次に成果主義システム導入についての話をいたしますが、そもそも「成果主義」は、アメリカ発祥の概念であって、それをどのように日本に導入すればうまく活用できるのかという内容が、これまでよく議論されてきました。
ここでいくつかのケースをご紹介したいと思います。
まずはある大手の食品会社さんのケースです。人事制度改革の一環として、成果主義業績連動型の人事制度を導入し、個人業績の評価で、年功序列を改めました。そして、課長クラスの年収で300万円の格差が付きました。ところがどこにでもある話なのですが、社員のやる気は一向に高まらず、業績の回復もなされず、むしろ人事考課に対する不満が顕著になりました。その会社の営業部隊は、以前は和気藹々としていましたが、成果主義の導入後は、個人プレーが目立つようになりました。研究開発の部門も、地道なものよりもすぐに結果の出る即効性のある安易なテーマを課題として採用することが多くなりました。結局、この食品会社の社員からは、成果主義の導入後、「単にノルマの管理が厳しくなっただけ」、「年功給の時代の方が安心して働けた」といった声が多数あがるようになりました。大学の研究でも、最近は結果がすぐにでるテーマに比重が置かれる傾向がありますが、こういうネガティブなケースが成果主義を導入した場合に見られます。
成果主義を語る上で、キーワードは3つあると言われています。
これらの3つのキーワードは、セットで語られることが多いのですが、本当にこれが正しいのか考えてみたいと思います。
まずは「業績連動型」の昇給・賞与ですが、成果主義を導入した当初、業績と言うと多くの場合は短期的な営業成績や財務数値を指すことが非常に多く見受けられました。
従来の職能資格制度の下でも業績考課という形での成果による評価は存在しましたが、特に導入当初は、「成果主義」というと、何か難解な計算式を持ち出して、無理やりそこに数字を放り込み、その出された数値で判断することだと考えられていた場合もあるようです。
その反省から、例えば「人材育成型成果主義」ということが言われ始めました。業績を、短期的なものだけでなく、もっと長い目でかつ人を育てるという観点から考え直すという考え方です。