昨今経営実践上のキーワードとなっている「見える化」の深刻な問題点とは何でしょうか。
「見える化」で見えなくなるもの(1)
著者:インソースマネジメント研究チーム
1.「見える化」によってビジネスの問題点や改善策を知ることができる一方、現場に心理的プレッシャーをかける、経営に有用な数値化が難しいといった課題もある。
2.深刻なのは、「見える化」したことに満足してしまい、本当に重要なポイントを数値化・指標化できたのかどうかを考えなくなってしまうという問題である。
- ■見える化ブーム
- ビジネスの現場において、「見える化」が経営実践上のキーワードとなってきています。きっちりとした定義づけがなされているわけではありませんが、今まで可視化されていなかった部分を、誰の目にもまさに"見える"よう情報を組織メンバーで共有すること、という意味合いで使われることが多いようです。
- ■図表やグラフを用いて数値化
- 「見える化」を進めるうえでよく用いられる手段が、仕事上のステップやプロセスを、図や表、グラフなどを用いて数値化することです。第三者から見えるように、そしてマネージャーが客観的な評価を下すことができるようになることが期待されています。
- こうした結果、経営のパフォーマンスが上がった事例も多く紹介されています。
- ■バランスト・スコア・カード
- バランスト・スコア・カードはまさにビジネスにおける「見える化」の典型例でしょう。従来の業績管理の欠点を補い、非財務指標をも含めた全体を「指標化」しようとするものです。
- ■「見える化」の魅力
- 「見える化」が魅力的なのは、数値や指標という、誰の目にも明らかな尺度を用いることによって、ビジネスの問題がどこにあり、どのように改善しておいけばよいかを知ることができるためです。
- ■「見える化」の限界
- 一方「見える化」の弱点として、現場に心理的プレッシャーをかける点、実際には経営に有用な数値化が難しい点などが指摘されています。
- ■さらに深刻な問題
- 「見える化」には、より深刻な問題もはらんでいます。「見える化」したことに満足してしまい、それが本当に重要なポイントを数値化・指標化できたのかどうか考えなくなってしまう問題です。またその尺度を完全なものと誤解し、その尺度上の数値のみを上げるような発想になってしまいかねないという問題もあります。
- 本来、それ以外にも様々な側面があるはずなのに、それが皮肉にも「見える化」によって「見えなく」なってしまうということです。
- ■日常でも類似の問題が
- 日常においても、私たちはこの「見える化」の問題とよく似た過ちを犯してしまいがちです。
- 内田樹氏は、学校のテストの成績評価やスポーツ競技などにも、こうした発想法が根付いてしまっていると警鐘を鳴らしています。ご関心がおありの向きは、内田樹『修業論』(光文社新書 2013年)をご一読ください。
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