コロナ禍のなかでのリモートワークの拡大もあり、若手世代とのコミュニケーションに悩みを持つ方も増えています。上司側は、若手に育ってほしいという思いからアドバイスをしたいが、「パワハラ」と言われてしまうことを恐れて、言いたいことをグッとこらえてしまうこともあるかもしれません。一方で、若手側も上司と異なる考えを持ったら怒られるのではないかと恐れるあまり、距離を取ってしまうこともあるでしょう。
「私はこうしたい!」「チーム・会社をこうやって良くしたい!」と建設的に言い合うことで、若手世代も成長し、組織も活性化していきます。今回はお互いがガマンせず、意見を適切に衝突(コンフリクト)させることの効用について考えたいと思います。
■コンフリクトをどうとらえるか?
日々、人間は「A」という意見と「B」という意見の衝突(コンフリクト)のなかを生きているといえます。もう少し寝ていたいが、会社に行くためには起きなければならない、といったことも身近なコンフリクトの一つでしょう。
企業内でのコンフリクトについて考えてみましょう。たとえば、若手は「新商品の開発にもっと力を入れるべきだ」と考え、上司は「既存商品の質向上を優先するべきだ」と考えていたと仮定します。この場合、どのように対処すれば、企業としてよりよい結論を得ることができるでしょうか。
そこで参考となるのが「コンフリクト・マネジメント」という考え方です。意見の衝突=コンフリクトの構造をとらえ、どちらも否定することなく両者の意見を取り入れた新たな解決法を見出していく手法のことです。 それでは、次にコンフリクトがどのような場面で起こるかについて見ていきましょう。
■コンフリクトが起こる3つの要因
コンフリクト・マネジメントを実践するとき、そのコンフリクトは何が原因で起こっているのかを分析する必要があります。コンフリクトは以下の3つの要因から起こるといわれています。
①条件の対立
上司と若手のコンフリクトは、まず立場や役割の違いから発生します。この段階においては、お互いが譲歩できる範囲内で交渉することが、比較的容易です。
②認識の対立
単なる立場の違いではなく、考え方や価値観がそもそも異なれば、お互いに話し合うことすら難しくなります。
この段階では、相手とどこに考え方の違いがあるのかを考察する必要があります。
③感情の対立
条件・認識の対立がもとになり、怒りや悲しみなどの感情が現れます。この段階にまでいたると、コンフリクトの解消はいっそう困難なものとなります。こうなる前に対処する必要があります。
■コンフリクトへの5つの対処法
コンフリクトの原因を把握したのち、どのように対処するかについて考えます。 対処法は自分への配慮・相手への配慮の度合いに応じて5つに分類されます。
①競争
自分の意見を権威などにより強要することです。たとえば上司が「私は君たちより偉いのだから、私の方針に従うのは当然だ」などと言うのは、競争的な対処法です。
②服従
自分への配慮よりも相手への配慮を優先する考え方です。たとえば若手が「新商品開発に力を注ぐべき」と思っていても言わないで黙っていることは服従的な対処法です。この方法を選択すると、無力感からストレスにつながります。
③妥協
お互いが譲り合うことで、双方の意見の一部を実現するものです。たとえば上司が「仕方ないから新商品開発にも少しは予算を出してやるか」とする対処法です。一見するとお互いの意見が通っているように思えますが、結論を急ぐあまり若手がなぜ新商品開発に力を入れたいのかという理由や根拠に関して、上司が聞こうとしていない可能性もあります。
④回避
衝突すること自体を避けるという対処法です。自分の意見を言っても仕方ないからガマンする、ともいえます。若手にとっては上司との衝突を「回避」するために、退職という極端な選択をすることもあり得るでしょう。
⑤協調
当事者間で対立点を明確にしながら共通理解を形成し、双方の懸念点を解消しようとする対処法です。先程の事例で考えれば、「既存商品の良さを活かしながら、ターゲット層を変えた新商品を開発する」とすれば、若手・上司双方の意見を踏まえた建設的な提案が行えます。
それでは、このような協調的な対処法を取るために必要なこととは何でしょうか。
■コンフリクト・マネジメントに必要な条件
①「正しい/誤り」という対立構造をなくす
たとえば、上司が若手に「新商品なんかにお金をかけないで既存商品をバンバン売ればいいのだ」と考えるとき、背景に「自分の考え方が絶対に正しい」と無意識に考えている可能性があります。対立を構造的にとらえるためには、私が正しい/相手は誤っているとすぐに判断しないことが大切です。
②相手に理解してもらうコミュニケーション力
コンフリクトの要因のなかに、「認識の対立」というものがあると述べましたが、認識の相違について相手に理解してもらう必要があります。
認識の対立を埋めるためには、若手世代・上司世代双方の特徴についてお互いが知ることも有用です。また、「空気を読んで察してくれ」というのではなく、言語化して伝えることも必要です。
③信頼してもらうこと
