を得て、考え方に強い影響を受けました。

この研修では時代背景なども必要に応じて補足しつつ、その本の内容を学ぶというよりは、その中にあるマインドやメッセージをピックアップしてお伝えしています。最初のワーク「志を立てる」から始まり、最終的にさまざまなその人なりのアウトプットすることで、自分の中にある考えを明確にしていただける流れを作っています。

(※)参考:渋沢栄一『論語と算盤』角川ソフィア文庫 https://www.kadokawa.co.jp/product/200807000125/(最終アクセス:2022/05/27)

栄一氏が大切にした四つの「強い思い」

―「論語と算盤」をベースに構成されたプログラム、各章の題名に力強い言葉が並んでいます。これらも渋沢語録からの抜粋でしょうか

はい、栄一氏が大切にした四つの強い思いを、章のタイトルにしました。第二章「確固たる信念をもつ~志を新たにする」では、高い意欲を持って仕事に取り組むために、まずは志を立てます。

―ワークでも「社会や会社など大きな視点での課題を踏まえ、改めて自分の志を立ててみる」というのがありますね。なかなか現代社会に生きていると「志」ということは意識しないと思うのですが、これはどんなことを行うのですか

栄一氏は、一生貫く志を立てることが肝心だと述べているのですが、現代で言うと、日々の業務に流されて自分の思っていない方向に進んでしまわないよう、生涯をかけて到達したい目標を設定しましょう、という意味です。ワークでは最初に個人で志を考えてもらい、グループで共有した後にフィードバックをし合います。

―各人それぞれの目標があるでしょうから、他人の意見も興味深いですね。受講者からは、どのような志が出るのですか

それこそさまざまなのですが、ある住宅設備系の企業にお勤めの受講者さまからは「災害に強い建材を作りたい」という志が聞かれました。栄一氏の思想に触れると、自分の利益より日本全国のためという大きな視点が芽生える方もいます。この方も、国内の災害が増えているという状況を鑑み、自社の商品を災害予防や復旧のために役立てたいという志を立てられたのだと思います。

―研修の途中でもすでに視点の変化があるとは、すごい影響力ですね。第三章ではどんなことを学ぶのでしょうか

第三章は「日々、真面目に取り組む」がテーマです。真面目にやるのは当たり前のことなのですが、渋沢氏の著書では「どんな仕事でも与えられたら命をかける」というような文言が記されています。これは、現代社会に当てはめると「仕事にこだわりを持て」ということです。主体性を持ち、自ら行動するのが大切だということをお伝えしています。

その後に続く第四章は、「覚悟を決める」です。逆境こそ真価が試されるチャンスであると述べています。どんな人にも逆境は訪れると思いますが、どう乗り越えるかで評価が大きく変わります。ここでは今までに経験した逆境と、乗り越えた経験を共有するというワークに取り組みます。

―そして、第五章が「誠実に努力し続ける」。これもビジネスの基本概念ですね

はい、ここでは「知恵が運命を作る」というメッセージを取り上げています。運命は天から与えられるのではなく自分で切り拓くもの。日々努力して知識を積み上げることの大切さを説くと同時に、「成功も失敗も人生の残りかすのようなもの」という言葉も紹介しています。

―あんな大成功を収めた栄一氏から、そんな言葉が出るのが不思議です

「成功や失敗のごときは、ただ丹精した人の身に残る糟粕(そうはく)のようなものである(※)」という一文なのですが、単純に成功したか失敗したかで人を判断するのは誤りで、そのプロセスに真価があるという考えです。こういう思い切りの良さも含めて、見習いたい部分がたくさんあります。

(※)引用:渋沢栄一『論語と算盤』角川ソフィア文庫p311

ドラマチックな「渋沢語録」から勇気をもらおう

―講義の中にも、はっとするような渋沢語録がたくさん登場するのですね。聞いているだけでも楽しめそうですが、どのあたりが特にメッセージ性が強い部分でしょうか

やはり第二章、最初に志を立てるに当たって「立志の要はよくおのれを知り、身のほどを考え、それに応じて適当なる方針を決定する以外にないのである。誰もよくそのほどを計って進むように心掛くるならば、人生の行路において間違いの起こる筈は万々ないことと信ずる(※)」この一節は、とても重要です。

ここでいったん志を立てると、後半の三章以降ですんなりと中身が入ってくると思います。「志なんて考えたことがない」とおっしゃる方もいらっしゃいますが、その時に思ったことで大丈夫です。まずは大きな視点で物を考えることが大切です。

(※)引用:渋沢栄一『論語と算盤』角川ソフィア文庫p75

―その一文はずしりときますね。第四章にある言葉も、つい失敗を恐れて保守的になりがちな人には、勇気づけられるエールだと感じました。とにかく、渋沢語録はパンチがありますね

信念を持って言い切っている感じが、ドラマチックですよね。中毒性があるというか、聞いているうちにその世界に入り込んでしまう引力があります。そこが魅力なのではないでしょうか。

目標や志を改めて見つめ直すきっかけが生まれる

―受講者からは、どのような感想が寄せられていますか

「志や信念を持って向き合いたい」「他の受講者の前向きな言葉をきけてよかった」というようなお声が聞かれます。日々、漠然と仕事をしている中で、改めて目標は何かと聞かれると困ってしまう方も多いと思います。しかし、何を思って仕事をするかで大きくクオリティが変わってきますので、良い気づきを得ていただけたなら嬉しいです。

―前向きになれるというのは、この研修のキーワードかもしれないですね。受講なさった方が特に興味を持たれる部分があれば教えてください

第四章の「逆境の乗り越え方」は、共感が深い部分だと感じます。自然的逆境と人為的逆境、二つの対比的な逆境に対して栄一氏の考えを紹介しているのですが、自然的逆境に対してはチャンスだと思って懸命に働けと説いています。

そして、人為的逆境に対しては自己反省を促しています。渋沢自身も体制崩壊で帰る場所がなくなったりするなど、何度も逆境を経験して出た言葉なので、厳しい内容ではあるのですが「覚悟を決めてやるしかない」という、まさに第四章のテーマはそのものになりますね。

―例えば近年のコロナ禍は自然的逆境ですので、そういったときはチャンスと思って頑張れということですね。仕事に行き詰っている人はもちろんですが、この研修を通じて普段は意識していない高い視点から、仕事や組織の事業、ひいては日本全体を見つめる良いきっかけになりそうです

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