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ENERGY vol.13(2024年春号)掲載

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主体的学習を促す3つのポイント~人事担当者から見たリスキリング

人事担当者にとって悩ましい「リスキリング」の位置付け

企業の人事担当者にとって、昨今のリスキリング推進の流れは、単なる「人材育成施策のトレンド」とは異なる、悩ましい問題を包含したものでしょう。もともとは、今持っているスキルだけでは、社内での活躍の場が限られてしまう人材に対し、新たなスキルを身に付け、自社の成長分野で再び活躍してもらおうというのが施策の狙いでした。
しかしそこに、人材の流動性を高め、企業の枠を越えてより生産性の高いセグメントにリスキルされた人材をシフトさせていこう、という話が加わってくると、企業の人事担当者としては諸手を挙げて推進するわけにはいかない、といった複雑な気持ちになるのではないでしょうか。

リスキリングのジレンマ~メリットを測りかねる企業と戸惑う個人

雇用の安定と引き換えに組織が求める職務で働いてもらう日本型雇用の慣行に対し、「キャリア自律」と「個人主導のリスキリング」の流れは、企業と従業員の関係を大きく変化させるものとなります。これまで、「囲い込む」ことによって人材を確保してきた企業にとって、人材の流動化が自社にとってプラスに働くのかどうかわからない。一方で、これまで自身のキャリアを企業に託してきた従業員にとっても、突然の「自律勧告」に戸惑っている。そんなところが実態なのかもしれません。

表:リスキリングに対する企業のジレンマ

激動の時代には従業員の主体的なスキルアップが不可欠

変化の激しい現代では、次々と新たな職務が生まれ、求められる要件もめまぐるしく変化します。そのため、人材を職場でじっくり育成するスピード感では、必要な人材の確保が追い付かなくなります。従業員が希望する職務で働くために、主体的にスキルアップし、求められるスキルを身に付けて新たな職務に就いてもらえるならば、企業としてもそれに越したことはないでしょう。しかし、企業にとっても従業員にとってもハッピーな関係を実現するためには、ある三つの要件を満たす必要があります。

「キャリア自律」が成功する 三つの要件

まず一つ目は、職務ごとに求められるスキルセットが見える化され、広く開示されていること、二つ目は、それらのスキルを習得するための教育機会が提供されていること、三つ目は、人材のアサインメントが硬直的でなくスキルが活かされることです。これらの要件が整うことで、「自律」した従業員が「主体的」にスキルを身につけながら、組織の成長分野で「即戦力」として活躍することができるのです。

求められるスキルの可視化~①スキルマップの作成

ジョブ型雇用を採用している組織では、採用時に職務ごとの「ジョブディスクリプション(職務記述書)」に、必要なスキルを明記します。必要なスキルを明文化することには様々なメリットがあります。これをあらゆる組織で、職務ごとに必要なスキルを一覧化し、その職務に就く者に向けた教育体系を構築すれば、それをベースに人材育成計画が立てやすくなります。また、求められるスキルセットを従業員が知ることで、リスキリングの指針とすることができます。(図1参照)

図1:ある職務で求められるスキルを3階層に分けてマップ化したもののイメージ

●「ワークショップを活用したスキルマップの共同制作」の活用~安価にスキルマップを作る

スキルマップには、人材教育などにおいて様々な使い道が考えられますが、作成に手間がかかり、まるまる外部コンサルに委託すると、かなりの費用がかかります。そこで、お勧めしているのが、「ワークショップを活用したスキルマップの共同制作」です。
職務の実態を知る社内メンバーにより具体的なスキルを洗い出し、それをインソースから派遣されたファシリテーターが整理し、一覧にまとめます。このやり方により、ヒアリングベースで作成する時と比べ外部の投入工数を3分の1に抑えることができます。

