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ENERGY vol.01(2020年春号)掲載

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集団ではなく個を見る人材育成

浸透する「個」の意識

「まじめでおとなしい」「いつも指示待ち」「すぐにググって正解を求める」「自己愛の塊」イマドキの若手・新入社員の特徴として形容される表現は実にさまざまです。ポジティブに語られることはまずありません。

ただ私はイマドキの新人の最たる特徴は、何といっても「個の意識の浸透」にあると捉えています。集団や社会の一部としての意識は薄く、自分は自分、一人ひとり別々で、個性ある人間しての私として接してほしい...そんな意識がかつてなく強くなっているのです。

特定モデルが当てはまらない

かつては、職場で働く人たちは集団で協力するのが当たり前の存在として捉えられていました。働く人たちは、皆ある程度共通の特性や心情を持っていて、マネージャーはそうした全体特性を念頭に置いて人事制度や育成メニューをデザインすればよいと考えられてきました。経営学ではこうした特性のことを人間モデルと呼びます。

例えば、「ウチの職場は何よりも人間関係が重視される家族的な共同体だ」とか、「一人ひとりが自分のやりたいことや目標を実現できる職場だ」とか。人事部の皆さまも我が社のことをいろいろ表現できると思います。かつてなら、そうした共通モデルに依拠して我が社の理念を見直したり、皆が納得できる目標を掲げたりして、職場全体を動機づけていれば済んだのです。

労働から仕事へ

しかし昨今では、職場の中堅クラス以上と若手・新人とでは個の意識の浸透レベルが全く違っています。経営学の世界でもこうした変化は如実に表れています。

かつて、職場の人たちが働くことを表現するのに、普通に「労働」という言葉を使いましたよね。労働環境とか労務管理とか。しかし最近では学界でも労働という言葉は、法規面を除くとほぼ使われなくなりました。労働に代わって「仕事」という言葉が好んで使われるようになってきたのです。

ここでポイントは、労働は集団レベルの概念なのに対し、仕事は個人レベルの概念である点です。

個人の生活の一部

労働と仕事の違いを考えるために、それぞれの対義語(反対語)を考えてみましょう。労働の対義語は経営や資本です。

労使関係とか経営VS労働という対比で語られるのが労働の世界ですね。

これに対し、仕事の対義語は何でしょうか。この語が使われる文脈をみるとわかります。個人の家庭生活や家事などと対になって使われるのが仕事という用語ですよね。若手が好んで使うワークライフバランスという用語は典型的にそれを示しています。

「仕事」と聞いて経営者との対峙関係を思い浮かべる人はまず居ないでしょう。要は、個人のうちに完結した概念なのがこの仕事という語の正体なのです。

仕事、キャリア、モチベーション...これらの用語は学問の世界でも最近とみに使われますが、いずれも働く人たちの集団としてではなく、そもそも個人ごとにその内実が異なっていることが前提なのです。

個をよく見て育成を

従って、昨今の職場でイマドキの若手や新人をちゃんと育てようとすれば、十把一絡げの育成メニューではなく、個人の特性を見極め、どうすればこの若手が我が社にとって有意な人材に育つかを一人ずつきっちり観察することが必要なのです。まずは一人ひとりとゆっくり向き合い、相手を知ることから始めてみてはいかがでしょうか。

文/上林 憲雄

インソース社外取締役。神戸大学経営学部卒。英国ウォーリック大学大学院ドクタープログラム修了。2005 年神戸大学大学院経営学研究科教授。専攻は人的資源管理、経営組織。日本労務学会会長、日本経営学会理事長を歴任し、現職。

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本コラム掲載号の記事一覧

2020 SPRING

Vol.01 「個」を見る

Vol.1は、「個」を見る人材育成がテーマです。イマドキ世代の育て方に悩みをもつ組織が多くあります。全員一律ではなく、個人の特性を見極めた教育により、能力を引き出し、生産性を高めることができます。また、適正に合わせたIT教育により、組織内部の人材でDXを実現することも可能です。

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2024 SUMMER

Vol.14 使えるアセスメント

vol.14は「アセスメント」がテーマです。 人的資本経営の注目により「人」の価値を引き出すことが重視されるようになりました。 客観的に評価・分析することができるアセスメントを活用することで多様な人材が活躍できる人事戦略に役立てることができます。 本誌では、採用、管理職育成など様々な場面でのアセスメント活用方法についてご紹介しております。

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