2023年3月22日
企業のパフォーマンス向上のための取り組みであるウェルビーイング経営をご存知でしょうか。従業員の心身のケアをおこなう健康経営という言葉がありますが、ウェルビーイング経営ではさらに高い次元で従業員や取引先の満足度向上を目指すため、より深い視点での取り組みとして注目されています。この記事では、ウェルビーイング経営の概要や成功へのポイントについて解説します。
ウェルビーイングとは、身体的・精神的な健康と社会的な健康が満たされている状態のことを指しています。
会社経営に置き換えていうと、自社の財務体質の改善や業績の向上を目指すのはもちろんのこと、従業員とその家族の幸せや取引先の幸せなど、自社のビジネスに関わるすべての人の幸せを実現させるための経営方法と捉えることができます。
ウェルビーイングには主体的と客観的の2種類があり、主観的ウェルビーイングは従業員個人が感じる満足度、客観的ウェルビーイングは数値などで客観的に評価できる満足度とされ、近年の企業経営では主観的な満足度の向上がより重要視されるようになりました。
ウェルビーイング経営が注目される背景としては、競争力の激化や人材不足が顕著になっていることが挙げられます。企業にとって厳しい環境の中、事業維持のために生産性を上げていかなければなりません。
一つの対策として、従業員が身体的にも精神的にも健康であることを目指した健康経営がありますが、従業員が病気をしないだけでは、生産性の向上には足りません。
従業員が主体的にビジネスに参画できるよう、個人に目を向けた満足度の向上が求められるようになりました。個人のパフォーマンスの向上こそが、業績の向上に繋がると考えられるからです。
特に主観的ウェルビーイングの重要性が高まっており、働きやすい労働環境の構築が企業に求められています。
ウェルビーイング経営のメリットは、従業員の満足度向上とその結果として得られるパフォーマンスの向上です。
ウェルビーイング経営のための対策として、労働環境の改善や従業員満足度調査などがありますが、働き方改革の実施や職場の人間関係が改善されれば、社員のモチベーションの向上につながります。
働きやすい環境が整えば、主体的に仕事に取り組むことができるため、社員一人ひとりのパフォーマンスも改善されるはずです。
従業員の主体的ウェルビーイングが満たされれば、仕事へのやりがいを感じられ、熱意を持って仕事に取り組む社員を増やすことができます。
主体性をもって仕事に没頭できる社員が増えれば、事業の生産性が向上しますし、生産力が高まれば企業としての価値の向上にもつながります。企業価値が高まれば対外的な信頼を獲得することができるため、さらなる発展が期待できることでしょう。
従業員の仕事への取り組みが改善され、企業価値が向上すれば、社内外から高い評価を受けるようになります。就職活動や転職活動の際は、社外の評価はもちろん従業員の評価もチェックできる時代です。
社内外から高い評価を獲得できれば、応募の数も自然と増えていきます。採用率は向上し、優秀な人材を確保しやすくなります。
従業員のウェルビーイングを満たすための取り組みは、離職率の低下にもつながります。なぜなら、従業員の退職理由は人間関係や労働環境によるものが多いからです。
ウェルビーイング経営は人間関係の改善や労働環境の向上を目指す取り組みであるため、従業員が長く働きやすい環境を構築することができます。
ウェルビーイング経営を成功させるためには、人がポジティブになる心理について理解し、項目ごとに対策をする必要があります。
幸福度や満足度をはかる指標の一つに「PERMAモデル」があります。PERMAモデルでは、ポジティブな心理を5つの要素に分類しており、多面的にウェルビーイングの達成を目指すことができるフレームワークとして利用されます。
5つの項目の満足度を高めることが、ウェルビーイング経営の実践につながります。
1つ目のPositive Emotionは、幸福度の高まりを表情などから判断できる分かりやすい項目です。ウェルビーイングが満たされていれば、楽しいや嬉しい、感動や感謝といったポジティブな感情が自然と表情や行動にあらわれます。Positive Emotionを引き出すためには、従業員の感情にフォーカスした対策を練る必要があります。
Engagementは、仕事への没頭や熱中を示す項目です。仕事への集中力を高めることができれば、作業が効率的に進み、生産性の向上に繋がります。Engagementは行動から判断できる幸福度の高さを示しており、仕事へのやりがいを感じている状態でもあります。対策としては、従業員の適性に合った仕事を任せることが重要になります。
Relationshipは、良好な人間関係を示す項目です。事業は組織で運営されるため、ポジティブな人間関係の構築が欠かせません。ただし、人間関係は離職理由としても上位に位置する項目でもあるため、企業としては慎重に対策を検討する必要があります。
Meaningは、生きる意味や働く意味を示す項目です。人はネガティブになると自分の行動や活動の意味を見失いがちになりますが、ウェルビーイングを高めることができれば、人生の意義を見出し、社会貢献にも目を向けることができ、主体的な行動ができるようになります。
Accomplishmentは、課題などを達成することによって得られる幸福度のことを指しています。資格取得や昇進、安定した金銭報酬を獲得することで、従業員の幸福度を高めることができます。従業員は自分が会社の中で成長できているのか不安に感じている部分があるため、成長を実感できる分かりやすい制度の検討もおすすめです。
ウェルビーイング経営は、事業運営の本来の目的である収益の向上のために、従業員や取引先の幸福度を高めることを重視した対策になります。
短期的な目線でみると、労働環境の整備などで、思うように収益を伸ばせない恐れもあります。
ただし、ウェルビーイング経営の趣旨としては、事業に変わる人々の幸福度を上げ、今まで以上に仕事に取り組んでもらい、最終的なゴールとして収益や企業価値の向上を目指します。中・長期的な目線での対策が求められます。
ウェルビーイング経営は、会社・従業員・取引先の三方良しを目指すための手法です。精神的な部分は改善の効果が見えにくい傾向がありますが、本記事で解説した成功のポイントをぜひ参考にしてみてください。
配信元:日本人材ニュース
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