サステナブル経営の重要課題を解決に導く人材採用を実現する【兆】

2023年1月25日

サステナブル経営の重要課題を解決に導く人材採用を実現する【兆】

カーボンニュートラル、脱炭素へGX(グリーントランスフォーメーション)を加速させ、環境・社会・経済の持続可能性な状態を実現するサステナブル経営の推進を担う人材の確保が急務となっている。この分野の採用支援で実績を上げているエグゼクティブサーチ会社、兆(きざし)の石河玲子取締役パートナーに、最近の人材ニーズや採用成功のポイントなどを聞いた。

人材獲得競争は激しさを増しています。貴社が難しい採用を成功させられる理由を教えてください。

当社が支援している経営幹部やプロフェッショナル人材の採用では、企業の要請を受けてコンサルタントが現職で活躍中の人材にアプローチします。求職者が中心の転職市場には企業が求めるような候補者が存在しないからです。

そこで私たちが重要だと考えているのは、私たち自身が時代の先を読み、今後のビジネスで必要な人材を予測して人材プールをつくっておくことです。例えば、当社はAI・IoT人材の需要が拡大するかなり前から候補者となり得る人材を開拓していたために、いち早く企業の採用ニーズに応えることができています。

人材プールの中からベンチマークとなる候補者を見ていただきながらイメージを合わせていけばサーチ戦略もスピーディーに策定できます。

採用を必然的に成功させるにはクライアントの事業や組織までを深く理解したコンサルティングが必要で、専門ノウハウを持つサーチコンサルタントとの共同作業でなければ困難です。候補者となる人材も当社のコンサルタントからのお声がけであれば、今後のキャリアについて様々な情報の得られる機会になるということが理解いただけ、高い確率で面談が実現するのです。


石河 玲子 取締役 パートナー
兆株式会社の創業メンバーの一人。慶応義塾大学法学部卒業後、電機メーカーの特許部に勤務、日本における知的財産戦略の勃興期を経験。財団勤務等を経て、1999年に大手エグゼクティブサーチ会社に入社。13年にわたり国内外で企業幹部のサーチに従事。2000年代初頭より社外取締役招聘プロジェクトを多数手掛けてきた。2012年より兆に参画。エグゼクティブサーチの他、大学でキャリアプランニングや職業観醸成等の講演も行っている。

今、人材採用のニーズが高まっている分野はありますか。

コーポレートガバナンスコードの市場との対話という観点からも、特にこの1、2年はサステナブル経営をしっかり進めなければならないという話と連動した採用の相談が多くなっています。

環境対応への意識が高まる契機となったのは2015年のパリ協定で、先進企業はビジョンをいち早く示し実行していますが、それに追随する企業でも取り組みが加速しています。私はこの分野で中核となる人材の採用を数多くお手伝いしています。

サステナブル経営を推進するために、企業はどのような人材を必要としていますか。

経営における重要課題を「マテリアリティ」と言い、サステナブル経営推進のキーワードになっています。例えば、カーボンニュートラルへの工程表に沿ってマイルストーンをクリアしていくためには、優先して取り組むべきことが特定されていないと進まないからです。

メーカーを中心に目立つ悩みは、マテリアリティを技術戦略に落とし込む難しさです。これまでの技術戦略は高度な技術の追求という観点から研究所と研究開発本部が主体となって作っていましたが、サステナブル経営の推進に当たっては、新たな観点が求められています。

これまで以上に幅広い領域の情報をキャッチして技術戦略につなげることが欠かせなくなっており、新しい技術が出てくることはもちろんですが、地政学的リスクや社会経済の大きな変化が近年は同時多発的に生じていますので、こうした点も技術戦略の策定において考慮しなければなりません。

そうすると技術面だけではなく、より広範に高度な情報を得るインテリジェンス機能が社内に欠かせないという問題意識を持つ経営者が増えており、そうした機能を担える人材の必要性が急速に高まっています。

専門性の高い技術者を求める企業も多いのではないでしょうか。

自社にない技術を持つ会社を買収したり、人材を外部から獲得してスピードアップを目指す動きが活発です。マテリアルズ・インフォマティクスの活用、特定領域の素材開発、先端的なソフトウエア開発などの技術開発を推進できる専門人材のサーチにおいて、当社はこれまでにも数多くの実績があります。

様々な分野でキーとなる技術に関わる採用を支援してきたことによって、当社にはすでにネットワークが構築できているため、企業が必要とする人材をスピーディーに探し出せるようになっています。

