2023年8月28日
損害保険の不正請求をはじめとする一連の不祥事で、中古車買い取り・販売大手のビッグモーターが窮地に追い込まれている。ついには取引銀行団と資金繰りの協議が始まり、近く返済期限を迎える90億円の融資の借り換えや金利条件などの現状維持を要請した。
同社は先月後半から例年と比較して、中古車の販売台数が6割以上、買い取りも4割以上減っていると銀行団に報告している。原因は不祥事による消費者からの信用失墜だ。
中古車販売は日銭商売で、売上が急落するとたちまち資金不足となる。銀行団は借り換えを拒否。同社は2022年9月末時点で約600億円もの借入金もある。銀行団が不祥事と業績不振を受けて融資の貸しはがしにかかると、ビッグモーターは資金繰りに窮する可能性が高い。
同社の兼重宏行社長(当時)は引責辞任した。が、和泉伸二新社長は現在もオーナーである兼重前社長の腹心であり、信用回復につながる経営刷新とまでは言えない。最も即効性がある経営再建策は事業譲渡だろう。非上場企業の同社なら、株式の7割以上を握る兼重前社長が決断するだけでよい。
事業譲渡すれば、ビッグモーターの「兼重カラー」は完全に消え、企業イメージも好転する。では、ビッグモーターの譲渡価額はいくらになるのか?
企業の譲渡価格を算定するには、主に三つの方式がある。
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しかし、ビッグモーターは最近の決算データについては売上高や純利益しか明らかになっておらず、純資産や減価償却費、フリーキャッシュフローなどの数値が必要な譲渡価額の算定は難しい。
業種は全く異なるが、同じオーナー経営の非公開企業では化粧品・健康食品大手のディーエイチシー(DHC)が、オリックス<8591>に約3000億円で買収されている。DHCの2022年7月期の純利益は96億1500万円だった。ビッグモーターの2022年9月期純利益184億円で比較すれば、譲渡価額は約5740億円となる。
だが、同社は不祥事で揺れ、業績も急降下している。信用も失墜しており、一過性の不振で済むのか不透明だ。当然、買収価額は下落する。業績悪化が続いて経営危機状態になれば、二束三文で買い叩かれるのは避けられない。兼重前社長にとっては、自社を売り抜けるタイムリミットが目前に迫っている。
配信元:M&A Online
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