●「知識・技能」「汎用スキル」「マインド」にスキルを分ける

また、インソースでは、各職務で求められるスキルを「知識・技能」「汎用スキル」「マインド」の3カテゴリに分けて整理します。
一つ目の「知識・技能」とは、専門知識や技術的能力のことで、例えば経理部門における「会計知識」や、システム開発部門における「プログラミングスキル」などがあたります。
二つ目の「汎用スキル」とは、職務を問わず広く活用できるスキルです。例えば、「コミュニケーション能力」や「問題解決力」が挙げられ、それらを統合したものである「マネジメント能力」などもこれにあたります。
三つ目の「マインド」は、職務にあたる上での意識や考え方のことで、「CSマインド」や「チャレンジ精神」といったものが挙げられます。

スキルの習得方法を示す~②教育体系の構築

職務に求められるスキルを一覧化できたら、次にスキルの習得方法を示します。もちろん、スキルマップを見るだけでも、自分が希望する職務に就くために必要なスキルが分かるため、自己研鑽を促す効果はあります。
さらに、これをベースにして教育体系を構築し、自社で実施する研修企画や、手挙げ式のセミナープログラムの企画、eラーニング教材の選定などに活かしていくことで、職務内容に直結したスキルの習得機会を提供することができるようになります(図2参照)。

図2:スキルマップをベースに教育体系化したもののイメージ

●スキル別の効果的な教育提供方法

「知識・技能」の習得は、担当する業務によって習得したい分野が異なるため、手挙げ式のセミナーやeラーニングの受講が適しており、リスキリングプログラムとしても展開しやすいといえます。
「汎用スキル」についても、自分の得意不得意に応じて選択できる手挙げ式セミナーの形式は有効だと考えますが、その一方で、必ず身につけさせたい汎用スキルというものもあります。そのため、それらについては、階層別研修の中に組み込んで提供することも有効です。
「マインド」については、役割や立場の変更のタイミングと併せて提供するのが効果的であり、昇格タイミングでの階層別研修に組み込むとよいでしょう。

求められる要件とのギャップの認識~③アセスメントの実施

希望する職務に就くことを目指して主体的にリスキリングに励んでもらうためには、まず、現状のスキルレベルを客観的に把握し、求められるレベルとのギャップを自己認識してもらう必要があります。そこで登場するのが「アセスメント」です。

●2つのアセスメント「アンケート」と「テスト」

アセスメントには、アンケートを通じて現状のスキルレベルを自己評価させるものと、テストを通じて客観的にスキルレベルを判定するものがあります。(図3参照)
いずれもそのプログラムを設計する際のベースとなるのが、職務ごとに求められるスキルを一覧化した「スキルマップ」です。アセスメントを通じて自分の足りない要素を知ることができれば、それを補うためのリスキリングプログラムの選定ができます。
また、応募者に職務別に設計されたアセスメントを受けてもらい、その結果を踏まえて採否を判断する一助とするなど、人材を公募する側にとっても有効なツールです。
今後、「キャリア自律」と「主体的学習」を推進する上で、アセスメントは欠かせないものとなってくるでしょう。

図3:リスキリングで活用できるアセスメントサービス

文/大畑 芳雄

株式会社インソース執行役員、グループコンテンツ開発部部長。大阪大学経済学部経済学科卒。大手百貨店に勤務後、大手芸能プロダクションの子会社にて商品企画に携わる。その後、ビジネスプロセスの改善支援を専門とするコンサルティング会社を経て、2010年インソース入社。2019年から現職。

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Vol.13 リスキリングの今

vol.13は「リスキング」がテーマです。ビジネスパーソンへの教育で今注目されている「リスキング」。激動の時代に対応するためにも、組織が理想とするリスキングを確立させていくことが求められます。 本誌では、組織、個人、人事・研修担当それぞれがリスキングをどのように捉えているのか、アンケート調査などから浮き彫りにしていきます。

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Vol.15 日本最大級のLMS

Vol.15は、eラーニングシステム/LMSの「Leaf」がテーマです。 当社最新のLMSである「Leaf Lightning」に焦点を当て、なぜこのシステムが日本企業の教育に適しているのかを、 導入企業のインタビューと、約10年前に描いた、当システム開発の背景を基にお伝えします。 LMSの活用事例も多数紹介し、教育のDX化を行うための情報が詰め込まれています。

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