また、「グリーン調達」を実現するためにはサプライヤーの選別が必要になるのですが、自社の基準を満たしてもらうためにどのようなサポートができるのかという点でも調達部門の役割は大きくなっています。トレーサビリティの仕組みをつくり、その材料がどれぐらい環境負荷をかけて納品されているのかを正確に把握するのは容易なことではありません。取引先の書類を信じてよいのか、それをどう担保するのか、どこまで追跡すべきかまで考えなければなりません。

企業にはこれまで以上に説明責任が問われるようになっており、「取引先の書類に書いてあったから」では通用しなくなっています。こうした仕組みを機能させるのは非常に難しい仕事であり、調達部門を強化できる人材が求められています。

サステナブル経営を推進できる最適人材を紹介

●サステナブル経営推進人材の主なサーチ事例

サステナブル経営推進人材の主なサーチ事例

企業から人材採用の相談をうける時点で、人材要件は明確になっているのでしょうか。

サステナブル経営を推進する組織を社長直轄にしたり、経営企画部門から独立させる企業も増え、社内でもその重要性が認識されるようになっていますが、まだまだ新しい領域であることもあって、社内だけで議論していると必要な人材の要件がなかなか定まらないというのが実情です。外部から経験がある人材を獲得するとしても、とても一人だけでカバーできる範囲の仕事ではないということで、チーム作りから相談いただくこともよくあります。

例えば、インテリジェンス機能を担える人材のバックグラウンドとしては、技術面では学会で話されているような高いレベルの内容を理解でき、それ以外の分野についても良質な情報源を持っている人というイメージですが、大事なのは経営陣がマテリアリティを判断するために役立つ情報をどれだけ提供できるかという視点を持っていることが欠かせません。

自分たちの技術が世の中に貢献するためにやらなければいけない仕事だと思ってくれる技術出身の優れた社員が社内で見つかればよいのですが、特定の技術に詳しいだけでは難しく、一方で経営企画の社員は事務系が多いため技術に対する理解が追いつきません。

研究機関に長くいた人、海外でビジネスをやっていた人、サプライヤー側にいた人などが候補になることも多いのですが、ある人材サーチの例では、世界中の先進企業が社員を派遣している欧州の研究機関で共同研究に取り組んだ経験がある方の人脈をたどっていって候補者にたどり着いたということがありました。

こうした国内外を問わずさまざまな人材と接点を持っておくことが私たちのようなサーチコンサルタントには必要になってきています。

企業が人材サーチ会社を採用のパートナーとする価値や貴社の強みを教えてください。

外部から人材を獲得するに当たって欠かせないのがサーチ戦略です。それは人材ニーズに至る経営課題を深く理解することから始まります。そのためには経営幹部から信頼され、高いレベルのディスカッションができるサーチコンサルタントでなければ「そうした課題を解決するためなら、このような方がいいのではないか」という提案を差し上げることはできません。

私たちの仕事は、人材スペックの希望だけを聞いてデータベースから候補者を探すということではありません。サーチ戦略をしっかりと構築し、人材を探し出すプロセスがあるからこそ、経営の重要課題を解決に導く人材採用を実現することができるのです。

また、私たちが多くのプロフェッショナルとネットワークを築いていることはクライアントに価値を提供できる基盤となっています。実績を上げているビジネスパーソンと接点を持たせていただいているため、そうした方の周囲には優秀な人材が自然と集まり候補者にたどり着く可能性が高まります。

当社に寄せられる人材採用の相談は経営戦略に直結したもので、仮にクライアント企業が候補になりそうな方を知っていたとしても直接接触できないことがあり、そうした点も私たちが必要とされる理由です。経営における重要ポジションの採用では、候補者の経験やスキルセットだけでなく、価値観やクライアントとの相性をしっかり見極めることが不可欠で、デジタルマッチングというわけにはいきません。

私たちが候補者とのリアルなコミュニケーションによって得る情報や採用の成功にコミットする姿勢が多くのクライアントから評価されて長いお付き合いにつながっていると思います。

私たちが候補者と会う時には「あなたなら、こうした課題を解決できると思いました」というストーリーが必要です。ストーリーを率直にぶつけることで「それなら一度会ってみましょう」とご縁が始まります。クライアント企業に候補者とお会いいただく際も、自社の存在価値や成し遂げたいことを率直に伝えていただくことが候補者の気持ちに届き、採用の成功につながります。

ますます重要になるサステナブル経営の課題解決において、私たちが蓄積してきた知見がより多くの企業でお役に立てば嬉しく思います。

配信元:日本人材ニュース

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