今回から数回は、戦略と関係の深い人事マネジメントのあり方、とりわけ人事マネジメントの発想法の変化について考えてみることにします。人のマネジメントの呼び方は,これまで我が国では長らく人事管理や労務管理と称されてきましたが、昨今では「人的資源管理」という用語が使われ出し、その意味も大きく変わってきたようです。
人事マネジメント(人的資源管理への転換)~マネジメント・経営のコツ
著者:インソースマネジメント研究チーム
1.近年、人事マネジメントは「人事労務管理」から「人的資源管理」へと転換している!
2.「人的資源管理」に転換したことで、人事マネジメントは企業の経営戦略と大きくリンクするようになった
3.その結果、人事部は会社の牽引役として能動的・主体的に動くことが求められるようになった
- ■人事労務から人的資源へ
- 人のマネジメントの呼び方は、これまで我が国では長らく人事労務管理と称されてきました。この言葉に代え、昨今では「人的資源管理」という用語が使われ出し、実務界でも学界でも受け容れられるようになっています。
- ■人事から人材・人財へ
- 従来、企業の現場では、人のマネジメントを担当する部署の呼称は殆ど「人事部」でしたが、90年代以降、「人材部」「人財部」など多様な名称が使われるようになりました。大学の授業科目名でも、「人のマネジメント」領域の授業科目の名称が、経営労働論から人的資源管理論へと変更され始めています。科目名が変わった途端、受講希望者が急増した、という話も聞きますので、それだけ、若い人たちが受け取る印象は異なるようです。
- ■明るく楽しい仕事?
- 受講生に尋ねてみたところ、労働や労務といった「労」の字には、つらくて暗い仕事というイメージがあるが、人的資源には、明るく楽しい働き方というイメージがある、とのことです。では、人事労務から人的資源に名前が変化することで、実際、仕事内容は「明るく」なっているのでしょうか?
- ■戦略と人事の強い繋がり
- 人事労務管理が人的資源管理になったことで変化した点の1つに、人事マネジメントが企業の経営戦略と大きくリンクするようになったということがあります。人的資源管理パラダイムの下では、トップの戦略計画が策定される際に、中長期にわたる人員の採用・削減計画など、人事関連のイシューとリンクさせながら計画が立てられることが必須となったのです。
- ■後追い的な業務から主体的な業務へ
- このことは、人的資源管理が、能動的・主体的な戦略的管理活動の中心にくるべきマネジメントとして位置づけられるようになったことを意味しています。人事労務管理の時代においては、従業員の給与計算等の定常業務や、労使紛争が発生した場合の紛争処理のような、何か問題が発生した際に対処するような受け身的な活動をする部署が人事部であると考えられていたのです。
- ■全社の牽引役としての人事部
- 人事部は、後追い的な火消し活動を超えて能動的・主体的に動かなければならないようになってきています。今日では、企業の経営戦略における人事関連のトピックスが占める比重が大きくなり、いわば人事部が会社を引っ張るようになってきたのです。