環境変化が激しい今日、組織を導く変革型リーダーが必要とされている。そのような変革型リーダーを、中長期的な視野で計画的に育成していくための早期選抜制度という人事制度があるが、早期選抜制度を導入するにあたっては周到な準備が必要なのだ。
変革型リーダーの育成 ~マネジメント・経営のコツ
著者:インソースマネジメント研究チーム
1.変革型リーダー育成の必要性が高まってきている!
2.変革型リーダーを育てるためには「実績による納得性」と「実績をあげる機会の公平性」が必要!
3.育成には周到な準備が必要なので、急いではいけない!
- ■求められるリーダー像
- 環境変化が激しい今日、求められるリーダー像は、調整型リーダーから、組織の方向性を示し組織を先導する変革型リーダーへと変わりつつある。それに伴い、自社に求められるリーダー像を明らかにし、中長期的な視野で計画的に育成していく人事制度を構築する必要性が高まってきた。代表的な例として、リーダー候補を早期に選び帝王学を学ばせる、早期選抜制度と呼ばれる人事制度があるが、今回、早期選抜制度を導入するにあたっての注意点を考察する。
- ■早期選抜制度の背景
- 日本企業はこれまで、様々な業務を担当させるなかで、実績を競わせ、選抜していくという仕組みを採ってきた。この競争を勝ち抜いた人材は、会社の仕組みに最も適合した人材といえる。しかし、今日求められているのは会社の仕組みを変革するリーダーであるため、彼らにその変革を期待するのは難しい。よって、従来の仕組みの中で実績を競わすのではなく、早期に選抜されたリーダー候補者に、育成計画に基づいた教育研修の機会を提供し、求められるリーダーを育成する早期選抜制度が生まれたのである。
- ■納得性と公平性
- 人事制度で求められるのは「納得性」「公平性」であり、早期選抜制度もこの要件を満たす必要がある。よって早期選抜制度には、「実績による納得性」と「実績をあげる機会の公平性」が求められる。しかし、近年の新卒採用の抑制の影響で、部署によっては、新人がやる仕事を長年やらされたり、後輩指導のようなリーダーシップ発揮の場を与えられないという状況があるようで、必ずしも公正に実績をあげる機会が与えられてはいないようだ。
- ■敗者復活のチャンスを
- 選抜対象から漏れた人材にも十分な配慮が必要だ。現場で変革を実行するのは選から漏れた人材であり、彼らがいないと組織の変革や運営はできないのだ。よって、選抜から漏れたとしても、それがその人のキャリアの終点とならないように配慮し、実績をあげれば道が開ける人事制度を残していく必要がある。
- ■周到な準備の上での導入を
- 早期選抜制度を導入するには、選抜時点よりも前の段階で機会が公平に提供されることが担保されている必要がある。それがないと早期選抜制度は不満の対象となる。このように早期選抜制度は周到な準備のもと導入に踏み切るべきで、拙速な導入は厳に慎むべきである。