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女性やシニア、障がいのある方、外国人等、様々な価値観や事情を持っている人材が活躍するには、先入観や思い込みを取り払って、個人それぞれの特性に合わせた業務分担を行うことが肝要です。
女性やシニア、障がいのある方や外国人と、自分と異なる価値観を持つメンバーと共に働くとなれば、一般的に流布している概念がそのメンバーにも当てはまると、つい思ってしまいがちです。そのことに気づくか気づかないかは別として、周囲の人々は良かれと思い、その概念に則って様々な気遣いをします。しかしその気遣いが、逆に本人の意欲を奪ってしまうことがあります。しかも、本人でさえも周囲と同じ思い込みを持っていて、自分で自分の可能性に限界を作ってしまっている場合もあります。
例①「女性は責任ある仕事をするものではない」
例②「仕事を続けるとしても、結婚して子供を産むのが女の一番の幸せ」
例③「退職再雇用といっても、これまでの経験や立場がある。若手は目上に指
示するべきではない」
例④「障がいのある方ができる仕事は、とても少ない」
まずは、周りと自分が必ずしも同じ価値観を持つ必要がないことを、組織で働く全員が理解し、個人を個人として受け止める意識・風土を作ることが必要です。
自分と違う価値観を持つメンバーと一緒に働くことは、簡単ではありません。例えば、障がいを持つメンバーの指導担当者が、相手が何を考えているのかが分からず、悩んでメンタルを悪化させてしまうことは、実際によく起きる問題です。
そういった問題を避けるためにも、相手が何を考えていて、何にやりがいを感じ、何を不快に思うのかを、遠慮することなく相手に聞いてしまいましょう。多様なメンバーと共に働くことは、「忍耐」ではありません。一緒に働くことで周囲の人間が辛くなってしまう状況は、"真のダイバーシティ"とは言えません。
■取り組み例:「自分トリセツ」の記入
女性、シニア、障がいのある方や外国人など、多様な人材と共に働くにあたり、まず最初に受け入れる側が、入ってこられる方への質問を事前に用意しておきます。それをご本人に「自分の取り扱い説明書」と題して記入していただきます。聞きにくいことをあえて初めに箇条書きで質問してしまう方法です。これにより、不要な遠慮や誤解を生じずに、仕事を進めることができます。その際、受け入れる側も同様に「自分トリセツ」を作成した方が、より、お互いの自己開示につながり、事情を分かり合った上で働き始められるので、お互いに自分の常識を押しつけたり、相手の行動にストレスを感じたりすることがなくなります。
多様な人材が活躍できる組織にするカギは、「業務の視覚化と細分化」です。様々な事情から、一連の業務プロセスを完遂することができないケースもあります。でも、「この一部分なら誰よりも上手にできる」といった、「得意分野」は誰にでもあります。その「得意分野」を見出すことこそが、人事や管理職の役割と言えるでしょう。
また、業務を「視覚化」し、「細分化」することは、日常の業務フローの見直しにつながり、業務改善にもつながります。