これまで3回にわたりご紹介してきた、テイラーの科学的管理法の基底には共通した1つの考え方、貫徹された発想法が潜んでいます。それはどういった特徴なのでしょうか。
仕事の効率を上げるには ―斜め読みする経営名著:F. W. テイラー(4)―
著者:インソースマネジメント研究チーム
1.テイラー流の科学的発想法の基礎をなしているのは、全体を部分や要素に分割するという「分ける」という哲学である。
2.西洋の社会システムには、部分最適の寄せ集めが全体最適となる、という考え方がみられる一方、東洋では、全体を感覚的に掴んで理解しようとする志向がある。
- ■テイラーの考えた基本原理
- これまで3回にわたり、経営学の祖であるテイラーの科学的管理法について、そのいくつかの仕組みについて説明してきました。
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仕事の効率を上げるには(1)
仕事の効率を上げるには(2)
仕事の効率を上げるには(3)
- 実は、これら科学的管理法の基底には共通した1つの考え方、貫徹された発想法が潜んでいます。それはどういった特徴なのでしょうか。
- ■課業管理の仕組みの基礎は
- 課業管理の仕組みの基礎は、分業の原理でした。ボンヤリとした大きな仕事のかたまりを、要素ごとに分割すること―これが分業の原理です。ここには、全体を部分に「分ける」という考え方があります。
- 時間動作研究は、有能な1人の労働者の体の動きを、ストップウォッチで1つ1つの動作をするのに何秒かかるかを測定して、体の最適な動かし方を追求することでした。ここにも一連の動作を1つ1つの細切れの動作に「分ける」という発想法が潜んでいることが窺えます。そして、時間動作研究で明らかになった最適な動かし方を「標準」として定め、課業管理に活用するのです。
- ■命令する人と従う人に分ける
- 職場で仕事をする際に、命令する人(マネジャー)と、その命令に従う人(作業員)に徹底して分割し、作業員は決して自分で物事を考えてはならない(いわれた通りだけに作業をしていれば良い)というのが、いわゆる「構想と執行の分離」の考え方です。ここにも「分ける」という発想が顕著に見られます。
- 万能型マネジャーではなく、職能ごとに「分けた」マネジャーを設けるという職能的職長制度の基本哲学も、職長の役割を分けて、1つの役割に専念させることでした。
- ■「分ける」という哲学
- これらの仕組みに共通してみられる基本原理は何か考えてみると、その根底には、一緒にいろいろな要素が雑然と混じり合っている事象を、何らかの基準のもとに「分けること」が有効であるとする発想法が見受けられることに気づくはずです。全体を部分や要素に分割することこそテイラー流の科学的発想法の基礎をなしていることが窺えます。
- ■社会の成り立ちの基礎原理の違い
- 実は、こうした「分ける」という基本哲学をもとにして、西洋の社会システムの様々なところが設計されています。極言すると、部分最適の寄せ集めが全体最適となる、という考え方です。このような考え方は、一見ロジカルで、正しいように見えます。
- しかし、日本をはじめ、東洋諸国には必ずしも「分けること」のみを良しとしない哲学がある点に留意しなければなりません。東洋諸国では、分けた各部分の部分最適の統合を介した全体最適化よりも、むしろ全体を感覚的に掴んで理解しようとする志向があります。ですから、例えば、一般に日本企業では分業の体制が緩く、"遊び"が多いのです。