2023年6月26日
1958(昭和33)年創業の一畑百貨店(松江市)が、2024年1月14日に閉店する。同百貨店は一畑電気鉄道(同)の100%子会社で、日本百貨店協会に加盟する島根県内の唯一の百貨店だ。同百貨店の閉店で、同県から百貨店は姿を消す。島根県は全国で3番目の「百貨店空白県」となる。なぜ、こうも地方百貨店は「打たれ弱い」のか?
郊外型の大型ショッピングモールの出店やネット通販市場の拡大による百貨店離れで一畑百貨店も苦戦が続いていたが、決して手をこまねいていたわけではない。
ジャスコの撤退により空き店舗となったJR松江駅前のピノビルを全面改装して、1998年4月に「松江店」を増床移転した。食品売場をスーパーマーケットと同様の集中レジ化して省力化を図る一方で、レディースファッション売場には島根県内初進出となる高級ブランドを誘致し、ショッピングモールとの差別化を図る。
2000年2月には「出雲店」を閉店した跡地に「ツインリーブスホテル出雲」などが入居する7階建て複合ビルを建設。その1階部分に小規模店舗の「出雲店」を再出店するなど、一畑百貨店の全店舗を全面リニューアル。2007年8月に山陽百貨店、京阪百貨店、津松菱と地方百貨店の課題や成功事例の交換会「DIA」(デパートメント・インテリジェンス・アソシエイション)を設立し、隔月で会合を開いて問題解決を図った。
その結果、2005年3月期から2008年3月期にかけて年間売上高100億円を超えたが、リーマン・ショック後の2009年3月期以降は売上高が大きく落ち込み、2019年2月に出雲店を閉店して松江店だけが残っていた。その松江店もついにシャッターを下ろす。
すでに2020年1月に山形県が、同8月に徳島県が、それぞれ「百貨店空白県」となっている。大都市圏の大手百貨店も同じ「百貨店離れ」苦戦しているが、地方百貨店ほど厳しくない。全国的に百貨店は主要駅の構内かその隣接地にある。実はこれが大都市圏と地方の百貨店の明暗を分けた。
大都市圏では店舗をホテルやオフィスなどとの複合施設としてリニューアルし、家賃収入でも利益を得る「不動産業化」している。しかし、地方都市では一畑百貨店出雲店のように複合施設にしたところで、地価が安いため高い家賃収入が得られるわけではない。
しかも「自動車社会」であり、駐車場の収容台数が少なく利用料金が高い「駅近物件」よりも、駐車場が広く無料で利用できる幹線道路沿いの「郊外物件」の方が好まれる傾向がある。そのため、地方において主要駅に近い百貨店の立地は、ホテルやオフィスにとって不利な条件にすらなるのだ。
百貨店の唯一の「資産」である立地が活かせない以上、地方の百貨店は大都市圏以上の苦戦を強いられることになる。
配信元:M&A Online
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