最後に重要なことは、相手への信頼感です。相手を動かすためには、言っていることが本心からだと信じてもらう必要があります。
いくら「自由に意見を話してくれ」と言われても、「どうせ上司と異なる意見を言ったら否定される」と思われては、若手は意見を言ってくれません。
信頼感があってこそ、自分の意見を話してくれるようになるのです。
それでは、コミュニケーションを活発にして信頼関係を築くにはどうすればよいのでしょうか。次の章では若手世代を知る一助として、仕事観や理想の上司像について簡単に触れます。
■若手世代が育ってきた社会背景
失われた20年あるいは30年ともいわれる現在、若手は不景気のなかをずっと生きてきた世代ともいえるでしょう。 「ゆとり教育」とも言われた脱詰め込み教育や少子化による生産年齢人口の減少により若手に有利な労働市場となっていることもあり、競争が緩やかな世代であるといえます。
また、この世代は「デジタルネイティブ」と呼ばれ、子どもの頃から携帯電話に接している世代です。世界とつながるインターネットにより情報を簡単に取得できるようになった反面、SNSでつながるコミュニティは同世代であったり、自分と同じような意見をもつ人だけであったりと狭いものとなりがちです。 SNSを用いたコミュニケーションは文字中心となることが多いため、いざ対面でとなるとうまく話せないというケースも聞かれます。
■若手世代の仕事観
若手世代の仕事観として、「やりがい」や「楽しく働くこと」を重視する傾向があります。出世やお金に関心の薄いこの世代はマイペースに仕事を進めがちといわれます。 「楽しく」という点とも関係しますが、若手は上司の方の思っている以上に職場の雰囲気というものを大切にしています。場の空気を読んで自分の意見を言わないというケースも十分に考えられます。
叱られることに慣れていないことも特徴といえます。先ほど述べた「ゆとり教育」で個性を伸ばすことが良いとされ、常に肯定されて育ってきたことが背景としてあるようです。 そのため、言われた通りに実行すれば叱られないという発想から、いわゆる「指示待ち」の状態となる人も多く、目立つと叩かれるという思いから「模範解答」に終始してしまうことも多いでしょう。自分の意見を言わない、ということは自分の身を守る防御反応といえるかもしれません。
■若手世代の上司観
「指示待ち」という話をしましたが、若手は上司に対して「育ててくれる」「助けてくれる」存在であると思っている人が多いと言います。 一方で、上司にあたる年齢層では、もっと主体的・自律的に行動してほしいと感じているようです。
コンフリクト・マネジメントの考え方で重要なことは、若手にとっての理想の上司像に合わせなくてはならないと「妥協」したり、そんなことは私とは関係ないと「回避」したりするのではなく、若手に理想とのギャップを伝えて協調的にそのギャップを埋めていくことです。そのために必要なことは、やはりコミュニケーションと信頼関係なのです。 そこで、次の章では若手とのコンフリクトを組織の活性化につなげるチームづくりについて考えます。
組織内でのコミュニケーションを活発にするための方法の一つに「チームビルディング」というものがあります。自分の潜在的な思いを示しながら、お互いの主張をぶつけていくことで、自己理解・他者理解を深めていきます。
チームビルディングとは文字通り「チームを築き上げていく」ということですが、そのためにはチーム全体で目的意識を共有し、信頼関係を構築して、若手でもベテラン層でも自分の意見を言い合える環境をつくることが求められます。
立場は異なっても、「自分を含めた一人ひとりがチームを動かしている」という当事者意識を共有することが不可欠です。そのためにはチーム全体で対話を重ねる必要がありますが、日々の業務を遂行するなかで、対話も並行して進めるとなるとかなりの時間を要します。 この時間を短縮する方法として、レゴ®ブロックを用いたワークショップについてご紹介します。
レゴ®ブロックは子どもの頃、一度は遊んだことがあるおもちゃで、最近ではテーマパークも人気を博していることはご存じの方も多いのではないでしょうか。 そんなおもちゃで何ができるのかと思われるかもしれませんが、ブロックという「モノ」を通して、自分の考えを目に見える形で表現することができます。
このように、ワークショップ形式で集中的にチームビルディングを行うことで、比較的短期間でお互いに意見の言い合える心理的安全性の高いチームをつくることができます。
▼レゴ®シリアスプレイ®のご紹介若手世代とのコミュニケーションの取り方ということで、コンフリクト・マネジメントやチームビルディングの手法についてご紹介しました。
チームで仕事を進めるときに重要なことは、意見の衝突があっても衝突を回避するのではなく上手くぶつかりあって協調的な解決策を見出していくことです。
意見を出し合える環境をつくるきっかけとしてチームビルディングを行うのであって、それ自体が目的とならないよう留意する必要があるでしょう。
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