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人権デューデリジェンス

人権デューデリジェンス(Due Diligence)とは、人権に対する企業としての適切で継続的な取り組みのことです。具体的には、人権への負の影響とリスクを特定し、リスクを分析・評価して適切な対策を策定・実行するプロセスのことをいいます。

Due Diligence(due:適切な・正当な、diligence:努力・熱心な取り組み、略称:DD)とは、日本語では「適正評価」と訳されています。企業買収や不動産投資の分野では、その資産価値やリスクを査定する手続きを指す言葉として使われます。その考え方と同様に、人権侵害に関わるリスクを評価し、コントロールしようとするのが「人権デューデリジェンス」です。

人権侵害の対象には、「過度の長時間労働」、「賃金の未払い」、「ハラスメント」といった、組織内で発生する問題だけでなく、「強制労働」、「児童労働」、「外国人労働者の権利侵害」といったサプライチェーン上で発生するグローバルな問題も含まれます。
こうした人権問題は、
・企業イメージの低下、不買運動などの「レピュテーションリスク」
・当事者から訴訟されて損失を追う「法務リスク」
・株価下落、投資引き揚げなどの「財務リスク」
・従業員による業務ボイコットなどの「人的リスク」
などのリスクを生みやすく、先に問題が顕在化した欧米では法制化の動きが急速に強まっています。

国内でも、2011年に国連で「ビジネスと人権に関する指導原則」が定められたことを受け、企業が人権への負の影響を防止・軽減し、人権侵害に苦しむ人を救済するための措置として、以下の人権デューデリジェンスの具体策が法務省によって挙げられています。

①人権への負の影響を与えるリスクを特定し、影響度を評価
②教育・研修の実施(例:ハラスメント防止、ダイバーシティ推進プログラムの実施)
③社内環境/制度の整備(例:長時間労働、ジェンダー平等を阻む採用・昇格制度の改善)
④サプライチェーンの管理(例:ガイドラインを策定しサプライヤーに署名を求める)
⑤モニタリング(対策の効果測定)
⑥外部への情報公開(報告書をWEBで情報公開、報告書としてまとめて公開)

2023年以降、国連責任投資原則(PRI)に署名する機関投資家は、人権デューデリジェンスの実施に関する内容を年次報告に記載することが義務付けられる予定です。人権を考慮した投資行動が求められる機関投資家から選ばれる企業となるためも、まずは経営トップが人権デューデリジェンスの意義と効果を正しく理解し、対策を講じなくてはなりません。同時に、従業員一人ひとりがその取り組みに積極的に参加し、自社の企業価値の向上に貢献することが求められています。

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