企業経営において、「強み」を活かして経営すべきか,それとも「弱み」を克服すべきか,どちらを優先的に考えるべきかは難しい問題です。今回は、この難問を解くためのヒントを考察します。
優先順位の付け方 ~経営・マネジメントのコツ
著者:インソースマネジメント研究チーム
- 1.経営戦略において「強みを活かす」か「弱みを克服する」かの優先順位づけが重要
- 2.優先順位を考えるヒントは、仕事のプロセスに注目すること
- 3.プロセスには連続型と独立型があり、それにより優先順位は変化する
- ■優先順位の付け方
- 最近、企業経営においてよく用いられる戦略ツールに、SWOT分析という手法があります。自社のS(strength、強み)、W(weakness、弱み)、 O(opportunity、機会)、T(threat、脅威)を列挙し、社として対応していく指針を分析するためのツールです。SWOT分析の結果、ひとまず自社の強みや弱みがわかったとします。しかし、自社の「強み」を活かすか、「弱み」を克服するか、優先順位をつけるのは難しい問題です。以下で、この難問を解くためのヒントを考えてみることにします。
- ■仕事のプロセスに注目する
- この問題を解く重要な鍵の1つは、製品やサービスなどのアウトプットが産出されるプロセスです。生産の方式が連続生産型か、独立生産型かという、「仕事のプロセス」に着目します。連続生産型の場合、他の箇所がどんなに優れていても、一箇所にエラーがあるだけで、その組織全体のアウトプットが全く無くなってしまいます。したがって、連続的に仕事のプロセスが設計されているような場合には、途中のエラーを何としてでも取り除く必要があります。つまり、「弱みの克服」が戦略として優先されるべきなのです。
- ■強みを活かせる条件
- 逆に、仕事の設計が連続的プロセスでなされているのではなく、各部署の独立度がそれなりに高い場合を考えてみましょう。こうした相互に独立性の高い仕事の流れでデザインされているような会社だと、「弱みの克服」は最初にとるべき戦略ではなく、むしろ他の部署より業績を上げられる部署の戦力を強化するような「強みを活かす」戦略を優先すべきです。
- ■掛け算の関係か、足し算の関係か
- 上記の例は数式を使って表現できます。連続生産の場合、組織全体の生産性は、各部署での生産性の"掛け算"で表されます。それに対し、独立生産の場合には、組織全体の生産性は、各部署の"足し算"で表現できます。掛け算は、1つでもゼロが間に交じっていると全体がゼロになってしまいますが、足し算ではたとえ間にゼロが入っていても全体はゼロになりません。1つ大きな数値が含まれていれば、全体の数値も大きくなります。ご自身の職場の「仕事のプロセス」をもとに、いずれの戦略をとるべきかの参考にしていただければと思います。