日米で考えられるいわゆる“偉い人”の違いは、どこから生まれているのでしょうか。
"偉い人"はどんな人か ―日米で異なる「仕事と人の関係」―
著者:インソースマネジメント研究チーム
1.日本企業の採用の仕組みは「人主義」が主流であったのに対し、アメリカ企業の採用システムは「仕事主義」である。
2.日本では「博識な人」が尊敬を集めていたが、最近は、アメリカのように「その道のプロフェショナル」が“偉い人”という考えに変わりつつある。
- ■薄い職務意識
- 日本企業に勤めるビジネスパーソンの方で、自分の仕事内容が何であるか明確に言える人は少ないはずです。日本企業では「職務」(=従業員個々人に与えられた業務)という意識が低く、「あなたの職務はこれです」と明確に伝えられないことがほとんどだからです。こうした仕事のあり方は、職務(job)という意識が明確に定義されているアメリカ企業とは、極めて対照的です。
- ■伝統的な日本企業の採用基準
- 多くの伝統的な日本企業では、新人を採用する際、担当業務が入社前に明確になっていません。仕事に適任かどうかよりも、その会社の価値観や理念、組織文化や風土と合致するかどうかが、採用時に重要な判断基準となっています(少なくとも、90年代頃まではそうでした)。
- したがって、仕事経験が無く真っさらな人材を採用し、入社してから社内で育てていけばよいという発想で、採用活動が行われてきました。だからこそ“偏差値”の高い有名大学の新規学卒者が重宝されてきたのです。人が先にあり、その人を仕事に合うように育成していく、「人主義」の考え方といえます。
- ■アメリカ企業の採用基準
- これに対し、典型的なアメリカ企業では個々人の職務は極めて厳格に定められており、欠員が生じた職務に、最も合致する適切な人材を外部から採用するという発想が大前提となります。
- 「○○という職務をするので、△△や□□のような技能や能力を備えている人」という応募をかけ、選考時には保有スキルや知識、これまでの経験や業績が重視されることになります。仕事が先にあってその仕事に合った人を選ぶ「仕事主義」の採用システムであるといえます。
- ■異動の仕組みも日米で違いが
- 人主義を旨とする日本企業では、会社幹部に育っていくためにいろいろな部署を体験させるのが一般的なやり方です。人材育成は「ジェネラリスト志向」です。
- 一方アメリカ企業では、1つのメインとなる職能(製造なら製造、営業なら営業)のみか、もう1つサブとなる職能のみを経験して経営幹部になっていくケースが大半で、スペシャリスト志向と呼ばれます。
- ■社会的に“偉い人”の定義が異なる!
- 興味深いのは、日米間で「どんな人が偉いか」の考え方が大きく異なっている点です。即ち、日本では「いろいろなことを知っている博識な人」が社会的に偉く、尊敬を集める対象となりがちです。これに対しアメリカでは、「たとえ狭い範囲であっても1つのことを徹底して極めている人」、「その道のプロフェショナル」が、社会から尊敬を集める“偉い人”と受け取られているのです。
- ただ最近、日本でも「プロフェショナルは偉い」という考え方へと変わりつつある萌芽がいろいろなところにみられます。