今回は最近の人事マネジメントにおけるトピックスのダイジェスト・バージョンをお送りします。昨今の日本企業の人事担当者が考えるべき課題、求められる能力や資質とはどういったものなのでしょうか。
人事担当者の今日的課題とその基礎 ―人間力を鍛える―
著者:インソースマネジメント研究チーム
1.これからの人事担当者に求められるのは「バランス感覚」と「人間力」である。
2.総合的な人間力を鍛えるには、経営と無関係な勉強こそ重要である。
- ■企業の社会的責任
- 1つは企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)への対応です。コンプライアンスという用語も最近特によく聞かれるようになりました。ここ十数年で,CSRへの社会的な視線も厳しくなり,人事担当者もCSRを意識する必要性が高まってきています。対外的なCSRだけではなく,従業員への公正な処遇やトラブルへの適切な対応など,対内的なCSRも必要です。
- ただし,そればかりに気をとられていると,本業でリスクを敢えてとろうとする姿勢がなくなってしまい,「法令だけ守っていればよい」と考える集団になってしまうこともあります。いわば,バランス感覚が求められるのです。
- ■グローバリゼーションへの対応
- 2つめがグローバリゼーションへの対応です。他国のやり方をそのまま真似て導入するのではなく、日本の分野,社会,風土に合うようにアレンジする必要があります。働きやすさを考慮するとともに,企業の生産性・業績とのマッチングをはからなければなりません。自分の頭できっちり考えた上で対応を考えないといけないということで,ここでもバランス感覚が重要になってきます。
- ■ダイバーシティへの対応
- 3つめが,ダイバーシティ(多様化)への対応です。このコーナーで以前に触れましたが,女性の社会進出や非正規社員の増加など,働く人々の属性や働き方が多様になるとともに,在宅勤務や裁量労働など,働く場所や方法も実に多様になってきています。それに伴い,人事制度も多様で選択の幅があるものを作っていかないといけません。
- ■人事担当者に求められる人間力
- では,それらの課題をふまえた上で,これからの人事担当者に求められる能力や資質はどういった点でしょうか。それは,俗な言葉ですが「人間力」が必要ということです。
- 企業は生産性を高め,利益を出さないといけません。一方,人事担当者は生身の人間に向かい,時にはつらい決断を下さないといけない立場です。マネジメントされる側の人間も,感情や思考力を持っています。企業の経済性と社会性(人間性)という一見相反するものを統合しないといけないのが人事担当者の仕事なのです。それを理解した上で,双方の視点を持ち,社会的な使命感を持ちつつ企業経営に携わらないといけないのです。
- ■経営と無関係な勉強こそ重要
- また,意外に思われるかもしれませんが,経営や会計の勉強だけではなく,社会的な常識や,経営とは無関係に思われるような文学や歴史,言語など,いろいろな素養や知識も備えていないといけません。優れたマネジャーや経営者になっておられる方々は,教養を大切にされて大学時代を過ごしてこられた方が多いようです。人事担当者の皆さんには,こうした課題を認識し,幅広い分野の学習を通じて総合的な人間力を鍛えていただきたいと思っています。