ネッツトヨタ南国の社員アンケートを通じて判明した、人材育成のヒントとなる事実とは?
成功する人材育成へ向けて(3)
著者:インソースマネジメント研究チーム
1.成功する人材育成に向けてのポイントは、売上げや営業成績、高収入など数値で示される「目標」よりも、仕事を通じた自己成長や信頼、社会への役立ちといった「目的」意識の強い人材を採用し、育成することである。
2.人材の育成にあたっては、どの程度の"質"を追求し"量"(数値)とのバランスをとるべきかに留意することで、これまでは見えていなかった新しい人材育成の理想像や方法,今後へ向けたヒントが見えてくる。
- ■高次欲求から先に
- 前回に引き続き,ネッツトヨタ南国の社員たちによる気づきのユニークな点についてです。
- ◆前回のお話はこちら◆
- マズローの欲求5段階説では,人間の持つ欲求は,個人の精神的発達に伴って,低次欲求から高次欲求へと段階的に進化していくと主張していました。社員たちは,この理論とは対照的に,高次欲求の方から先に自分たち自身で改善していく努力をしなければならない,ということに気づいたのです。
- ■理論を鵜呑みにしない
- 社員全員がこの気づきを共有して以降,経営者への要望は減っていったといいます。「もっと給料を上げて欲しい」「もっと休みを増やして欲しい」といった低次欲求に基づく要請は徐々に減っていき,自分たち自身でまずは頑張ってみよう,という方向へと変化を遂げたのです。
- マズローの理論を鵜呑みにせず,自分たち自身で話し合い,考えることを通じて,新たな"気づき"や"発見"を見いだしているところが,ユニークな点であるといえるでしょう。
- ■目標と目的は異なる!
- また,このアンケートを通じて別の興味深い事実も判明しています。 高次欲求を多くもっている社員らは,売上げ目標や営業成績といった数値目標をそれほど重視していないということです。
- 彼(女)らは,むしろ仕事を通じて自分を成長させたり,周りからの信頼を得たり,社会や人々の役に立ったりといった点(「目的」)を重視しており,し かもそうした社員が結果的に好成績を収めていることがわかったのです。
- ネッツトヨタ南国では,売上げや営業成績,高収入など数値で示される「目標」と,仕事を通じた自己成長や信頼,社会への役立ちといった「目的」を明確に区別し,できるだけ「目的」意識の強い人材を採用し,育成するように努めています。
- ■量より質が重要
- このことは,数字で明確に表される量のみに傾注していてはダメで,質の側面にも留意しながら日々の仕事に従事することの重要性が示唆されています。 前回までとの関連で述べれば,人材育成は「見える化」(数値化)すればうまくいくというほど単純なものではない,ということが言えるかもしれません。
- ◆くわしくは「「見える化」で見えなくなるもの」をご覧ください◆
- ■人的資源としての人材
- ただ,だからといって,ビジネスの世界で"数字"を全て無視していたのでは,事業が成り立たないのはいうまでもありません。たとえ人材といえども,ビジ ネスに供せられる人的資源である以上,数字によって評価されるのはある意味当然で,致し方のないことです。
- ■質と量のバランスが最も重要!
- わたしの知る限り,よく"できる"ビジネスパーソンの方々は,このあたりの「バランス感覚」が絶妙に優れています。ネッツトヨタ南国の横田社長も, 成果主義を完全否定しているわけではありません。 1つの数値指標のみで社員同士を競わせるのではなく,複数の指標で競わせようとしているところにポイントがあるのです。
- 人材の育成にあたって,どの程度の"質"を追求し,"量"(数値)とのバランスをとるべきか・・・・・・この点に留意するだけで,これまでは見えていなかった 新しい人材育成の理想像や方法,今後へ向けたヒントが見えてくると思います。